「おーい、綾っっ!!」
亜衣たちはもうプールに入って、大きく手を振って私たちを呼んでいた。
「ほら綾、行くぞ」
「・・・う、うん」
少しためらいがちに返事をする私を、輝はいぶかしげな視線で見つめた。
「どうした?」
「あ、え・・・何でもないっ!」
本当は、水着姿で輝に手を引かれるのが恥ずかしくて仕方ない。
でも、そんなこと言えるわけない!
「・・・恥ずかしいのか?」
・・・・・・・・・・・・私、そんな恥ずかしそうな顔してたかな!?
すると、輝は小さくくすっと笑って、
「別に気にすんなよ。可愛いんだから」
・・・・・・・・・「可愛い」と「似合ってる」は違う気がする・・・!
「ほら。あいつらもうあそこまで行ってるぞ」
「・・・・・・っ」
なんだか、私がキュンとくるセリフを輝は知っている気がする。
というより、あの3人(輝、優斗、拓)はとにかくSな人達だから、それほど意識していなくてもそういうセリフが自然と口から出てしまっているのではないだろうか。
そんなことを考えながら輝に手をひかれるまま歩いていると、もうプールサイドに来ていた。
端に座って足の先だけ水に入れると、予想以上に水は冷たかった。
「・・・・つ、つめた・・・」
「大丈夫か?ほら」
「・・・・えっ!?きゃぁぁっ!!」
いきなり輝にわき腹を掴まれ、「高い高い」のように高く持ち上げられた。
「ちょ、ちょっと輝・・・!?」
他にもお客さんがいる中でほほえましいかもしれないが、これでは誰よりも注目される私が恥ずかしすぎる。
「・・・・あ」
すると、輝はいきなり私を水の中にざばっと降ろした。
そのまま身体は冷たい水の中に落ち、濡れた体が風に当たって寒くなった。
しかし、輝は何も言わない。
「・・・輝・・?」
すると、輝の視線はある1点を睨み続けていた。
その視線を追うと、ひとりの男の人だった。
20代前半の、ひょろりとした人。
その人が、ずっと私たち、・・・というか、私を見ているのだ。
たぶん、輝はその視線に気づいて私を降ろしたのだろう。
ずっとその男の人に視線を向けていると、男の人は私たちが見ているということに気付いたのか、そそくさとプールから上がって行った。
「・・・・・はー・・」
輝がため息をつく。
「輝、ありがとう」
「もう、ほんと困るよなー、お前」
「へっ!?」
「・・可愛いからあんな男に目つけられちまうんだよ」
「・・・・・・・・・へっ!?」
「なんでお前ってこんな可愛いんだろなー!」
「・・・・ご、ごめんなさい・・・」
なんだか必然的に謝らなければいけないような空気になってしまい、私は伏し目がちに謝った。
「(笑)お前は可愛くていいんだよ(笑)ごめんな、変なこと言って。」
「う、ううん・・・」
すると、輝の後ろの方で女の子たち数人が固まってプールに入っていた。
その女の子たちは、誰かを指差して噂しているようにも見えた。
その指の先には、輝がいる。
あの空気からして、「あの人かっこいいね」だとかいう会話なんだろうと受け取れる。
私は、さっきの輝の気持ちが痛いほど分かった。
私は大胆だろうと思ったが、思い切って横から輝に抱きついた。
すると、輝がぎょっとして私を見降ろした。
私は恥ずかしくて輝の目線をそらし、俯いた。
すると輝は何か察したように後ろを振り向き、納得の笑みを浮かべて私の顔を見た。
「・・・お前も俺に負けないくらいやきもちやきだな」
「・・・・・・・・・輝がかっこいいのが悪いっっ!!」
私が少し怒ると、
「お前が可愛いのが悪い!」
と言って、私の頭をぎゅっと抱いた。
***
「・・・疲れたあぁぁ~・・・」
閉園時間まで遊びきって、もう5時半。
今はコミュニティバスの中にいる。
「どうやって帰る?」
「バス停から皆で同じ方向の人どうしで帰るしか、な・・・」
「・・・・もーお別れかー・・・」
「「「「「・・・・」」」」」
「・・・きっと、昨日と今日が楽しすぎただけ、・・・それだけだよ・・・」
寿々が寂しそうな頬笑みを浮かべながら言った。
「・・・うん、また明日、会えるし」
「・・・・そうだね」
「うん、クラス違うけど、昼休み話そうぜ」
「うん」
「そうだな」
そんな風に、楽しい3連休は終わって・・・
私たちに、また日常がもどってくる。
***
次回から改めて第2章に突入します!!
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