世界幸福度ランキング2024


世界幸福度ランキングが発表されました。上位は、北欧諸国が占めました。北欧諸国の幸福度が高い一方で、日本は51位で、G7諸国の中で最下位となっています。なぜなんでしょうか?

世界幸福度ランキングは、国連の「持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)」によって発表されています。調査は、143カ国・地域が対象で、米ギャラップ社の世論調査をベースにして、約1000人の回答者に「最近の自分の生活にどれくらい満足しているか」を尋ね、0(完全に不満)から10(完全に満足)の11段階で自己評価してもらいます。

対象国毎に実施した世論調査で得られた10段階の自己評価の平均を基に、

① 一人当たりのGDP
② 平均健康寿命
③ 困ったときに助けてくれる友達・親族はいるか?
④ 人生で何をするか選択の自由があるか?
⑤ GDPにおける寄付実施者の度合い
⑥ 政府機関に腐敗は蔓延しているか?

の6つの変数を加味して順位付けされます。世界幸福度ランキングは、主観的な幸福度を捉える一方で、経済的・社会的要因も考慮して算出されています。

  1人当たりGDP、セイフティネット、社会的つながり・・・


一般的に、一人当たりのGDPが高い国々は、幸福度が高い傾向があります。「経済的な安定や豊かさ」は基本的なニーズを満たします。また、「食料・住居、医療・教育など社会制度」が充実している国々は、幸福度が高い傾向にあります。一方、「所得格差が大きい」国では、幸福度が低い傾向にあります。富の不均衡が社会的不満や不公平感を引き起こすからです。

一部の国では、所得格差を縮小する政策を実施して幸福度向上に成功しています。また、「社会的安全網(失業保険、健康保険、年金など)」が整備されている国々は、幸福度が高い傾向にあります。経済的なリスクを軽減する仕組みがあることで、個人の幸福感が向上します。労働環境と幸福感との関係では、「働き方や労働環境」が良好な国々は、幸福度が高い傾向にあります。ワークライフ・バランスや職場のストレスが幸福度に影響していると考えられます。

また、経済的な要因だけでなく、文化的・社会的な要因も幸福度に影響を与えていると考えられ、人々の価値観、信仰、社会的つながりなどが重要となります。経済的な要因は幸福度に影響を与える大きな要因ですが、経済的な豊かさだけが幸福度を保証するわけではありません。社会的な側面や心理的な要因と組み合わさって幸福度が決まります。

  日本のランキング


日本は2022年の54位から、2023年は47位へと7つ順位を上げましたが、2024年は51位と後退しました。幸福度は年齢層によっても異なっているようです。日本では、若年層の方が幸福度は高いようですが、ランキングで比較してみると、60歳以上が36位、30歳未満が73位で、相対的に言うと若者の方が幸福度が低いようです。

日本の場合、バブル崩壊後の失われた30年を経て、非正規雇用などが大幅に増え、経済的な安定が失われ、相対的貧困層も増えた結果、豊かさを感じられなくなっている家庭が多いのでしょう。また、日本の場合、社会的安全網である社会保障制度は充実していますが、いざ、退職の時期を迎え、モーレツに働いた結果として蓄えた金融資産では、その後の長い余生を暮らしていけないと感じている人が相当数いるのかも知れません。

  日本人が豊かさと幸福感を感じられるように・・・


1980年代までは、一生懸命に働けば、それなりの豊かさは実現できました。しかし、バブル崩壊後の失われた30年の間、一生懸命に働いても生活は豊かにならなかった。その結果、日本人の価値観は、勤勉よりもワークライフ・バランスに変化したようです。一方、多くの職場でワークライフ・バランスが実現されていない結果、若い労働者の多くは、幸福感や充実感が感じられていないのが現実なのだと思われます。また、定年退職を迎え地域社会に戻ってみると、地域の絆は薄れ、閉塞感から精神的に病む人も多いのかも知れません。

“Japan as No.1“と言われた1970年代から80年代の頃は、日本は自信に満ち溢れていました。日本は、バブル崩壊後の失われた30年で長期間低迷し、昨年は、ドイツに抜かれGDPで世界3位に転落しました。インドに抜かれるのも時間の問題となっています。一方、今年は、久しぶりに賃金改定が5%を超える見通しです。考えてみると2013年に日銀の黒田総裁が物価上昇率2%を目指して異次元緩和政策を導入しても日本の物価は全く反応しませんでした。

なのに、コロナの蔓延、ロシアのウクライナ侵攻などの国際情勢の危機が引き金となって物価が上昇して、ようやく賃金引き上げの好循環が動き始めようとしています。どうして政府・日銀の政策で、物価上昇が実現できなかったのか?しっかり考えていかなければならないと思います。バブル崩壊直後、批判の矢面に立ったのは不動産融資をした銀行でした。しかし、銀行を不動産融資に走らせる環境を作ったのも、その後のバブルをハードランディングさせたのも、政府・日銀の政策の失敗の結果だったわけです。難しい舵取りとは言え、政府と日銀にはそれだけの責任があります。

政治家も裏金作りに奔走してないで、真剣に国策を考えてもらわないといけないと思います。日本が再び力強い成長と自信を取り戻し、日本人が豊かさと幸福感を感じられるようになるのを願っています。

〔幸福度ランキング2024(抜粋)順位.国名:スコア〕

【上位10カ国】
1.フィンランド: 7.804
2.デンマーク: 7.586
3.アイスランド: 7.530
4.イスラエル: 7.473
5.オランダ: 7.403
6.スウェーデン: 7.395
7.ノルウェー: 7.315
8.スイス: 7.240
9.ルクセンブルク: 7.228
10.ニュージーランド: 7.1232

【先進7カ国】
20.イギリス:6.749
23.アメリカ:6.725
24.ドイツ:6.719
27.フランス:6.609
36.スペイン:6.421
41.イタリア:6.324
51.日本:6.060

【東・東南アジア諸国】
30.シンガポール:6.523
31.台湾:6.503
52.韓国:6.058
53.フィリピン:6.048
54.ベトナム:6.043
58.タイ:5.976
59.マレーシア:5.975
60.中国:5.973
77.モンゴル:5.696
86.香港:5.316

143.アフガニスタン:1.721(最下位)

〔日本の幸福度ランキングの推移〕
2015年: 46位
2016年: 53位
2017年: 51位
2018年: 54位
2019年: 58位
2020年: 62位
2023年: 47位
2024年: 51位