俺と後輩は新規獲得のため、仕事が終わってからキャッチに行くことに。

一旦帰宅して私服に着替えると、池袋駅で合流。
二人はさっそくお客になりそうな女の子を物色し始めます。

俺「あの水商売っぽい子はどうかな?」
後輩「こっち二人なんで相手も二人の方が良くないっすか?」

俺「あの二人はどう?」
後輩「さっきからキョロキョロしてますよ。たぶん観光客っす」

後輩「あの派手な二人なんかどうすか?」
俺「靴がヨレヨレじゃん。たぶんホスクラ来るほど余裕ないよ」

後輩「じゃああそこに座ってる二人とか」
俺「明らかに未成年じゃん」

俺「お!あの二人良さげじゃね?」
後輩「二人共結婚指輪してるっす。主婦は無理っぽくないすか」

後輩「あの二人組いい感じっす!」
俺「よく見ろよ。あっちに連れの男いるだろ」

後輩「・・・疲れたっすね」
俺「・・・ひと休みするか」
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この二人にナンパは無理のようです(汗)

結局昼から夜まで一度も声を掛けることが出来ず、戦わずして負けた気分でしたorz



それから何日か経ち、後輩が新たな新規開拓案を打ち出しました。

後輩「ネットっす!サイトにアドレス載せとけば向こうから連絡来ますよ!」

俺「出会い系は業者やサクラばっかで使えねーじゃん」

後輩「出会い系じゃなくてプロフサイトっす!ランキングに参加して上位に入ればアクセス増えて激アツっすよ!」

あまり期待はしませんでしたが、とりあえずアドレス入りのプロフを作ってランキングに参加。
するとさっそくメールが!
『歌舞伎町よく行くので仲良くして下さい』

ネット、使えるかもしれない(´ω`*)

それから何個かのプロフサイトとホスト専門のサイトに登録。
週2~3人からメールをもらうようになりました。

後に、このネットを使った営業が俺に大きな転機を与えることになります。






店では新しい新人が増え、すでに俺にも4人の後輩が出来ました。
みんな二十歳前後の若いホストばかりです。

常にナンバー入りしている幹部ホスト達は二十代半ば~後半ですが、それでも俺より年下。
俺は店で最年長でした。

「最近の若いもんは・・・」などと年寄りのようなことは言いたくないのですが、とにかく楽をしたがる新人が多い。。

下のミスは自分の責任。
後輩の洗い物や掃除が雑だと、俺が幹部に怒鳴られました。

営業中厨房に呼ばれ行ってみると、幹部のY先輩がゲスタンを光にかざしながら言いました。

【ゲスタン】ゲストタンブラー。お客様用のグラス

「これ拭き残しあるじゃん。お前チェックしたの?」
俺「すみません!」
「いちいち俺にこんなこと言わせんなよ。下の奴らちゃんと教育しろ!」
俺「はい!ありがとうございます!」

ホストは縦社会の極み。
まさに体育会系の世界です。
俺も自然と後輩達に対して厳しい口調になっていきました。

ホスト経験者の新人、特に他店でナンバー入りしていた新人は余計なプライドがあり、指名獲得を優先してファーストやオンリー、洗い物を敬遠します。
新規の卓に着いている時などは絶対にそこから離れようとしません。

頻繁に雑用をサボる新人を呼び出し何度か注意しましたが、一向に直りませんでした。



ホストは飲んでナンボ。

皆さんそんなイメージがあると思うし、俺もそう思ってました。
酒豪の俺にとって、飲んでナンボの環境は有利だと考えていたんです。
でも現実は・・・
いつも喉の渇きに苦しんでいました。

後輩の動きが遅く、いつも自らがファーストやオンリーに駆け回る日々。

やっとヘルプの卓に戻ると、お客様が笑いながら言いました。
「汗だくじゃん!顔拭いてきなよ(笑)」

季節は冬。
なのに休みなく動くせいで半端じゃなく暑い。
流れる汗で目が開けられなくなるほどの運動量。
やることが多すぎて気が狂いそうです。

水分補給がしたくてお酒を飲もうとしても、付け回しですぐに他の卓へ移動。
基本的に自分の指名客以外の卓は15分で交替しなければならず、何度も席を立つ俺はゆっくり飲む暇もありません。

