一体何なの?この状況。

(もちろん怪奇現象なんだろうけど)

まぁ、幻聴の可能性もないことはない。

だけど、それならさっきの「世界とはキミのことだ」という話を説明できない。

だってそんなことはワタシが絶対に考えつかないことだから。

そうなると後、考えられる可能性としては何か霊的なモノが取り憑いたってこと?

悪霊?呪い?そういう系の何かが……。

 

そんなことを考えていると、スカイピープルが笑った。

 

「フフフ。キミは若いのに『呪い』とかずいぶん古風なものを信じているんだね」

 

またも考えを見透かされて笑われたワタシはさすがに頭にきて、大声を出した。

 

「その頭の中を覗くのやめてくれる⁉︎

スカイピープルだか何だか知らないけど、

アンタみたいな奇妙で敵か味方かもわからない不可解な存在は

ワタシにとって『呪い』みたいなモノでしょ⁉︎」

 

すると、スカイピープルはゆっくりとこう話しだした。

 

「フフフ『呪い』か……。

その『呪い』というものを現代的な解釈で言い換えるならば、

それは『相手に罪悪感を与える行為』ということになるだろう。

例えば、キミは誰かに怒られたり、誰かとぶつかったりした後に、

大げさに悲しんでみせたり、大げさに痛がってみせたりしたことがあるだろう?

それは、そうすることで相手の罪悪感を刺激して苦しめたいからだ。

キミはそういう時、相手に呪いをかけているということになる。

そういう経験あるよね?フフフ。

もちろんボクにキミの罪悪感を刺激する理由は全くないので、

ボクは『呪い』なんかじゃない。もちろん『悪霊』でも。フフフ」

 

何も言えずに黙っているワタシにスカイピープルはさらに続けた。

 

「そして、ボクは敵じゃない。キミの味方だ。

ボクはキミにボクの仕事を手伝って欲しいと思っているんだ。

そうだね。ボクがキミの味方だと信じてもらうために、

キミが幸せになる方法を一つ教えることにしよう。

キミの日記に書いてあったけど、

キミは毎月、生理で大変な思いをしているんだよね?」

 

「ちょっと!そこまで読まないでよ!」

 

何?何?突然すぎてビックリした!

いや、確かにそうだけどさ!

ワタシは毎月、生理前には胸が痛くてたまらなくなる。

階段を降りるだけで痛みが走る時もある。

だけど、女子高生に普通、生理のこと訊く?

怪奇現象にはプライバシーという概念とかないの?

しかもセクハラじゃん!

 

そんなことを思っているワタシを気にもかけず、スカイピープルはこう続けた。

 

「幸せの道を照らそう。

キミは6歳のある日、さっきも話題に出た『呪い』を自分にかけている。

記憶を辿って『呪い』をかけたその日を見つけ出すんだ。

そして、その『呪い』から6歳の女の子を救い出すんだ」

 

「どういうこと?それと生理と何の関係があるの?」

 

と言うワタシにスカイピープルは、こう言った。

 

「『キミと世界は切り離されていない』という話はしたよね?

同じように『今のキミと過去のキミは繋がっている』ということだよ。

フフフ。キミは何でも頭で答えを出そうとするところがある。

そんなキミにとって今夜は理解が追いつかないことばかりで大変だろう。

だからとにかく、キミがこの後で理解よりも先にまずやることは、

『呪い』にかけられた女の子を見つけ出すことだ。

後は、その女の子がキミを幸せに導いてくれる。

ボクは3ヶ月後、またキミの前に現れる。

きっと、その頃にはキミはボクを信じてくれるようになっているはずだ」

 

ワタシはしばらく言葉の続きを待った。

だけどスカイピープルの声はもう聞こえなかった。

外から猫の鳴き声が聞こえてきた。

どうやら長い長い怪奇現象は突然に終わりを迎えたらしい。

 

ワタシは呆然としていた。

そりゃする。

こんな体験はもちろん人生初だし、

初のくせに内容が濃すぎる。

こういうことって普通、もっとこう徐々に進めるもんじゃないの?

(こういうことに普通があるかどうかは知らないけど)

 

悔しいけど、スカイピープルの言うとおり、

ワタシが今夜のことを全て理解するには相当な時間がかかりそうだった。

そんなことをワタシはスカイピープルのこの言葉と共に思っていた。

 

キミがこの後で理解よりも先にまずやることは、

『呪い』にかけられた女の子を見つけ出すことだ。

 

何なの?『呪い』?

スカイピープルは『6歳のある日』とも言っていた。

 

6歳……。

ワタシの6歳の頃といえば、

妹の永遠(トワ)がまだ小さいこともあって、

歳の近いイトコのタダシ君とばかり遊んでいた。

ワタシの初恋の相手だった。

タダシ君と遊ぶことは本当に幸せだった。

懐かしいなぁ。

 

ワタシは目を閉じて、その頃の幸せな気持ちに浸った。

しばらくすると徐々に、6歳の頃のワタシの顔まで見えてきた。

幸せそうに笑っているんだろうなぁ、

と思いながらその記憶の風景を眺めていると、

驚いたことになぜかワタシの表情は曇っていたのだった。

何だ?と思っていた時、

不意に当時の記憶と感情が蘇った。

 

その頃、タダシ君は9歳だった。

タダシ君は活発ということもあって、

ヤンチャな遊びをいつも好んだ。

ワタシはヤンチャな遊びは好きじゃなかったけど、

タダシ君と遊べることが嬉しくて、

必死になってタダシ君についていっていた。

 

ある日、タダシ君がプロレスごっこをしようと言いだし、

卍固め(渋いチョイス)をワタシにかけていた時、

ワタシは痛みで泣き出してしまった。

泣き出したワタシを見てタダシ君が、

「そっか、ハルカは女だもんな……」

と悲しそうに呟いた。

 

そのタダシ君の悲しそうな顔を見た時、

ワタシは強烈にあることを感じた。

それは今、言葉にするとこういう感情だった。

 

「ワタシが悪いんだ。ワタシが女だからいけないんだ。

できれば男に生まれたかった」

 

…………………………………………………………。

 

そうだ。思い出した。

これは『呪い』だ。

ワタシは『呪い』をかけていた。

罪悪感という『呪い』を自分にかけていたんだ。

 

突然、全身の力が抜けた。

今、気づいたが、

ワタシはさっきまで相当な力を全身にかけていたらしい。

恐怖と緊張からの力みからの解放?まぁそういうやつ……。

 

そんなことを思い、ワタシは気を失うように眠りについた。

夢の中で、どこでもない寂しい場所をワタシはひたすら歩いていた。

やがて目の前に小さな女の子が現れた。それは6歳の頃のワタシだった。

「女の子でいたいよ……。女の子でいちゃダメなの?」

とその子は泣きながらワタシの目を見つめて言った。

ワタシはその子を抱きしめ、

「女の子でいいんだよ。愛してる。愛してるよ」

と言った。

女の子はワタシの腕の中で、

「本当に?嬉しい!」

と弾んだ声で言った。

 

目が覚めたとき、ワタシの瞳からは涙が溢れていた。

そしてそれから3ヶ月経つが、胸の痛みはもう起こっていない。

 
 
 
 
 

 

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