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『永遠の0』講談社
年末年始にこんな小説を読みました。
0とは第二次大戦で旧日本海軍が開発した零式艦上戦闘機(通称ゼロ戦)のことです。
物語はある姉弟が本当の祖父について調査に乗り出す所から始まります。6年前、祖母の死をきっかけに祖母が再婚であったこと、そして血の繋がった実の祖父が存在し、特攻隊員として南西諸島沖で戦死したことは知っていた。それでも姉弟にとってはそれまで特に関心事ではなく、あくまでもジャーナリストである姉の仕事上の予備調査であり、弟にとってはただそのアルバイトに過ぎませんでした。
物語の進行は実の祖父、宮部久蔵のかつての戦友や関わった人達の断片的な証言を基にその人物像が作られていく形式になっています。
死を恐れ、ただの臆病者だったという者、命の恩人であるという者、凄腕のエースパイロットだったと言う者など様々な証言者との関わりの中で、妻と子のもとに生きて帰るためにひたすらにパイロットてしての腕を磨き、戦い続けた祖父の実像が出来上がってきます。姉の特攻隊に対する熱狂的愛国者で殉教的とイメージも変わっていきます。しかし、生きて帰るために必死で戦い続けた祖父がどうして特攻隊に志願して散っていったのか?それが物語のクライマックスであり、そして少し読者に謎を残すことになります。

こんな内容なのに、ラブストーリーです。涙無しに読めません。
著者の入念な調査を基に、時代背景や当時の久々の息遣いが聞こえてきそうなほど実態に迫った書き方がすごい。そして今の日本人が常識的に教えられてきたことの殆どが間違いであることを見事に指摘しています。また、歴史の教科書でもないのに日本が開戦に至った背景や戦況の流れが、非常に理解しやすい構成になっています。
この分野では荒唐無稽な日米逆転物語が多い中、これは今までに類を見ない傑作!凄い小説です。