枝のいる卓や新規の卓はチャンスですが、15分間ずっといるのとちょくちょく席を外すのとでは指名をもらえる確率がだいぶ違ってきます。

【枝】えだ。指名ホストがいるお客様(幹)が連れてきたフリーのお客様

指名さえもらえば好きなだけお酒が飲めるし、タバコだって吸えるのに・・・
理想と現実の落差にイライラは増すばかり。

新規卓が多い日に厨房で洗い物ばかりしていると、キレそうになります。
その日もサボりグセのある後輩は新規卓から動こうとしませんでした。
俺はその後輩を厨房へ呼びます。

「俺が何してるか分かるか?」
後輩「すみません後で俺が洗います!」
「後でじゃねーよ。これ見て分かんね?洗い物たまりすぎてグラス足りねーんだよ」
後輩「でも今は忙しくて・・・」
バンッッッ!!!!!
「口答えしてんじゃねえ!!」

厨房に怒声と壁を殴る音が響きました。

「忙しいのはみんな一緒なんだよ!!前に注意されてから一度でも洗ったか!?」
後輩「・・・。」
「ガキじゃねーんだから同じこと何度も言わせんな!!」

思い切り怒鳴ってしまいました・・・。
たまっていたのは洗い物だけでなく、俺のストレスだったようですorz






A店のホストは約25人。
ナンバーは在籍4~5年になる幹部で占められ、ほぼ不動の状態でした。
ひと月の指名数100本以上という人気ホストもいる一方、残る大半は指名数一桁か0。

店によってやり方は様々だと思いますが、A店では新規卓にも必ず幹部が着くため指名数の偏(かたよ)りが顕著でした。
幹部が同じ卓にいると、立場が下のホストは気を使ってガッツかなくなるからです。

幹部の中でも特にガッツキの激しいY先輩は、新規の卓で自分よりガッツく後輩がいると「態度が生意気だ」とトイレに呼んで殴っていました。

よく水商売は弱肉強食の世界だと言われますが、これは意味をはき違えた弱肉強食。
そんな理不尽な行為を目の当たりにして、一人また一人と新人が飛びました。

やってくれるぜY先輩・・・
せっかく苦労して教育したのにorz






入店2ヶ月が経ち、俺もコンスタントに送り指名を頂くようになりました。

【送り指名】初回のお客様が帰る際、気に入ったホストに店の前まで見送りしてもらうこと。次回来店時、本指名になる確率が高い

ただ俺のスタイルは友営なので、色営やオラ営のように結果がすぐに出る訳ではありません。

【友営】友達営業。仲のいい飲み友達のような接客方法
【色営】色恋営業。付き合っていると信じ込ませる接客方法
【オラ営】オラオラ営業。強気で命令口調な接客方法

A店は入店3ヶ月を過ぎると最低保証の給料が無くなります。
指名を取って売上を上げなければ給料をもらえません。

このままじゃタダ働きになっちまう・・・。

不安になった俺は、先輩達に初指名がいつ頃だったか聞いてみました。
みんな意外と遅く、大体3ヶ月~半年でした。

他店から移籍してきたホストはすでにお客様がいるので初指名も早いのですが、未経験で始めた場合3ヶ月以内の指名は難しいとか。

タダ働きを経験している先輩が多いことにも驚きましたが、さらに驚いたのは・・・
いまだに指名が少なく収入がほぼ0の先輩達が、遠い実家から通ったり幹部のマンションに間借りしながらホストを続けていることでした。

先輩、他の仕事を探した方がいいんじゃ・・・(^_^;)

