マイナビの調査によれば、2024年3月時点において、2025年卒業予定の大学生・大学院生の内々定率は47.4%(前年比17.4pt増) だそうです。内々定率とは、就職活動中に企業から口頭または書面で「採用の通知」が出されている状態を指します。経団連の「採用選考に関する指針」では、正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降とされています。そのため、10月1日以前までの口約束の状態を「内々定」と呼ぶようです。

「内定」または「内々定」と時期により、呼び方に違いがあるにせよ、入社1年前の時点でどこかの会社に就職することが決まっている学生が半数近くであるのは驚きです。「内々定」は、優秀な学生の囲い込みを目的として出されることが多く、就活生が他の企業に流出するのを防ぐため、早期に採用選考を終えてもらうために利用されているとのことです。

最近、アメリカでは社会に出て成功する要因は、才能やIQではなく“GRIT”だと言われています。“GRIT”とは、あまり馴染みのない言葉ですが、ペンシルバニア大学の心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース氏が提唱した概念です。この言葉は以下の4つの言葉の頭文字を取ったもので、「やり抜く力」を意味します。

1.Guts(度胸): 困難なことに立ち向かう勇気。
2.Resilience(復元力): 失敗しても諦めずに続ける粘り強さ。
3.Initiative(自発性): 自分で目標を見据える積極性。
4.Tenacity(執念): 最後までやり遂げる強い意志。

ダックワース氏は、高いIQではなく、“GRIT”すなわち「やり抜く力」を持っている人が社会に出て成功していることを実証研究で明らかにしました。“GRIT“は、生まれ持った才能や知能ではなく、「努力を重ねて物事をやり抜いていく力」を指します。成功者に共通して見られる特性であり、アメリカのビジネスシーンでは重要視されているといいます。

こんな話を聞くと、私たちの世代の方は、スポ根もの全盛期の昭和で言いはやされた「根性」という言葉が思い浮かぶのではないでしょうか?社会で成功するには、「根性」だと言っているように聞こえます。意外なことですが、アメリカでは今そのようなことが言われています。

しかし、残念ながら、この資質は、褒めるだけの教育や外部研修に出すだけでは育ちません。職場において、上司や先輩たちが、時には、厳しく叱責し、誤りを正す態度が必要です。入社する1年前から囲い込まれた学生は、当然に働いた経験がないのですから、優秀だと言われていても上述の“GRIT“をすでに持ち合わせているわけではありません。

職場の上司の方は、新人に会社の価値観と規律、社会人としてのマナーを徹底的に教え込むとともに、仕事を遂行させるなかで失敗もしながら障害を乗り越える経験を積ませることが必要です。そうすることで、初めて“GRIT”を身につけることができるのです。このため、職場の上司や先輩の皆さんは、厳しくも温かみのある新人指導を心がけていただかねばなりません。

根性至上主義であっては困りますが、パワハラと指摘されるのを極度に恐れて、当たり障りのない新人指導をするのでは、決して“GRIT“は育つことはありません。ただ、優しいばかりではなく、嫌われないように干渉せずの態度でもなく、まさに、“GRIT”をもって(情熱を持ち、めげずに、率先して、粘り強く)、新人指導をしていただくことを期待します。