ロマン・ポランスキー監督、脚本、主演とポランスキーづくしの映画。
ポランスキー監督作品はいろいろ観ているが、そういえば本人の顔はあまり把握していなかった。
この映画を観ている最中も、主演の俳優観たことある顏だけど誰だっけなんて思いながら観てたんで、ポランスキー本人と知ってびっくり。

日本ではビデオスルーらしいが、なかなかの傑作というか、結構好みの作品だった。
今年DVDで観た映画の中ではかなりの好感触。

『ローズマリーの赤ちゃん』の男バージョンとも言うべきか、アパートの住人に対する不信の念、脅迫概念という点は同じで、こういったモチーフを何度も作品にするというのは、ポランスキー自身何かトラウマでもあるのだろうか。

そもそも、投身自殺の部屋を借りるというあたりが私には考えられない。
しかも部屋の借り主がまだ存命だからと言って病院まで様子を観に行くなど、かなり奇っ怪な展開。
フランスが舞台で主人公もフランス国籍という設定だが、どこか異邦人のような趣。
何か大きな事件が起きる訳ではないが、エジプトの神とか、抜いた歯とか、どことなくオカルティックな臭いもして、つねに不穏な空気、何か起こるのではないかという緊張感を覚える。そのあたりの描き方が非常によい。

主人公の男にもともと性倒錯とか狂気の兆候があったのかはわからないが、狂気に駆られた人間が観る世界とはこんな感じなのかもしれない。
この男の背景とか、その奥をもっと知りたくなる作品だ。

主人公と知り合う女性がイザベル・アジャーニだったとは気づかなかった!