実は最近まで、『愛と哀しみのボレロ』でジョルジュ・ドンが演じたダンサーはこの映画で主演を演じたミハイル・バリシニコフがモデルだと勘違いしていたんです。
ミハイル・バリシニコフも1974年にソ連から亡命したという点が同じだったのでてっきり。
実はルドルフ・ヌレエフという別のダンサーがモデルだったんですね。

この映画もまんまソ連から亡命したダンサーという設定なので、殆どミハイル・バリシニコフの自伝映画?と思わせます。

公開当時、まだ冷戦の最中、ソ連から亡命したダンサーという設定に、アメリカ側のプロパガンダ映画という印象でなんとなく観るのを避けていたんですよ。
ライオネル・リッチーの「セイ・ユー、セイ・ミー 」がヒットし過ぎたっていうのもあって、なんていうか、『ボディーガード』のホイットニー・ヒューストンが歌う「オールウェイズ・ラヴ・ユー」と同じくらいの気恥ずかしさを憶えてしまったのです。

でも、そういうことを抜きにすれば、ミハイル・バリシニコフのダンスは圧巻だし、内容なんてこの際そっちのけでダンスだけ観てりゃーいいって気持ちで今頃になって借りて観ることにしました。
いや、何故このタイミング?って感じですが、ボレロを観た流れとでも申しましょうか。今回「そういえばこの映画ちゃんと観てなかったなー」と思い出した訳ですよ。

いやー、冒頭のダンスからカッコイイですね。
ジョルジュ・ドンは力強さの中にしなやかさ、たおやかさを感じるんですが、ミハイル・バリシニコフの場合はとにかく力強く、荒々しい男の踊りって感じでカッコイイです。
どっちも違った魅力があっていいですね。

グレゴリー・ハインズも負けてはいません。
さすが黒人、リズム感がいいというか、身体能力高いです。
バリシニコフとふたりで踊るシーンでもビルエットこそバリシニコフに負けていますが、他ではひけをとりません。
このふたりで踊るシーンで、ふたりを見張っているKGBのチャイコ大佐が格闘技的な振り付けに釣られてシャドウボクシンをはじめるシーンが面白かったです。

後半の脱出劇は結構はらはらしました。
総じてやっぱりダンスを堪能する映画だと思いますが、ベルリンの壁が崩れる以前、こんな時代もあったねーと思い出される感じです。