デスティニー 【第2章 11話】 | 『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』という小説を書いています。
どうぞ御気軽にご覧下さい♪

2014/12/01
多忙でしたがやっと余裕ができました!
まだ忙しい生活が続きますが
休み休み更新していけたらと思います!
忘れ去られているとは思いますが
またよろしくお願いします♪

☆速水綾

途端に、寿々の目からぼろぼろと涙があふれた。


「す、寿々・・・!」

「・・・・・・な、何とかならないの・・・・・?!私んちでもいいよ、・・・・

 ここに残れないの・・・!?」

「・・・・・寿々・・・・・」

「・・・・・・・・・・嫌だ、お願いっ・・・・

 綾、行かないで・・・・・・・・・・・・・っ!!!!!!!」


寿々が、声をあげて泣いた。


「・・・・・・す・・・ず・・・・」

すると、亜衣が脱衣所に入ってきて、

「・・・・へっ!?な、なに!?どうしたの!?」

寿々の背中をさすりながら言う。

「・・・・・私ね、亜衣・・・・・

 新潟に行くの」


「・・・・・・・・へっ?

 に・・・にいがた?

 旅行?ああ、そう・・・・良かった・・ね?」


相変わらず察しどころの悪い亜衣に、私は少し笑って、

「・・・・旅行なんかじゃない。

 ・・・・・引っ越すの。おばあちゃんのいる新潟に」


すると、亜衣がびくっと肩を揺らした。


・・・・・少し察していたのかもしれない。


「・・・・・・・・・・・・や、やっぱ・・・・・・・・・・り、そうなんだ・・・・・」


「・・・・やっぱり・・・か・・・」

「・・・・うん、少しは・・・・察してたんだ、よ・・・・

 あんなおっきなお家に、綾一人で住んでたら怖いし・・・、危ない・・・もんねっ」


「・・・・・・うん・・・・・・・」

肩を震わせながら強がる亜衣に、少し涙すら出てくる。

「・・・・・・・・に、新潟・・・・・・・・・・かぁ・・・・・・・」


性格はこれでも学年でかなり頭のいい亜衣だ。

ここ東京から新潟まで、どれだけの距離があるかくらいはキロにしても分かるはず・・・・


「・・・・・・あ、綾・・・・・・・・・・・・」

「・・・・ん?」

「・・・・・輝には・・・・・言ったの・・・・?」


亜衣の潤んだ瞳が、私の心に突き刺さる。


「・・・・・・・・・・・・言って、ないよ・・・・・・・・」


「な、なんで・・・・・!?言わなきゃだめだよ・・・、ねぇ寿々!?」


「・・・・・っ・・・う・・・ん・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・言えるわけ、ないじゃない・・・・・・」


・・・・・・・・・・・・こんなこと、輝には言えない・・・・・

そんなことを言ってしまったら、どれだけ輝が悲しむか分からない。

私にだって、今日の夜何があるかくらいは分かる。

そんなときに、輝を悲しませたくない。


・・・・・・・・私は、輝の全てを覚えておきたいだけなのに・・・・・・・・・・


それに、引っかかっているのはこれだけじゃない。


・・・・・・私は、この事につけて・・・・愛してほしい、というだけじゃないのかと。


「・・・・・綾」

「え・・・?」

寿々が、私の思いを悟ったかのように言う。

「・・・・綾は、悪くない。

 こんな時に、愛してほしいなんて思うのは当然だよ・・・

 ・・・・綾は、悪くないから・・・

 きっと、輝のことを覚えていて・・・

 全身で、心で」


・・・・・・・・・・・・ぼろ、っと、大粒の涙が零れた。


「綾、泣かないで・・・」


亜衣が、私の濡れた頬を擦った。


「・・・私も、寿々と同じ。

 今日綾が迎える運命と、私たちが迎える運命は、

 
 ・・・・同じ」

「・・え・・・?」


「・・・・皆、生活から綾がいなくなるんだ。

 輝から笑顔が消えて、綾がいなくなる。

 それは綾も同じ。綾から輝が消えて、笑顔が消えちゃうでしょ。

 そうしないために、今日、皆が愛し合うんだよ」

「・・・・・・・亜衣・・・」

「ごめんね。濁しちゃって。

 ・・・・・はっきり言うとさ、

 綾がいなくなるのは、皆同じなの。


 悲しくて、辛くて、寂しくて、笑えなくなって。

 
 みんな、同じ悲しみを共有してるんだよ。

 ・・・確かに、悲しみ方には違いがあるかもしれないし、

 それぞれの思い入れは違うと思うけど・・・」


「・・・・・・っ・・・・」

「「綾、・・・泣かないで」」



私は、顔をあげて、

涙でくしゃくしゃになった二人の瞳を見つめた。




「「ほんのちょっとのさよならだ」」



***