「え――――・・・これから――あ・・・第一ぃ回のぉ―――あ―――組体操のぉ――――・・・・・」
「はっっっなし・・・・なげーんだよ!!!!!!!!!!!!」
・・・・・・・と、叫んでしまいたい。
「・・・・・速水」
「ひぁっ!?」
「・・・・・ちょ、声でけーよ」
てゆーか、先生が話してるときに話しかけてくる輝も、だいぶ態度デカイと思うんだけど。
「・・・・何?」
「お前、思いっきり嫌な顔してんぞ・・・」
「・・・・・へっ!?」
驚いて、頬をぺちんぺちん、と叩いた。
「・・・・・・お、直ったんじゃね」
・・・・・
なんなんだろう、この人は。
なんか、女子の萌えツボ知ってるって言うか。
裏があるっていうか。
なんか、『今日恋』の椿くんみたいに、仲のいい優斗や拓と、賭けしてそーな。
・・・・・・そう、思われても仕方ない態度とってくるから、憎めないっていうか。
「・・・・・・輝って、誰が好きなの・・・?」
「は?なんつった?」
「・・・・・・・・・い、いやいやいや・・・なんでもないっ」
恥ずかしくてうつむくと、なんか、とってもあったかい気持ちになった。
・・・・・・なんでか、輝といると・・・あったかい。
暑いけど・・・・・輝といるときだけ、救われるような。
・・・・・・・・・・・なんで、だろうか。
***
「ねえ?今日って合奏?」
「・・・・・」
「・・・・・・・綾さん」
「・・・・んん!?・・・っ?」
不思議と私の目は、練習部屋の大きな窓から見える、陸上部の輝を見ていた。
「・・・・だれ見てたの?」
「・・・いやっ?誰でもないっ!」
私はそそくさと寿々からはなれて、私のパートの練習部屋に移動しようとした。
すると、寿々が、
「輝とか―――あ?」
・・・・・・・・・・・・・・・な・・・・・・・・?!
私は、寿々を上からペシャンコにする勢いで、寿々に飛びかかった。
「もう、誰もいないとこでうーっとり風景眺めてるなんてシチュエーション、ないからね?」
「んー、それにっ」
「あ、亜衣・・・!?」
「「今日の綾、な―――んかおっかしいよねぇ?」」
少しずれながらも、二人は同じカオで私をずいっと見る。
「・・・・・・・・い、いやっ・・・!ち、がうし・・・っ!!!!そ、それに私、輝のこと見てるなんてひとっことも――――「「いや~?」」」
「・・・・・・・・・・・・えっ・・・」
「その噛みようは、ズバリずぼぉし!」
やけにムカつく言い方しやがる・・・
「・・・・・だ、だから違うってば・・・!!!!!!」
私はこんどこそ、だーっと出口まで走って、上履きも履かずに練習部屋を移動した。
ドアを閉める前に、あの二人が来てないのを確認して、鍵を閉めて。
カーテンを閉めて、窓の前の棚に乗っかって、食い入るように校庭を見つめた。
・・・・・・輝、・・・いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・なんでかな。
・・・・・・・・・・・・・・・・なんで、こんなにも、
あなたが、気になるのかな・・・・・
するとその時、がたり、とドアが揺れる音がした。
・・・・・・・・・まさか・・・?
私はこそっとカーテンから出て、鍵を開けてドアから廊下をのぞいた。
すると、体育館につながる渡り廊下のど真ん中で、あわてふためいている二人を見つけた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふたりとも・・・・」
「・・・・・・・・・ご、っごめんね~!?ちょおおおおおおおおおおおっと、寿々がね~!?」
「はぁ!?なんで私のせい!?」
「・・・・・・・・・・もういいや」
この二人には、ばれたってしょうがないって思ってたし。
「・・・・・・好きなんだね、輝が」
「・・・・・・・は!?」
「ばればれだよ」
「だ、だから・・・!なんで輝だって断言できるの――――――」
「だってー」
「え・・・!?」
「だって、今日寿々が輝と喋ってるとき、すっごい嫉妬の目で見てたもんねっ?」
「・・・・え?!」
「あの時は気付かないふりしてたけど、亜衣ったらバリバリ気付いてたってさ♪」
「・・・・そ、そんなっ・・・・・!!」
「それに、さっき見てたのも、視線無防備すぎだよ?輝一直線だったもんね☆」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ、そ 、違、ッ・・・・・・・!!!!」
「そーれーにー?」
「な、まだあるの・・・!?」
「・・・・・・だって、組体操の練習の時、綾ったら輝のことみつめっぱなしだもん♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ・・・?」
「自然と目がいっちゃってたんだねぇ♪」
「ま、応援はしないけど、面白いからさっ!」
「・・・・・・・・な、そんだけの人たちに、っ・・・・・言われたくない・・・っっ!!!!!!!!!」
私は、それはさすがにひどすぎると思った。
そんな、面白がるだけの人たちに、教えたくなんかないと本気で思った。
私は、無我夢中で階段を駆け上って3階の1組、2年1組の教室から、鞄とリュックを持ってきた。
そしたら、後ろから上がってくる音。
やばい。
私は、机をずらすのもおかまいなしに、急いで教室から出て、中央階段から昇降口目指して駆け下りた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ・・・・、っ・・・・!!!!!!!」
自然に、目から涙が毀れていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、なんで涙が・・・ッ・・・!!!」
一階まで駆け下りると、降りたところに置いてあるボードの裏に身を隠した。
そこで、息をととのえていたら、・・・・・自然に、涙が溢れてきた。
「・・・・・・・・・・っ、は・・・・っ!!・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ひっ・・・・・・・・くっ・・・・・」
大声で泣きたかった。
・・・・・一番悔しかったのは・・・、
私は、勝手に、二人が応援してくれるんだと思ってた。
なのに、二人が面白がってるって知った時の、ダメージ。
・・・・・・すごい、悔しくて、悲しくて、・・・・・・・・・・辛かった。
***
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