国籍の彼との出会いで、気づいたことがあった。

 

それは元婚約者とのお別れの時にも考えていた、自分の感じる幸せについてだった。

私はどういうときに幸せを感じ、どういうことに喜びを感じるのか自分自身よくわかっていなかった。

 

 

元婚約者の彼との時間の中で、私は自分の感覚を押し殺して彼の理想になろうと必死だった。

そうなれたら、彼は絶望せず、どこにもいかず、楽しい時間だけが過ごせると思ってた。

 

どうしてそこまで相手に合わせるの?

あなたはあなたのままでいいのに。

 

そんな風に言われることも多かった。

 

母子家庭で育ち、小学生の時からは酷いいじめにもあった。

ある先生からの嫌がらせが原因で始まったそれは、すぐに同級生たちに影響し

惨めで辛くて理不尽なものだった。

 

母が私を生んで腎臓を悪くし、そこから一人で私を育てるにあたり

相当しんどい思いをしているのは、子供の目にも明らかだったし

学校での事は気づかれないよう隠し通しながら生活していた。

 

どこにでも、よくある話だ。

母が子を想うのと同じで、子も母を想う。

 

その時の自分にはその世界がすべてで一生続くものなんだと思っていた。

 

一人っ子で、大人ばかりの環境でどうすれば人に可愛がってもらえるかは

なんとなく分かってきていた。

 

どうすれば自分がよく見え、どうすれば人に愛してもらえるか。

 

万人に好かれることはできなくても

少しでも笑顔で過ごせる時間を多く作れるように

自分の存在が悪いものではないと思ってもらえるように

そうやって生きてきた部分が確かにあった。

 

でもそれらは全て本来の自分だと言えるのだろうかという疑問も常にあった。

 

 

か月の間、外国籍の彼 ケビンとの交流は続いた。

だいたいの時間は友人たちと大勢で食事をしたり飲みに行ったり、旅行に行ったり。

友人としての私は着飾ることもなくただただ自然にその時間を楽しんでいた。

 

ある日、みんなでタイへ旅行へ行く計画が立った。

各々仕事の夏季休暇を使って、バラバラで現地集合というラフな計画だった。

 

私は一番最後の合流となり、現地に先についてるメンバーには飛行機の到着時間を伝え日本を出発した。

 

まぁ旅にトラブルはつきもので、乗り換え地点の空港で大幅に飛行機が遅れることになった。

私はポケットWi-Fiをレンタルしていたので空港でもそれ以外でも連絡手段はなんとかなったのだが

先発メンバーはなぜか誰もWi-Fiをもっていなかったので

フリーWi-Fiが飛んでいるエリアでないと連絡がつかない状況であることに、この時気づいた。

 

少し不安もあったが、連絡がつかなくなった時の為の対応については大まかに説明しあっていたので

まぁなんとかなるだろうと、搭乗口がコロコロ変わる空港であっちにいったりこっちにいったりしながら搭乗できるのを待った。

 

海外メンバーはやっぱりなんというか大らかなんだな~と、

一人で少し心細い気持ちはあったがあまり気にはせずに、そんなこんなで4時間遅れで現地の空港についた。

 

さてこれから、今日の宿までどうやって行くかな~私の英語通じるかな~と夜中の空港から出ようとしたところ

ケビンの姿が目に入った。

 

わー、ケビンだ~。

ん?!ケビン?!なんで?宿にいるんじゃ??

 

「あんこを待ってたよ!お疲れ様だね!ようこそ~!」

 

と満面の笑みで迎えてくれた。

 

「あんこはきっと心細いと思った。不安だったね、もう大丈夫だよ!みんなあんこを待ってる!」

 

と、タクシーに乗りその日の宿まで行った。

宿までの道中は空港へ来るために、乗りたかったバイクタクシーに乗った話や今日はみんなでどこへ行き何をしたか共有してくれた。

 

到着した場所はペントハウスのような所で、大きなベッドルームがたくさん付いた素敵な宿だった。

一番大きな、シャワールームの付いた部屋を使ってね!

と、みんなが案内してくれた部屋はとてもシックな家具でコーディネートされていて主の趣味の良さを感じた。

 

 

長い一日の疲れを取ろうとシャワーを使い(お湯の出し方がわからず結局水風呂となったわけだが)

大きなふかふかなベッドで休んでいたところ。

 

夜中に物音がして目が覚めた。

 

ノックの音がして返事をすると、ケビンが申し訳なさそうにドアを開けて

「起きてる?」と小声で話しかけてきた。

 

今までこんなことはなかったし、何事かと思いどうしたのか尋ねると

 

「僕はあんこが好きだ」

 

と、まさかの告白だった。

なんでこんな夜更けに。

 

「今まであんこは僕を友達としてしか見ていないて分かってたけど…」

 

私は友達としてケビンをもちろん好きだったが、、、頭が混乱した。

 

「あんこを困らせたいんじゃないよ、聞いてくれてありがとう!ゆっくり休んでね!じゃ」

 

と笑顔で静かにドアを閉めて出て行った。

 

…とにかく寝よう、よくわからないけど、明日考えよう。

そう思って眠りにつこうとした。

 

しかしまったく寝れない。

 

気づけば外は朝日が眩しく、この国の日常の音がし始めた。

 

飲み物を飲もうとキッチンに行くと数名は起きていて

各々本を読んだり、ヨガをしたり、朝食を食べたりしていた。

 

いつもの旅の光景がそこにあり、なんだかとても安心した。

 

ケビンはいつも旅の時は誰よりも早く起きて、近所を散歩する。

散歩の時にフルーツを買ってきて、後でみんなでモーニングコーヒーを楽しむためのコーヒーショップやカフェを探してくる。

 

この時も、いつも通り近所で調達してきたフルーツを歌い踊りながらカットしみんなに振舞っていた。

 

あ~、いつもの光景。

ありがとうケビン。あなたのこういうところ本当に素敵だと思う。

 

その時、ふんわりと心の中でケビンへの気持ちを全く意識していなかったわけではないことに気づいた。

でも気づきたくなかった。

 

 

 

どうしても友達としての彼を失うことが嫌だったからだ。