…【60】が発表した短編小説『檸檬』では、主人公が京都の書店に爆弾に見立ててレモンを置いたと云うシーンで有名である。
『檸檬』は【60】梶井基次郎の代表作である。
旧制第三高等学校での内的体験を下敷きに習作を重ね、
東京帝国大学に進んだ後に
文学仲間と出した同人誌『青空』創刊号に発表した。
「えたいの知れない不吉な塊」に心が押さえつけられて、
主人公は京都の街をさまよい歩く。
みすぼらしくても美しいものに引き付けられて、
寺町二条の八百屋で見かけたレモンを一つ買う。
その重みと冷たさに心が高まり、
三条麩屋町の丸善に入ると
色とりどり美術画集を積み重ねた上に
レモンを置いて立ち去る。
主人公は「黄金色に輝く恐ろしい爆弾」
が大爆発するのを空想する。
当初は文壇から無視されたが、
発表7年後に小林秀雄が髙く評価した。
京都ではレモンを買って丸善へ…と云う若者もいたが、
今は舞台となった八百屋は廃業し、
丸善も同じ場所にはない。