デスティニー 【第2章 5話】 | 『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』 ~運命の物語~ 

『デスティニー』という小説を書いています。
どうぞ御気軽にご覧下さい♪

2014/12/01
多忙でしたがやっと余裕ができました!
まだ忙しい生活が続きますが
休み休み更新していけたらと思います!
忘れ去られているとは思いますが
またよろしくお願いします♪

「・・・・・・・・ん・・・・」



むくっと起き上がると、病院の廊下だった。

横を見ると、おばあちゃんと叔母さんがいなかった。

私はひかれる様に、

霊安室へと向かった―――――・・・・・。



少し不気味な、病院の一角・・・・。

その部屋からは、確かにおばあちゃんと叔母さんの声が聞こえた。



・・・・・・・怖くない。


嘘じゃない。

・・・・ありがとう、お父さん、お母さん。



私に、逢いに来てくれて――――


そう思って、ドアの取っ手に力を入れてドアを開けた。



思った通り、おばあちゃんと叔母さんがいた。

お父さんとお母さんの手を握って、泣いている。


お母さんの妹の叔母さんは、まだ30代で若い。

おばあちゃんもまだ若く、60代前半だった。


「・・・・・綾ちゃん」


「・・・・・お父さん、お母さん・・・・」


何故だろう。

ここにきても、全然ショックじゃない・・・・


ひもがきつく結ばれたように。

全く涙が出ないのだ。


「・・・・・・・・・・・また、後で来る」



私はそう言い残して、霊安室を去った。





手術室の前の待合室に、輝と亜衣と優斗が折り重なるようにして眠っていた。

私はいつの間にか輝の膝を枕にして寝ていた。

そして、輝のズボンが濡れていた。

私は寝ているときに泣いていたんだ、きっと・・・・

起きた時、輝の手が私の頭の上に置かれたままだった。

私は輝の隣に座って、輝の手を握って頭を撫でた。


いつもと逆みたい・・・・。



こうやって、愛する人が目の前にいてくれる・・・・



「・・・・・輝、本当に・・・・ありがとう・・・・・」




本当に、なんでだろう。

お父さんとお母さんは、いなくなってしまったのに・・・・


とても、安らかな気持ち・・・


すると、輝が目を覚ました。


「・・・・・・・あ、綾」

「・・・・・おはよ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・手術、・・・・終わったのか・・・・そうか・・・お父さんとお母さんは?」


