SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年に国連サミットで採択されました。2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標です。これらの目標は、人々と地球の平和と繁栄のための共通の設計図を提供しており、先進国と発展途上国を含むすべての国々による緊急の行動を呼びかけています。これらの目標は、貧困の終結や健康と教育の向上、不平等の削減、経済成長の促進などを戦略的に結びつけ、同時に気候変動に対処し、海洋と森林を保護することを目的としています。SDGsは、国連と各国の長年にわたる取り組みの結果出来上がったものです。それではSDGsで私たちの何が変わったんでしょうか?

1992年のブラジルのリオデジャネイロで開催された「地球サミット(リオサミット)」で、178カ国以上が「アジェンダ21」を採択したのがSDGsの始まりです。「アジェンダ21」は、社会的・経済的側面、開発資源の保護と管理などの4つの側面から行動計画が示されています。持続可能な未来を築くための指針となり、地球環境問題に取り組むための国際的な協力と連携を促進しています。これは、人々の生活を改善し、環境を保護するための持続可能な開発のための包括的な行動計画でした。

2000年には、国連総会で採択された「ミレニアム宣言」に基づき、極度の貧困を2015年までに削減するための8つの「ミレニアム開発目標(MDGs)」が策定されました。極度の貧困と飢餓の撲滅、普遍的な初等教育の達成、ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上、環境の持続可能性の確保などが含まれています。2002年の南アフリカのヨハネスブルグで開催された持続可能な開発会議では、多国間パートナーシップを重視することで「アジェンダ21」と「ミレニアム宣言」を推進することを目指しました。

さらに、2012年のブラジルのリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(「リオ+20サミット」)で、「The Future We Want」が採択され、MDGsを基にSDGsを開発するプロセスが開始されました。それを受けて、2015年の国連持続可能な開発会議で、17のSDGsを中心にした「2030アジェンダ」が採択されました。こうして、1992年のリオサミットから23年の歳月をかけて私たちが持続可能な未来を築くために取り組むべき目標が形作られました。

一方、「公共の福祉」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?。突然、話が飛んで恐縮ですが、日本国憲法に規定された人権の制約法理です。この概念は、人権相互の矛盾や衝突を公平に調整するための規定です。例えば、喫煙者と嫌煙家が同じ密室にいる場合、喫煙権と嫌煙権が相反することになります。「公共の福祉」は、このような矛盾を公平に調整する役割を果たし、バランスを取りながら人権を保障するための原理です。

私たちは「公共の福祉に反しない限り」幸福を追求する権利を持ちます。2015年に国連サミットで採択された「2030アジェンダ」では、国際社会が健康と福祉、産業と技術革新、海の豊かさを守るなど経済・社会・環境を包摂する17の目標を2030年までに達成することを目指しています。これがSDGsと言われるものです。「公共の福祉」の考えでは、公共の福祉に反しない限り、企業は「利潤の追求」をすることができました。

しかし、SDGsを達成するためには、企業は、その事業活動の中で「社会の諸課題を解決すること」が期待され、社会課題を解決しながら事業をした結果として「利潤を得る」ように期待されるようになりました。これまで、公共の福祉に反しない限り、社会課題の解決を期待されることはなかったにも関わらず、今後は事業活動をする中で何らかの社会課題を解決するように期待されるようになったのです。

また、個人にも私生活で関わる範囲で同様の行動を期待するものです。地球環境問題などは、企業や個人一人ひとりの行動の変容がなければ、問題解決へ動き出しません。今までは、公共の福祉に反しない限り「他人事」でよかったものが、これからは「自分事」として自分が関わる範囲で社会の諸課題の解決に取り組んでいくことを期待されるようになったということです。

こうして見てくると、私たちは大きな時代の転換点に来ているようです。これまでは、公共の福祉に反しない限り、自由に何でもできました。公共の福祉に反しない限り、社会課題の解決は、ある意味自分とは関係ない「他人事」でよかったのです。しかし、私たちは、SDGsを通じて事業や私生活の範囲で社会課題を解決することを期待されるようになったのです。逆に言えば、いま地球全体が抱える環境問題など社会課題は、公的な機関が解決できる範囲を超えてしまったことを意味します。世界は、一企業や個人一人ひとりが意識の転換を図り、行動変容しなければならない状況に追い込まれているということです。

東京湾で珊瑚礁ができたり、砂漠の国ドバイで豪雨が降り洪水が起きたり、世界の至る所で異常気象による問題が発生しています。そればかりでなく貧困の問題、教育の問題など世界には解決できない課題が山積しています。その問題の解決に向けて、災害備蓄品を消費期限前に入れ替えて施設に寄付するとか、買い物袋を持参するとか、ゴミを分別して出すなど、微力ながら私たち一人ひとりにできることがあります。私たちは、社会課題の解決に自分たちにもできることがあることを認識して、それを実践することで国際社会の期待に応えていくことができるのです。