『退職代行サービス、GW明け依頼殺到 わずか1日で驚異的な予約数…ネット賛否「この国どうなるんだ」』

(配信 2024年5月7日 スポーツニッポン)

退職代行サービスの会社に、GW明け退職代行の依頼が殺到しているそうです。退職代行サービスは、退職の意思を本人に代わりに会社へ伝えるサービスです。この退職代行サービスの会社では、GW明け相談の予約が140件以上も入っているとのことです。驚きますね。


  採用面接をすっぽかす学生!


ちょうどこの大型連休明けの時期、2025年度の新卒採用面接で、各社とも忙しいのではないでしょうか?私も先週5人学生を面接する予定でした。ところが、そのうち一人は、約束の時間になっても現れませんでした。実は、最近、採用面接をすっぽかす学生が多くなっています。

採用面接をすっぽかす学生が出始めたのは、3年前あたりからです。そういう学生が、毎年1〜2人います。当社は、毎年、新卒を1名しか採用しませんので、面接する学生は多い時で10名ちょっとです。少なくとも1割以上の学生が、面接の約束をすっぽかしていることになります。

先週、面接をすっぽかした学生は、大手人材紹介会社から紹介を受けたものでした。担当者に「採用面接に現れませんでしたよ。」と連絡したところ、驚いたことに、担当者は「大変申し訳ありません。理由を確認して、日程を再設定します。」と狼狽して言うんです。私は、「ちゃんとした理由があれば、連絡してくるはずですよ。約束を守らないんだから、社会人としてふさわしくありませんね。当社の必要とする人材ではありません。」と言ってお断りしました。

こういう学生でも、人材紹介会社は、黙って他社に紹介するんでしょう。人手不足の折、最終的にどこかの会社に内定することになるんだと思います。そして、来年のこの時期になると、その学生は退職代行会社に依頼して会社を辞めて、また、人材紹介会社の紹介で、どこか別の会社に転職していくんでしょう。「人材紹介会社→就職→退職代行会社→退職→人材紹介会社→就職・・・」の回転が続いていけば、退職代行会社も、人材紹介会社も手数料をもっと稼げるわけです。


  「退職の自由」があるのに?


以前にも書きましたが、日本の法律では、労働者は退職を希望する場合、原則として自由に退職できます。憲法22条では「職業選択の自由」を認めているからです。「職業選択の自由」があるため、労働者は不当に拘束されることはありません。したがって、「退職の自由」も同時に保障されていると考えられています。

また、民法によれば、期間の定めのない労働契約を結んだ場合、退職を希望する労働者は自由に退職でき、退職の意思表示をしてから2週間が経過すれば雇用関係は終了することになります。この退職代行会社は、「退職成功率100%継続中」とピーアールしてますが、日本においては「退職の自由」が保障されているわけですから、当たり前のことです。

なのに、どうして、自ら会社に退職の意思を申し出ないで、「退職代行サービス」に申し込むのでしょうか?労働条件が違っていたなら、労働条件通知書をもらた時に承諾しなければいいし、労働条件通知書と実際が違っていたのなら、それを理由に辞めて行けばいいのではないでしょうか?

夜のTVニュースでも、このことが取り上げられていて、退職代行サービスを利用した人にインタビューをしていました。その人は、辞める理由を「慰留されるのが面倒くさいから」と説明していました。慰留されるくらいの人材だったら、自分で理由を説明して堂々と辞めていけばいいじゃないかと思ってしまいます。


  幸せな国ニッポン⁇


同じTVのニュースでは、労働力不足に悩む企業側は、事態を改善させるため、対応に乗り出しているようです。しかし、このことは企業側だけの問題でないと思います。

「退職代行サービス」を使うのは、ただ単に辞める理由を説明するのが煩わしいというよりも、ひょっとして、退職の意思表示をしても慰留されなかった時に、自分がショックを受けるのが怖いと言うことなのかも知れません。学生が、採用面接をすっぽかすのも、同様の心理なのでしょう。

しかし、きちんと自分の意思表示ができなかったり、約束を守れない人が、ビジネス社会で生きていけるとは思えません。「約束したことを守る」のは、人間社会の根底にある社会規範です。やむを得ない事情で、約束が守れない場合は、連絡をして相手の了解をもらう必要があります。退職も、この場合、「労働契約を労働者から一方的に解約(約束を破る)」することですから、自ら理由を説明すべきです。退職の自由があるとはいえ、会社の了解を得る努力をすべきでしょう。そのうえで、会社の了解を得て「合意して労働契約を解約する」方がお互いにわだかまりも残りません(円満退職)。

私は、海外に10年いましたが、「退職代行サービス」のようなサービスが成り立つのは、日本だけではないかと思います。海外だったら、自分で決断した退職を会社に申し出るのに他人に依頼する人はいないでしょう。また、自分で意思表示ができないような人には、解雇通知が届いていることでしょう。日本は幸せですね♪