「脳力”が試される、究極の心理ミステリー あなたは、一度で見抜けるかー」
なんてキャッチコピーが非常に地雷臭を漂わせる映画なんで、蔦屋で見かける度に気になりつつもためらいを覚えました。
でも、ジェイク・ギレンホールが主演で二役演じるし、まあ、一応いっとく?いっとくか?ってな感じでやっとこさ借りてみました。

原作はポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説とあるので、まあ、そこまで大きく外れることもないでしょうと信じて。

しかし、なんでしょうね。パッケージから漂うイメージがなんとなく夢オチ的なものじゃないかという嫌な予感。

で、観ている間はなんだか終始不穏な空気で、非現実感漂う感じ。ああ、これリアルなミステリーって感じでは絶対ないなーという臭いがずっとしている。
まず、いくら似ている男を見かけたからってそこまでするか?って言う妙な違和感はありましたよね。そこから先の反応がいまいちふわっとして歯がゆいあたりも違和感。あと意味深に登場するスパイダーのイメージが何を現しているのか?とかね。

で、最後はポカーンですよ。あー、これ、あとでいろいろ他の人のレビューとか読んで、結局どういう話だったのか理解しなくちゃならないヤツや~ってね。

公式サイト行くとね、監督自身が作品の解説してるんで、多少は理解の助けにはなりますよ。でもね、それって、それって、なんか、ご大層に意味深に煽った割には「なんてことのない話をただわかりにくくしただけ」って言う印象が拭えないあたりは丁度あれ、あの映画と同じ、悪名高い『マシニスト』。

ネタバレ注意
そっくりな自分に出会って真っ先にやることが互いのパートナーを入れ替えてのスワッピングってあたりがなんだかなーなんですが、まあそれもこれもひとりの男の深層心理とか潜在意識を表現した精神世界と言われるとなんでもありな訳で。
スパイダーに関しては母性の象徴とか言われても、はあ…という気分ですよ。彼の屈折した性癖は母性の抑圧ということなんですか???
どちらの自分にも胸の下に怪我の跡があるのは、愛人と事故った時についた傷ってことだったんですかね。現実と過去がループし、交差しているあたりが精神世界ってことなんでしょうね。
そんなこんなで結局突き詰めると夢オチと変わらないってことで、自分の最初の印象は間違ってなかったんですよね。
で、自分はこういう話しがあまり好きじゃないんですよ。長々と意味深な話を聞かされた挙げ句実は全部夢でしたって言われたような気分でね。
「あなたは、一度で見抜けるか」って、見抜くも何も、ひとりの男の精神的葛藤を具象化した作品に対して、それをミステリーのオチ的に扱われましても…という気分です。
夢分析とかするのが好きな人には面白い話なんでしょうかね。私も夢分析とかするのは嫌いじゃないけど、映画でそれはやりたくないなーという気分です。

ネタバレ終了

いや、でも、面白くないとは言い切れないというか、もうひとりの自分に出会ってからの展開はそこそこ面白かったですよ。
ジェイク・ギレンホールはいい男だし、ショシャナのメラニー・ロランやクローネンバーグ親子大好きなサラ・ガドンと美女揃いだし、配役は素晴らしい映画です。

監督は『灼熱の魂』でなんとなく嫌な気分にたたき落とされたドゥニ・ヴィルヌーヴです。
『灼熱の魂』に比べるとずっとライトな印象ですね。