こんなものを買ってしまった。


自分が生まれるより前の骨董品、旧世代の遺物とも言える古いガソリンストーブだ。
今回はこれを買うまでの顛末が話の中心である。

思えば一台のBBQコンロから始まった最近の自分のアウトドアな趣味は、本格的にはここ数年の出来事ではあるが、今やファミリーキャンプができる装備が一式揃っている。
まあ元々はアウトドア好きの親父様の影響でもあり、道具も実家からぶん取って、譲り受けたものも多数あるし、ある程度の素地は整っていたというのもある。姉様なんかは会社の花見でバッグからおもむろにシングルバーナーを取り出して熱燗やインスタント麺をこしらえたりするらしい。

アイテムも揃える時にいろいろと吟味したつもりではあるが、使ってない無駄なものというのも確かにあって、便利やお得というフレーズに惹かれて結局元を取れてない物もあるし、家財よりキャンプ用品の方が高価なんて話はザラにある。

しかし、趣味における物欲というのは背負ってしまった「業」のようなもので、釣り人が釣具店を「魔界」と称すように、アウトドアショップは「迷いの森」である。ネット通販ではお馴染みの密林もあるからタチが悪い。
そんな中で、こういう専門道具の中には玄人好みで扱いが少々面倒ながら、使いこなすことでより充実したアウトドアライフを演出するような物もある。

それは、ガソリンを使うバーナーやランタン、焚き火台、薪ストーブ、蓋付の大型BBQグリルだったりするのだが、更に拘りが過ぎるとヴィンテージ品という敢えて面倒さや厄介さを求めに行ってしまう。
何とも危険な方向へいざなう魔性のアイテム類だ。

とは言え、自身の趣味の物欲も最近は少しばかり衰えて来た(50cmのパエリア鍋を買ったりしたけどw)と思っていた。
しかし、別の趣味で自家製麺を覚えてしまってから、アウトドア+ラーメンという志向が抜けなくなってしまったことで、野外で麺を茹でるための大量の湯を沸かす必要が出て来た。

何度かチャレンジしたものの、自分の装備の中で最も火力のあるユニフレーム社『テーブルトップバーナーUS-D』(最大火力3900kcal/h)を持ってしても野外で5Lくらいのお湯を沸かすのには力不足で、どうも中途半端な茹で具合になってしまう。
そこで、「シングルバーナー  ストーブ  大火力」とかで検索をかけて物色していたところ、snowpeak社『剛炎』(最大火力8500kcal/h)や、そのコピー品(?)の『豪炎』(6800kcal/h)なんかが選択肢に入った。




剛炎は恐らく一般的なガスカートリッジを使うバーナーとしては最強。火力は中華料理屋のコンロに匹敵するとか。
豪炎も火力こそ劣るものの、トリプル火口で強力なのはわかる。
しかし、さすがにsnowpeak製品は高い。剛炎なんか密林で39,800円だ。豪炎は正規の流通ルートには乗らないので、ヤフオクやメルカリで送料込み15,000円くらいが今のところの相場だ。どちらも寒冷地でも使える液出しの新方式も備えているし、コーヒー10杯分以上のお湯を短時間で一気に沸かせるのは何かとありがたい。

でも、この火力は諸刃の剣であり、火力が強い=燃費が悪い。最大容量のガスカートリッジはガスの配合やメーカーで若干違いがあるが、低気温で使える強力なものはだいたい1本1000円くらいする。安いのは800円くらい。


それを41分で空にしてしまうなんて、お前はアメ車かと。
普段のキャンプやBBQではあまり燃料代は請求していないので、数回キャンプすれば何とか元が取れた気がするくらいのやりくり(食料はなるべく自作するとか、大量購入とか)で何とかしている。
そう考えると、ランニングコストがアホらしい。

そうした葛藤の中で思ったのが、ガソリンなら安い!と言うことである。
ガソリンストーブはホワイトガソリンを使うが、ガソリンスタンドで1斗缶で売っていものを買えばガスよりかなり安い。レギュラーガソリンも使えなくはないが臭いらしい。

※メーカー推奨ではないので、あくまで自己責任で。(キャンプ用と成分はほぼ同じらしい)