・・・・・・・・・・・・どうしよう。


隠しても意味がないってことは、分かってる。

だけど・・・・





すると、輝が何かを悟ったように私の手を強く握った。


「・・・・・大丈夫か?」


「・・・・えっ・・・」


「・・・・・・・亡くなった・・・・・・んだな、・・・・・お父さんと・・・お母さん」


輝の目が潤んだ。

私はその手を握り返して、

「・・・・・・うん」


すると、輝の目から涙が一粒零れ落ちた。


「・・・・・・っ・・・・」


「・・・・・輝」

「・・・・悪い、悲しいのはお前なのに・・・・・俺なんかが泣いて――」

「ううん、・・・むしろ、嬉しい・・・・ありがとう」



輝は驚いたように顔を上げた。


「・・・・・お父さんもお母さんも、きっと・・・幸せだよ、輝にこんな想ってもらえて・・・

 ・・・・うん、幸せだよ、きっと。

  ううん、絶対幸せ」


私は輝の涙を拭って言った。


すると、輝が微笑んで、


「・・・・・会った、んだな・・・・お父さんと、お母さんに」


・・・・・・・・やっぱり・・・


「・・・・・・・・うん」

「・・・・すげーうなされてた。・・・・嫌だ、って・・・」

「・・・ごめんね、うるさかったでしょ?」


「・・・・・・・・・・全然。・・・・皆泣いてた・・・・・。亜衣なんかぼろっぼろだし、滅多に泣かない優斗まで・・・」


「・・・・そっか」

「・・・うん。・・・・・・・・おばあちゃんと叔母さんは?」

「・・・・・・・霊安室・・・・・。ふたりには一回、私の家に来てもらう」

「・・・・そっか。・・・・・・・・・・・・・俺も行っていいか?お父さんとお母さんのところ」


「・・・・・・うん」




からから・・・

引き戸を開けると、おばあちゃんと叔母さんがこっちを見て、さっと立った。


「・・・綾ちゃんの・・・彼氏さん?」


「・・・・・う、うん」

叔母さんがたずねてきた。

「どうも、津川輝です」


「・・・輝くん、か・・・。綾子と誠一さんとは会ったことあったの?」


「うん。一回うちに来たから・・・」

「・・・・そっか。

 ・・・御母さん、一回綾ちゃんのお家にお邪魔してませんか?」


「・・・・そうね。

 ・・・・・・・・綾ちゃん、・・・・・・・・ごめんね・・・・」


「・・・・・ううん。

 おばあちゃんも、叔母さんも、お父さんも、お母さんも、誰も悪くないよ・・・」


すると、おばあちゃんは涙を流して、

「うん・・・」


とつぶやくように言った。


「・・・じゃあ、綾ちゃん、お邪魔してるね」

「うん」


叔母さんとおばあちゃんは出ていった。


ぱたん。


輝とふたりきりになる。


「・・・・・・人の命ってさ」


輝が言った。


「・・・うん」


「・・・・こんなに・・・・儚いんだな・・・」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・俺、どうしたらいいのか分かんない・・・

 こうやって、大切な人失くした時・・・・

 ・・・・・・どうしたらいいんだよ・・・」


輝が頭を抱えた。


私は輝のことをそっと抱きしめた。


「・・・・・・・ありがとう、輝・・・・・・


 ・・・・・・・・・」


輝は、私のことを抱きしめ直して、

「・・・・・・・泣いて、・・・・・・くれ・・・」


と、震える声で言った。


きっとそれは、自分が泣いているからじゃなくて、・・・・・



本当は泣きたくて仕方なかった私の心を、見透かしての言葉だと・・・・




私の目から、今までにないくらい涙があふれた。

そう泣いている私を、泣いている輝がきつく抱きしめて。





・・・・お父さん、・・・・お母さん、


・・・・・・今まで、ありがとう・・・・・・・・
***



家に帰ると、おばあちゃんと叔母さんがお葬式の話をしていた。


「ただいま」

「お帰り、綾ちゃん」

「・・・・お葬式の話?」

「・・・うん・・・・。あ、お金はこっちが出すから、安心してね」


「・・・ありがとう・・・」


「・・・・・・・・・・・・それでね、綾ちゃん・・・・」


「・・・・・何?」


「・・・・・・・・・・・・綾ちゃんは・・・・・・転校、なんて・・・・・したくないよね?」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・転校?


・・・・・・・・・・・そんなこと、考えてなかった・・・・・


「・・・・ど、どうして・・・?」


「・・・・この家に綾ちゃん独りになっちゃうじゃない・・・・。

 この家、ローンはもう払ってあるみたいなんだけど・・・・

 大きめだから、土地代とか払ってたのよ・・・・。

 綾ちゃん、このまま働かずに土地代払ってたら、お金は出ていくばかりなの」


「・・・・・うん」

「・・・・・・・だから、本当にごめんね・・・・・

 

綾ちゃんには、私の家かおばあちゃんの家に引き取られることになる」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


・・・・それって、どういうこと・・・・




「・・・・・・転校、するしか・・・・・・・すべはないのよ」





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・」


「・・・・・・おばあちゃんのいる新潟に行くか、私の住んでる東京に行くか・・・・

 本当にごめんなさい。

 ・・・・・この家には、もう住めない。

 売ったぶんのお金は、綾ちゃんの貯金に入れさせてもらう・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・転校・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





私は、


輝とも・・亜衣とも、寿々とも、優斗とも、拓くんとも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・










・・・・・・・・・


「・・・・・・分かった。

 ・・・・・新潟に行きます」





私の口は、馬鹿正直で。


この人たちに、あまり迷惑をかけたくなくて・・・・


律儀すぎる自分に、少し怒りを覚えて。




そんなときでも、


私の口は自然に動いてしまっていた・・・・・・。



***