前回アップした、“おじいちゃん流”うつ病治療 (2)では、初診から、ある程度の寛解が得られるまで(数か月~1年間くらい)に行う薬物療法、についてお話ししましたが、<どの程度、内因性うつ病寄りか、神経症性うつ寄りか、不安障害寄りかで、抗うつ薬の種類を選択します>について、もう少し詳しく説明します。
初診時において、“不安抑うつ状態”の患者さんの診察をしながら、これからの薬物療法や精神療法を考える上で、下記の分類を頭に浮かべます。この分類は、以前『うつ病を考える(1)』で説明した、キールホルツの分類に近いものです。
① 典型的な内因性うつ病
② 内因性うつ病と心因性うつ病との中間(疲弊性うつ病、反応性うつ病)
③ 典型的な心因性うつ病(神経症性うつ病、反応性うつ病)
④ 心因性うつ病と不安障害の中間
⑤ 典型的な不安障害(パニック障害など)
このような分類を念頭に置いて、①~⑤は連続線上にあり、(①はうつがメイン、⑤は不安がメイン)それぞれが重なり合っていて、それぞれの間を移行することもある、と考えて治療を行います。精神科臨床では、診断を確定することが重要ではなく、症状の変化に応じて柔軟に対応(方針変更)することが大切なんです。
また、“不安抑うつ状態”を呈する精神障害といえば、うつ病や不安障害に限りません。上記の分類の中には、双極性障害、パーソナリティ障害、発達障害、などが併存して含まれているので注意が必要です。治療を進めていく過程で、双極性障害が見つかった場合は、薬物療法も精神療法も大きく変わります(『双極Ⅱ型は医者泣かせ』参照)。今回のシリーズでは、うつ病と不安障害に限定して、その他の精神障害(双極性障害、統合失調症など)は除外されたものと考えてください。
上記の分類を念頭に置きながら、私が現在使っている抗うつ薬を、頻度が多い順に並べると、だいたい下記のようなものになります。これはあくまで、現在の“おじいちゃん流”であって(まったく科学的根拠はなく)、上位にある薬の方が効くという意味ではありません。
① リフレックス>サインバルタ>SSRI
② サインバルタ>リフレックス>SSRI>ドグマチール
③ SSRI>サインバルタ>リフレックス>ドグマチール
④ SSRI>ドグマチール=サインバルタ
⑤ SSRI>サインバルタ>ドグマチール
SSRIにはデプロメール(レメロン)、ジェイゾロフト、パキシル、レクサプロの4種類があります。このうちどれを使っても大差はないのですが、私が使い慣れているのは、ジェイゾロフトとデプロメールです。レクサプロもよい薬です。パキシルを新たに処方することはありませんが、継続して使っている患者さんもいます。
SNRIにはサインバルタのほかにトレドミンと2018年に発売された、イフェクサーSRがあります。トレドミンを私は使わなくなっていて(わたしの好みの問題?)、イフェクサーSRは、ほとんど使用経験がありません。
“ドグマチールの使い方”は、20数年前とは大きく変わっていて、私流の“裏技”になっています。次回以降のブログで改めて詳しく説明します。
併用する抗不安薬として、メイラックス以外で使用する抗不安薬は、私の場合は、ソラナックスの頓用です(ワイパックスでもレキソタンでも同じです)。恐怖突入用、不安発作時に使ってもらいます(『不安障害における頓服薬とは』参照)
入眠困難に対する睡眠導入剤としては、マイスリーかルネスタ。途中覚醒や熟眠感のなさには(デジレル、リフレックス、テトラミド)などの抗うつ薬を使います。
参考:ちなみに、①・③・⑤にあたる症例を過去ログから探すと
①『内因性うつ病の症例』、『精神科医は「自分は幸せだ」と思っている』
⑤『パニック障害の症例(1)』、『SSRIの助けがなかったら』などがそれにあたります。
予告:次回は、上に書いた、①~⑤は連続線上にあり、(①はうつがメイン、⑤は不安がメイン)それぞれが重なり合っていて、それぞれの間を移行することもある、と考えて治療を行います。について、実際の症例を出して説明したいと思います。