着火に多少手間がかかるが、散々炭起こしや焚き火をやっておいて何を今さらである。
それで見つけたのが、冒頭で紹介したバーナーである。

前置きが長いのは、もはやこのブログの仕様だ。

こちらは言わずと知れたキャンプ用品メーカーColemanの【コールマン500 スポーツマスター】 という大型のガソリンストーブである。
1963年のカナダ製で、タイプ違いでスピードマスターというのもあるが、この時期のカナダ製はスポーツマスターと言うそうだ。現在はもっと小型の502とか508とかの後継機があるが、500はもうずいぶん前に廃盤になっている。
しかし、ガソリンストーブという分野では1.2を争うサイズと大火力を持っているらしく、12インチのダッチオーブンも乗せられる大きな五徳と頑丈な作りと、シンプルな機構による信頼性の高さもあり、第二次世界大戦中に開発された骨董品なのに人気は高いようだ。第一、このフォルムはなかなかカッコいい。性能とか云々よりも絶対にこれが欲しいと思ってしまった。

調べてみると年式によって500と500Aなど若干のタイプ違いがある様子で、1940年代のアメリカ製はメッキタンクの星形五徳だが、1950年代途中以降になると真鍮タンクの丸型五徳になり、カナダ製とアメリカ製が混在するらしい。
当然、通常購入では入手困難なので、ヤフオクやメルカリ、そしてeBayを物色することになるのだが、まず出物が少なく、出品者の認識度で状態に関する情報に差があり、果たして満足に点火できる状態なのか、値段が適切なのか見極めが非常に難しい。何せ出品者側からしても、ちゃんと使えると断言する人の方が少ない。eBayは本場アメリカだから期待してみたが、恐らくガレージの隅っこに放置されていたゴミレベルの物しか無かった。


で、こういう希少な物になると、これがいかに貴重な物かどうか延々と説明してしまうのは仕方ない気もするが、語るに落ちると言うように、申し訳ないが、高く買わせるための胡散臭い文章にも思えてくる。
買う方も出品者の無知度合いを感じ取りながら強かに安値を狙おうとする分、お互い様なのだが。

さて、しかし選択肢は多くない。
なので、とりあえず状態の比較的良さそうな1951年製造のアメリカ製を狙うことにした。


小野式製麺機を2回オーバーホールしたことに比べれば、穴が空いていたり部品が欠損していない限り、分解整備なんて大したことはない。
ヤフオクで入札してから終了までの1週間、キャンプ好きの後輩やヘアサロンの担当の美容師さんにまで話して、完全に自分が手に入れた気になってワクワクしながら待った。

が、結果は予算をはるかに上回る攻防に負け、おずおずと引き下がる結果に。


着火できるかも怪しい代理出品のものに34,000円以上も払う猛者がいるとは思わなかった。。。
どうやら、1941年~1951年の星形五徳のメッキタンクのアメリカ製は特に人気が高いらしい。あくまで実用性重視の自分とは考えが違うようだ。
その後しばらくコールマン500のことしか考えられないくらい悶々としてしまったので、後日ダメ元で再び入札。



今度は出品者がアウトドア商店であり、分解整備済みの着火保証(着火できなかったり壊れていたら返品・返金)があり、五徳も不燃素材で防錆コーティングしてあるし、機関部の注油やタンク内の洗浄もしてある。つまり商品としてきちんとレストアされたものだ。即決価格は39,800円と奇しくも剛炎と同じである。
人気が高い年代・タイプでは無いが、ここまで条件が揃っていれば30,000円以下では無理だと思った。
どうせ落とせないと思っていたものの、貯まっていたTポイント3,000円分に20,000円を足して、23,000円まで追ってみることにした。当然、終了直前では入札バトルになったが、終了1分前に細かく入札を入れる延長戦(残り5分を切って入札すると5分延長される)を重ねたら23,000円で落札できてしまった。
これは嬉しかった。
思わずガッツポーズした。

もしかしたら人気度としては相応の値段なのかもしれない。自分にはその辺はわからないが、確かに星形五徳の方がカッコ良かった。でも、仮にあの五徳だけ1万円で売ってたら誰か買うのだろうか?


こっちは1951年製よりも12年も新しく、衝撃と錆に強い真鍮タンクなんだから実用品として明らかに価値が高いはず。
そう考えると何だか完全勝利した気分になってしまったのだ。

そうなると、出品者には本当に感謝しかない。
ありがとうございます。大事に大事に使わせていただきます♪