1. 弦楽四重奏曲第69番変ロ長調 op.71-1, Hob.III-69
2. 弦楽四重奏曲第70番ニ長調 op.71-2, Hob.III-70
3. 弦楽四重奏曲第71番変ホ長調 op.71-3, Hob.III-71
チリンギリアン四重奏団
録音:1991年
(NMLのライブラリーより)
以前は、ハイドンはこの作品から前衛である事をやめて、ポップス化(大衆化)した表現へ舵を切ったとマイナスイメージを持っていました。
(とってもムーディなエンジェルス四重奏団の演奏で親しんだものですから。)
でも『前衛である事』は、イコール『時代の先端』ではありませんね。
このチリンギリアン四重奏団の演奏を聴いて、この力強さ、美しさそして華麗なサウンドに、『確かに変わった、でもそれは後退ではない』と思い直しました。
Op.64迄の作品が、事故の内面を掘り下げる要求によって作り続けられてきたのに対して、交響曲のように、もっと楽しく、美しく、明快に音楽を聴衆と共有したいという要求が、押さえられなかったように感じます。各楽章の展開部は、それまでより簡潔で、しかし充実した濃い内容です。第1番の展開部の名人芸等まるで『クロイツェルソナタ』のようにスリリングです。
そして、ロマン派に通じる美しいメロディとハーモニーの魅力です。
特に、第2番第2楽章は、その繊細な光と影の表現に身震いする程の美しさです。
私の手元には、それぞれの単独盤を除いて、3曲揃ったOp71の全曲盤CDは、コダーイ、エオリアン、エンジェルス、リンゼイ、タートライと5種ありますが、このチリンギリアン四重奏団盤は、そのどれよりも説得力のある演奏で、初めてこの曲を聴くような感動があります。
これから、私にとっては、このチリンギリアン盤がこの作品のリファレンスです。
腕を組み、しかめっ面をし、集中して聴こうとする私に『さあ、音楽をもっと楽しんで聴きましょう。』と呼び掛けられているようです。
2018年録音
より耳障りの良い演奏で、チリンギリアン四重奏団のようなスケール感はありません。緻密なアンサンブルで、テクニック的には多分チリンギリアン四重奏団より上かもしれません。よりムーディなサウンドです。第1楽章の展開部などもっとリアルならばなあと思うのですが、多分このようなスタイリッシュなサウンドが、逆にこの演奏の魅力なのでしょう。とっても整理されたサウンドで、もう少しはみ出したような情念の噴出(異音?)が欲しいと思うのは私の余計な願望かもしれません。
間に挟まっている『スコットランド民謡編曲』は、飛ばして聴きましたので、聴いていません。
各緩徐楽章の美しさもチリンギリアン盤と良い勝負です。
もし、こちらを先に聴いていたらこちらの方が、リファレンス盤になっていたかもしれません。チリンギリアン盤の方が、よりリアリティを感じます。
とても評価の高い演奏ですので、多分愛聴者の方は多いのでしょう。
エンジェルス四重奏団
このCDで、この作品に触れました。3曲の緩徐楽章のロマンチックさでは随一です。珠には聴いてみたくなります。