月刊明星1986年2月号より。

“告白” のタイトルでユッコさんのインタビューが掲載されています。

この記事を読みながら当時のユッコさんに思いを巡らせてみました。




まずは記事から。部分的に抜粋しようかと思いましたが、話が繋がらなくなりそうなので全文引用します。


非常に長くて読むのが大変ですが、お付き合い頂けたら幸いです。




ーー体の具合はどう?(有希子は、過労のため11月29日から12月2日まで入院した)

ご心配おかけしましたけど、もう大丈夫です。もともと貧血気味だったので、気をつけてはいたんですけど。


ーーん⁉ 髪の毛、少し染めたの?

最近よくそう言われるんですけど、そうじゃないんです。傷んじゃってパサパサなんですよ。デビューしたころなんか、ヘアの取材で “まっ黒に光ってるから、天使の輪ができていいね” なんて言われてたのに…。

冬だから伸ばそうとしてるのに、さきイカのような枝毛になっちゃって、なかなか伸びないの。


ーードラマ(TBS系『禁じられたマリコ』)の撮影でキツいのかな。

それは大丈夫です。たしかに、早朝から夜中までのロケはハードだけど、好きなことをしているから疲れません。だって、デビューのころから、ドラマはやってみたかったんだもん!


ーーじゃ、ドラマをやるにあたって、なにか特別なレッスンをしたりしてるの?

やりたいのはやまやまなんですが、週1回、発声練習をするのが精いっぱい。ずっと演技の勉強をしてきた本当の役者さんと比べると、どうしても声の大きさや発音に差があるんです。もうやりたいことがいっぱい!


ーーじゃ、趣味を持つヒマもない?

まったく、その通りなんですヨ。私、取材のとき「趣味はなんですか?」って聞かれるのがいちばん辛いんです。こんなに、何もできない状態なのに。「じゃ、スポーツや趣味に打ち込める時間を、出してください」って言いたくなっちゃう!


ーーということは、何かやりたい趣味があるんだ。

もー、いっぱいありますよ!ピアノが弾けるようになりたい。英会話のレッスンに通いたい。テニスも習いたい。スイミング・スクールに行きたい!




ーーうわっ、すごい量だね。

とにかく、仕事以外のことを何かやりたいんです。いま仕事に流されて、こなすのだけが精いっぱいで生きてるから。お友だちとかも話しても、仕事のことしか話せない自分がイヤなんです。もっといろんなことを知りたいっ!そうじゃないと、なんだか取り残されたようになっちゃう。


ーーおっと、いまにでも仕事を投げうって、趣味に走りそうな勢いだね。

ううん、違うんです。趣味をやりたいと思うきっかけは、みーんな仕事から来てるんです。ピアノとか弾けたら、ドラマの中でのシーンに役立つでしょ。英会話ができたら、英語の歌を歌ったり、お芝居の中で生きてくるかもしれない。いま、『ポニーテールは振りむかない(TBS系)』で、伊藤かずえさんがドラムを叩いてるでしょ。かずえさん、もともとドラムを叩けたんじゃなかったんですって。1カ月特訓して、あんなにうまくなったんですって。私も、ドラマ1本だけに打ち込めたらなあ…。


ーーすべては、仕事から始まり、仕事へ戻るか。

それには、まず体力作りですね。こないだ、ホテルのプールで25m泳いだら、息が切れて苦しくて苦しくて。


ーー何ごとも、全力投球してしまう性格なんだ。

うーん。それで悩んでるんです。テキトーにしときゃいいものでも、すぐ真剣になっちゃって。損な性格。でも、歌に関しては、少し冷静に見つめられる余裕が出てきましたヨ。デビュー当時は、すごくベストワンになることにこだわってたけど、いまはそうは思いません。それより、自分の納得いくように歌えたらいいなぁ、と思ってます。




ーーマイペースになったんだ。

というか、冷めているように思われるかもしれないけど、アイドルって、ただ歌の良し悪しだけで売れるってワケじゃないのは、わかってるから。だから、自分がいいと思い、まわりもいいと思った曲でも、売れない場合だってあるワケでしょ。売るためにムリをするのは、イヤだって思う。


ーーそのために、イヤな思いをしたことあるの?

私は直接ないですけど、他の人を見てると、やりたくないことまでやらされてるし…。デビュー時は、仕事のときイヤな事があっても、岡田有希子がやってるワケで、佐藤佳代がやってるワケじゃないって、割り切れたけど、いまは、岡田有希子でいる時間のほうが長いから、有希子に愛着がわいてしまって、有希子がイヤがることは、やりたくないのです。


ーーじゃあ、どんなとき、岡田有希子はうれしいんだろ。

お仕事をしてて、どこか1カ所でも、1曲でもいいから自分が納得いく出来だったときかな。そして、それをファンの人がよろこんでくれたとき。そんなときが有希子の充実タイムです。


ーーでも、いろんなファンの人がいるでしょ。

そうですねえ。街中を歩いてて、「あっ、有希子ちゃんだ。サインしてください」なんて言われると、もううれしくなって、いくらでもサインしちゃいます。逆に、遠くから聞こえるように「あ、岡田有希子だ…」なんて言って、悪口を言われると悲しくなっちゃいます。タレントだって、血の通ってる普通の人間なんです。以前は、本当に私のファンだけにしか、顔は知られてなかったけど、デビュー2年目になると、さすがにいろんな人に知られるようになって…。それは喜ぶべきことなんでしょうけど。また、そういう状態になるのを、デビューしたときから覚悟してたハズなんですけど、実際にそうなると…。難しいですねえ。


ーーじゃ、明るい話題に変えてみよーか! 恋愛の進行状況は、どうなってるかなあ?

