ネタバレあり
ようするに究極の電脳ピグマリオンのお話でしょう?ってことで、男の理想と都合のよい女性像てんこもりそうで観る気がしなかったんですが、思っていた感じとはちょっと違ってましたね。
主人公が手紙の代筆というお仕事をしている訳ですが、時に作家というのも誰かの感情になりきりその登場人物の感情を代筆する仕事という意味では似てると思うのですよ。
この脚本家も会話を創作する上で、時に異性の感情もリアルに描かなければならないし、主人公同様心に異性を持っている状態なんだと思うんですよね。
そんな脚本家が、OSという設定を借りて自分にとって理想のパートナーをイメージしたのが本編という感じも致します。
それにしても観ている間怖くて怖くて、いつOSが暴走して氾濫を起こすのかとドキドキしましたよ。
いやいや、そういう話ではないとわかってたんですけど、一歩間違えるとホラー映画に傾きそうな展開だったもので。
特にOSが意思をもって、主人公のあずかり知らぬ行動を起こすあたりが怖く、主人公の原稿を出版社に勝手に送ったりするあたりは、一見「いいお話」っぽくなってましたが、私にはうすら寒く感じましたね。
おまけに焼き餅なんて感情も抱くようになると、主人公が他のパートナーとつきあうことをことごとく阻止するような行動を起こすんじゃないかと心配になります。
個人情報などこのOSが漏洩させない保証もなさそうですし。
それ以前に主人公がOSとデートするのにひとりで浮かれたりしゃべってる姿は客観的に観ると頭のおかしい人にしか見えませんからね。
肉体の制約もなく、距離や時間の概念からも解放された精神が突き詰めると、もはや人間とは理解しあえない別の存在に進化するのも必然的であり、それは自分を越えて住む世界が変わってしまった妻との関係にもリンクすることで、愛が理屈ではないように、愛が終わるのも理屈ではない、いや、それなりの理屈はあったとしてもそれがわかったところでどうにもならないこともあるってことですよ。
そんな風に終わって行く関係を落ち込んだり悲しんだりするのではなく受け入れよという、そういうお話だったんですかね。
この経験が主人公がまた新たな関係を構築していく上で通過すべき儀式のようでした。