その日はナゼかなかなか眠りにつくことができなかった。
窓の外からは時々、鳥のようなものの高い鳴き声が聞こえていた。
ベッドの上で目を閉じているワタシの頭の中には色々なことが渦巻いていた。
学校のこと、家のこと、これからの人生のこと、そしてワタシ自身のこと。
ワタシ。
ワタシ?
ワタシって一体何なんだろう?
真っ暗な部屋でワタシはそんなことを考えていた。
でもこれは決して珍しいことなんかじゃなかった。
1週間くらいに一度、いや10日に一度、いや8日か9日くらいか?まぁいいや。
とにかくだいたいそれくらいの頻度でこの不眠症(?)はワタシに起こっていた。
こんなことを立派な人に言うと怒られるかもしれないけど、ワタシはとにかく、『生きていることの意味がわからな過ぎて、もうどうしようもなかった』のだ。
おきまりのこんなことをしばらく考え、気がついたらいつの間にか眠ってしまっているのが毎回のパターンだ。しかしこの日は違った。
この日からだ。
この日から不思議なことがワタシに起こり始めたのだ。
それは最初、こんな形で現れた。(うまく説明できるだろうか?)
夜はとても静かだ。
しかし耳をすませば色々な音が溢れている。
空気清浄機の音。
鳥の鳴き声。
車のエンジン音。
葉が窓にぶつかるささやかな音。
その日もそのような色々な音が聞こえていたのだが、突然、それら全ての音が重なった。
いくつもの音が一つの場所から一つの音に重なって聞こえたのだ。
その重なった一つの音はまるで男性のような声で、
「キ」
と言ったように聞こえた。
ワタシは突然のことに驚いて、目を開いた。
しかし当然、誰かいるはずもなかった。
重なった一つの音は続いて、
「ザ」
と言った。
ワタシは他の音に耳を済ませようと思い、意識を窓の外に向けてみた。
しかし何も聞こえなかった。
ワタシはその『重なった一つの音』しか聞こえなくなっているのだ。
驚く私をそのままにその音はさらにこう言った。
「シ」
パパとママの寝室に走って行こうかと思っているとき、気がつけば窓の外で鳥が鳴いていた。
『重なった一つの音』ももう聞こえなくなっていた。
世界はまた様々な音を取り戻していた。
何だろう?気のせいだったのだろうか?
まぁいいや、とワタシはとりあえずまた目を閉じた。
しかしこれが全ての始まりだったのだ。