ハイドン『エルディーディ四重奏曲』色々 | angsyally1112のブログ

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ドーリック四重奏団だけでなく、今回も多くの『エルディーディ四重奏曲』を聴きました。その中で印象に残った演奏を少々書いて見ました。




タートライ四重奏団
1964年録音

今では、最もスタンダードな『エルディーディ四重奏曲』に思われるタートライ四重奏団の演奏は、もう60年近くも昔の1964年の録音です。
タートライ四重奏団が、かの有名なバルトーク弦楽四重奏曲全曲録音を行ったのは、その直後の1966年~1967年ですので、正に絶頂期の頃の録音です。
後年に聴くような緩やかなハイドンではなくとても引き締まった表現の濃密なハイドンです。
しかし、ここかしこに聴こえる微かなポルタメントや、タートライの優しい音色はこの演奏を古典的名盤として多くの人々に愛聴されてきた理由の一つと思います。
録音もとてもリアルなアナログサウンドで、BeyerdynamicT-1バランス接続で聴くサウンドには誠に誠に多くの情報がインプットされています。
決してスケールの大きな『エルディーディ四重奏曲』ではありません。又、ウィーン的な優雅さもありません。どちらかというと、とても馴染みやすい民衆音楽的な雰囲気がします。誤解を恐れずに言えば『田舎のハイドン』のようです。それは、バルトークの演奏で聴こえた歌心にも通じます。その辺りが、この親しみやすさの要因なのでしょう。



コダーイ四重奏団
1989年録音

客観的ともいえるかっちりとした構成力で、とても明確な表現の超生真面目な『エルディーディ』です。全体的にスケール感もあります。
同時代に出てきた若い四重奏団や、ピリオド奏法の楽団等の個性的な演奏とは違いどちらかと言えば保守的な演奏です。
しかし、4弦の絶妙のバランスによるハーモニーの美しさは、比類無きものがあります。特に緩徐楽章での美しさは、形而上学的な眩しさを感じます。
有名な第3番『皇帝』第2楽章変奏曲のハーモニーの美しさは絶品で、他の演奏ではここまでは徹底していないですね。
まるで教科書のように楷書体の第5番第2楽章『ラルゴ』を聴くとやはりコダーイ四重奏団盤は、最も信頼できるリファレンス盤なのだろうと思います。どこまでも生真面目で遊びの無い誠実なハイドンです。



エオリアン弦楽四重奏団
録音:1972~76年、ロンドン(ステレオ)

今回、Op.50『プロシャ四重奏曲』で知ったようにこの四重奏団は、かつて思っていた『ゆるハイドン』ではなく、リアリティ重視のアグレッシブな演奏です。ボリュームを上げて聴けば、結構荒れ狂う破壊力のあるサウンドです。第1番、第2番と聴いてきてその迫力に驚いています。この点では、タートライ四重奏団の方が明らかに素朴です。
最近のデジタル録音に比べれば、音質の悪いアナログ録音ですが、暫く聴き続けていると、慣れからでしょうか不思議に気になりません。

むしろ、粗さがこの演奏の魅力に感じられます。


第3番の迫力も十分ですが、第2楽章『皇帝讃歌』の変奏は、まるで各々独立した人格が、モノローグのように噛み締めて語っているような雰囲気です。燃える焚き火を囲みそれぞれの人生を慈しんでいるようです。
この3団体は、どれも『日の出』と『ラルゴ』は、上手いですね。それぞれの持ち味を出していてつい聴き入ってしまいます。
第6番の第2楽章『Fantasia』は、特にエオリアン四重奏団が印象的です。
これらハイドン弦楽四重奏曲全集の録音としては最も有名で古典的な存在の3団体の『エルディーディ四重奏曲』を続けて聴いて見ました。
これら3団体の演奏には、どこか共通する感性があるように思えます。
どんなに個性的でも『ハイドン的な世界』から決してはみ出さないという共通認識のようなものを感じます。
最近の演奏に比べれば、リズム感は少し野暮ったい感じは否めないです。
しかし溢れんばかりの『ハイドン愛』が大変困難な全集録音事業への力の源なのでしょう。

私は、エンジェルス四重奏団の全集で、ハイドン弦楽四重奏曲の全容を初めて知る事ができました。(あくまで聴き通しただけで本当の意味での理解には程遠い段階でした。)
上記3団体に比べれば何ともスマートで軽快なサウンドです。
私にとっては、入門書として最適の全集でした。

最近特に気に入った『エルディーディ四重奏曲』関係では、



ドロルツ四重奏団

『皇帝』と『ラルゴ』が思い出の『太陽四重奏曲Op.20-5』と共に入っています。
LPレコードです。
ラルゴ ドロルツ四重奏団

  とても感動的な第2楽章の美しさに胸を打たれます。演奏時間9分27秒という類の無いスローテンポです。

あらゆるこの曲の第2楽章の中で最も好きな演奏です。心が震えます。


皇帝 ドロルツ四重奏団

  こちらも第2楽章が9分20秒という超スローテンポでゆったりとした時間が、過ぎて行きます。


(50年以上前に、ドロイツ四重奏団のOp.20-5

ヘ短調のレコードを聴いて、ハイドンが好きになりました。今でもその演奏が同曲の一番好みの演奏です。)



サン・マルコ四重奏団

皇帝
NAXOSミュージックライブラリーで見つけた音源です。
名盤の誉れ高いカスパル・ダ・サロ四重奏団に良く似た演奏です。こちらの方が、幾分精緻な感じがします。

 第2楽章は、イタリアの教会で聴く厳かな祈りの歌のようです。窓から光が降り注ぐような誠に美しい変奏曲です。



ヘッドホンは、BeyerdynamicT-1バランス接続で聴きました。