初めての東京で頼る人も帰る家もない俺は、収入が無くなれば生活できなくなります。
少ないチャンスで確実に指名を取らなければなりません。

みんなと同じじゃダメだ!
オリジナリティを出して他のホストとの違いをアピールしなきゃ!
そう思った俺は、セルフプロデュースを徹底することにしました。



まず男本の宣材写真を変更。
タバコを宙に浮かせている写真にしました。

【男本】男メニュー、ホストファイルとも言う。初回時にホストを選ぶ際に使うアルバム

プロフィールには「Don't think just feel.(考えないで、感じて下さい)」とメッセージを添え、名刺も『Illusionist』(イリュージョニスト=幻影師)という肩書きを付けたものに作り直します。
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そして店のホームページに空中浮遊の画像を載せ、DVD撮影の際の自己紹介でも光を操るマジックを披露。
決めゼリフを「It's miracle time♪」としました。

営業中もお客様にマジックを見せ始めたのですが、インパクトだけで終わらないようひと工夫☆
ホストらしく恋愛やエロの要素を加えた〝色恋マジック〟という新ジャンルを掲げることに。

非日常を求めてホストクラブを訪れるお客様に、お酒や疑似恋愛だけでなく、幻想世界を提供。
現実と虚構の狭間に身を委(ゆだ)ね、不思議な感覚に酔う〝夢心地〟を体験して頂く。

このスタイルは友営ではなく〝夢営〟と呼べるかもしれません。






歩く○億円の異名を持つある女性実業家が言っていました。
人が集まるには4つの要素が必要だと。
「珍しい」「不思議」「オリジナル」「分かり易い」

前3つは当然のこと、「分かり易さ」はとても重要。
どんなに面白いことでも、相手に伝わらなければ意味が無い。
考えれば簡単なことですが、簡単に出来ることではありません。

俺は一見単純で卑近な『色恋マジック』というキャッチコピーを用いることで、本来伝えたいメッセージである〝夢の実現〟をより分かり易く提示しました。

同じく重要なのが「オリジナル」
人とは違う何かがないと、競争社会の場では生き残れません。

レストランなら料理の美味しさを追及し、ホストなら話術を極めようとすると思いますが、それはその業界全ての人間が行うことなので、オリジナルでは無くオーソドックスです。
(もちろんこれを行うことも大切です)
それにプラスαして、その他の力をどこまで引き上げられるかがオリジナリティに繋がります。

俺はマジックというオリジナリティをアピールしながら、オーソドックスを磨くことも忘れませんでした。
小悪魔agehaはもちろん、JELLYやBLENDAなどのギャル系、CanCamやViVi、JJなどのお姉系まで女性ファッション誌をくまなくチェック。
歌舞伎町を歩き回り、ホストに遊びに来るお客様の趣向や流行を常に把握するよう努めました。
会話のネタは多ければ多いほど有利です。



話術で大事なことはまだあります。
芸人の心得として「必ずウケる鉄板ネタを最低3つ持て」という言葉があるのをご存知ですか?
これは、急に笑いを求められたり無茶な振り方をされてもすぐに対応しなければならないプロの心得。
ホストも芸人同様会話のプロですから、実践しない手はありません。

ぐっさん(DonDokoDon山口智充)が芸人仲間に尊敬されている理由に、鉄板ネタの豊富さがあります。
TVでは放送できない下ネタが多いのですが、確実に笑いを取ることができます。
例えば「Mrビーンのク○ニ」
モノマネ+下ネタ
この組み合わせはまさに鉄板と言えるでしょう。

俺は北野武さんのモノマネが好きでよく披露していたのですが、下ネタを加えることでよりウケるネタへ進化させました。
「凶暴すぎるゲイのタケシ」です。
他に「発情期のスティッチ」や「福山雅治の言葉責め」など、お客様の反応を確かめながら試行を重ね、鉄板ネタを確立させていきました。

マジックにも同じことが言えます。
絶対に失敗する心配がなく確実にウケるネタを持っていると、ステージでの演技に余裕が生まれます。
マジシャンの緊張感や不安感は観客に伝わってしまいますから、より世界観に浸って頂く為には、自信溢れる演技が不可欠です。

この「鉄板ネタを3つ持て」の言葉は、様々なシーンに応用できる大切な心得だと思います。






ある日いつものように送り指名を頂いた俺。
テーブルへ行くと、なんと相手は男性客。
な、なぜ・・・!?

次回「ホストマジシャン3 奇跡の価値は」

この次も、サービスサービスゥ♪