何を隠そうワタクシ、クローネンバーグフリークなんですよね。
カレの監督作品は初期の短編とか『ファイヤーボール』は観てませんが、それ以外は多分全部観てると思います。
ただね、私の中のクロさんピークは『イグジステンズ』まで、もっと言うと『裸のランチ』までなんですよね。『エム・バタフライ』あたりから徐々に下降して、『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』が丁度分岐点という感じ。
その後の作品はね、一応観るんですが、前ほどは燃えないというか、若干方向性が変わっちゃったなーという印象です。
いや、そんな中にもクロさん特有の首尾一貫したテーマが変容した形で存在している訳で、近年で言えば難解な『コズモポリス』にもそれが垣間見られる訳ですよ。
しかし、今回の作品はそんなクロさんのテーマが読み取りにくく、これまでにないほど難解に感じられましたね。
クロさんは落とし上手なんだけど、『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』や『危険なメソッド』みたいに、たまに空振りがあるんですよ。今回は空振りの方。
最近では『コズモポリス』なんか、久々にいい落とし方で、クロさん健在!と思ったんですけどね。
あれもちょっと退屈な映画だったけど、あの落とし方で許せる映画でした。
この映画は観ている間は退屈ではなかったんですが、見終わって「ぽん」と落ちてこない感じでした。
これは喜劇だという説もありますが、あんまり喜劇ととらえられる感じでもなく。
今活躍しているセレブの実名が出たり、キャリー・フィッシャーのようにまんま自分の役として登場したり、そのあたりは楽屋ネタ的な面白さはあったんですけどね。ちょっと『バードマン』的というか。
今回の映画は近親相姦の問題が扱われているのですが、融合しようとして融合しきれずに社会枠からはみ出し破滅するという構成が『ヴィデオドローム』的という感じなのかな。
『シーバース』『スキャナーズ』『クラッシュ』『イグジステンズ』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』あたりはある種の開放感というかその先を感じさせるものがあるのだけど、『ヴィデオドローム』『デッドゾーン』『ザ・フライ』『戦慄の絆』『エム・バタフライ』『コズモポリス』のどん詰まり感が一周して戻ってきた感じ。
さすがのクロさんもこのタブーにはこういう結末を付けざるを得なかったのかしら?
なんつーか、それって普通だなーなんて思ってみたり。いや、私の読みが甘いだけかもしれませんけどね。
とにかくこの映画はジュリアン・ムーアがすごかったです。
これまで、特に好きな女優って訳でもなかったけど、この演技で女優として見直しましたよ。
彼女の怪演が観られただけでもこの映画は価値があるかもしれません。
ただ、あまりに彼女が突出してるんで、この映画の主軸がどこにあるのか混乱を招く要因のようにも思います。
あと、エヴァン・バードのなで肩っぷりがすごかったです。あちらの子役ってこんなにすさんでるんですかね。