「ハルカ!なんか今日は元気ないよ?」
とサヤカがワタシの顔を覗き込みながら言った。
「う~ん。何て説明していいのか分からないけど、昨日の夜に怪奇現象があったんだよね。」
とワタシは口の中の卵焼きを飲み込みながら言った。
結局、昨夜は一睡もできなかった。できれば学校になんか来たくなかったけど、あんなことがあったばかりだし、家にいるよりかはこうやって他人と接している方が少しはマシかなと思ったのだ。
「何?興味ある!教えて!」
とサヤカは目をキラキラさせている。外からは昼食を急いで片付け、サッカーをする男子たちの声が聞こえていた。
「声が聞こえたんだよね。」
とワタシが言うと、
「声?声だけ?姿は?」
とサヤカが言った。
「姿は見えなかったよ。声だけ。」
と言うとサヤカは、
「何だぁ~。声だけかぁ~。それだったらサヤカも幼稚園の時に経験あるよ。『おおおおおおおおおおお。』って声が夜中に外から聞こえてきたんだよね。あの声の感じからすると、相当な恨みをこの世に持った怨念に間違いないね。」
と言い、サヤカはさらにその時の様子を詳しく語りだした。
正直言って、ワタシはその話をほとんど聞いてなかった。むしろ、早くこの時間が終わらないかなとすら思っていた。なぜワタシの昨夜体験したばかりの生きの良い新鮮な(?)怪奇体験が、サヤカが幼稚園の頃に外から声を聞いただけの話に持って行かれてしまうのかが理解できなかった。ムカつく。あー早く帰ってアイス食べたい。
だけどそれでもワタシはサヤカと一緒にいる必要があった。それはサヤカがいないと、ワタシは学校で一人ぼっちになってしまうからだった。一人でいることは別に辛くも何ともない。でも一人でいると人から思われることは、ワタシには何とも堪え難いことだった。
その日の夜は勉強が手につかなかった。静かな自分の部屋で鉛筆を握ったまま、ぼんやりと今日の学校での出来事を思い出していた。別に怒っているわけでも、悲しんでいるわけでもなく、ただ思い出しては、もう学校に行きたくないなぁとか思っていた。
そんな時、また異変が起こった。
昨夜と同じあの不思議な感覚。
外の虫の声、車の通りすぎる音、近所から聞こえる赤ん坊の泣き声、それらが一つに重なったのだ。
驚いているとその声は、
「ふ」
と言った。その声以外は完全に何も聞こえない。
戦場の兵士のような気持ち(多分)で息を殺していると、その声がさらに、
「ふふふふふふふ……」
と言った。笑っているようにも聞こえた。
唖然としているワタシに対して、その声は続いてはっきりとした文章でこう言った。
「キミはいつもここにいない」
キミ?誰?ワタシ?そんなことを思い、恐怖と疑問の気持ちでキョロキョロと周りを見渡していると続いてその声はこう言った。
「……キミは学校にいるときは自宅のことを考えている。自宅にいるときは学校のことを考えている。そしてあろうことか疲れ切ってしまっている。逆にすればいいのにって思っちゃうよ。」
そしてまた「ふふふ」という笑い声が聞こえてきた。
どうやらワタシの身に何か大変なことが起こっているらしい。しかしどんなに恐ろしくても、こんな状態をいつまでも許すわけにはいかない。
ワタシは勇気を振り絞って、噛みしめるようにこう言った。
「アンタ何なの?アンタ一体誰?」
するとその声は、ゆっくりとこう言った。
「スカイピープル」