うーん、こっちの状況もちょっと暗いですねえ。なんたって臆病ですからねえ。このへんまで進むと自分が傷つくかもしれないって思うと、自分からやめてしまうんです。へんにプライドを持ってしまって、自己防衛してしまうの。この性格、わかっちゃいるけど、なおせないんです。


ーーうーむ。でも、真剣に考える性格だから、忘れられないでしょ。

そうでもないんです。いろんなことを思っては、スグに忘れていくんです。悩んでると、睡眠時間がへって、ボーッとしちゃいますもんねぇ。こないだなんか、おフロに入って考えごとしてるうちに眠ってしまい、おぼれそうになっちゃった。


ーーク、クライ!大丈夫?

大丈夫です。だって、クラく落ち込むのも、自分を悲劇のヒロインに仕立てて、楽しんでいるの。結局は、楽しく青春しちゃってるんです。




ーーそーいや、ハーレクイン・ロマンスの愛読者だったね。ホッ、ひと安心しましたヨ。じゃ、学校の話題にいってみよーかね。

このままで行くと、高校生活もあと3学期を残すのみです。はっきり言って、本当の意味で学校へは行けませんでした。お友だちとの触れ合いもないし、テストも勉強不足の不満足な状態で受けたり…。いっそ学校をやめて、仕事に専念すればと思うこともあったけど、そんな勇気はなかった。だから、卒業してから、できれば、大学とか専門学校へ進学したいんです。本当の勉強をしてみたくて。それと、仕事は、歌と芝居のレッスンをみっちりして、ちゃんとした才能を身につけたいんです。アイドルの要素をとっぱらっても、売れるようなタレントになりたいのです。




インタビュー記事は以上です。


インタビューの時期ですが、入院の話が出ている事、明星のこの号の発売は1985年12月末なので、編集、印刷、製本等のスケジュールを鑑みると、退院してそれほど間をおいてないのではないかと思います。


まず言いたい事は本当に真面目!なんて言うのかな、一つひとつの問いに対しても浮ついた受け答えがないんですよね。隙がないというか。

今だからそういう見方をしてしまうのかも知れないけど、危ういくらいに真面目で真摯。


以降は、あくまでも私個人が感じた事ですが、ユッコさん、この時うっすらと今後の方向性に迷いが出ているような気が?

初めての連続ドラマ。ドラマの仕事を始めてから、友人に「仕事が楽しい」と話していたという。それにはいろんな要素が絡んでいて、芝居を演じる事の楽しさ、あるいはテレビ局は日によって様々な人と会わなければならない。対してドラマの場合は数か月間同じスタッフ、同じ役者さんと接する事ができる。ユッコさんは人見知りな性格ゆえ、気持ち的には楽だったのかも知れない。

そして、憧れの俳優と一緒に仕事ができる喜び…


もちろん歌への情熱を失ってはいないと思うけど、歌と芝居を天秤にかけた時、芝居の方にほんのちょっと傾いているかな?って言葉の端々から見え隠れしているような。

ああ、そういえば、デビューが内定したスター誕生決戦大会合格者の集まっているところで、佐藤佳代さんはドラマもやってみたいとキラキラした瞳で話していた映像もあったっけ。




それに、やはり向上心の塊ですね。いろいろ習い事がしたいといくつも挙げていますが、結局は仕事に繋げてしまうという。18歳の女の子だもの、趣味はもっと自分だけのために楽しみなさいよと言いたい気分。


進学もして欲しかったなあ。16歳から芸能界に身を置き、普通の女の子のような青春は送れなかったよね。というか、これからたくさん楽しい事がきっと待っていたはずだよ。


「アイドルって、ただ歌の良し悪しで売れるってワケじゃないのは、わかってる」

デビュー2年目のアイドルが言う言葉にしては随分と達観しているような?!

このあたりの時期は、おニャン子クラブが席巻しておりました。素人っぽさ、身近な女の子っぽさがウケてレコードもかなり売れていたと記憶しています。カテゴリーは違いますが、ユッコさんも少なからず意識していたのではないでしょうか。


“自分に厳しい”  ユッコさんの人間性が語られる時によく使われる言葉ですが、本当にその通りだと思います。芸能界入りしてからも誰かに甘える、なんて事はほとんどなかったでしょう。自分を追い込んで、追い込んで…そりゃ八方塞がりにもなりますよ。


まだまだ書きたい事はありますが、本当にめちゃくちゃな長さになってしまったのでこの辺で…またの機会をみていつか続きを書くかも知れないし、書かないかも知れないし。

ここまで辛抱強く読んで下さった方には感謝致します。本当にありがとうございます。