今回のお話は…。

 

いつものように「さわり」だけ書いて、しばらく放置していたコメディ作品を2本くっつけてみた。

 

結果…。

 

むむむ!?

Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン

 

元が別々な作品なだけに、わかりづらくなったかなぁ…。

ま、気にしないけど(笑)

なんか…。

メイン投稿じゃないから、

画像もこれでいいや笑い泣きあせる

 

 

『迷い道にて、想う君。』

 

 

 壮絶な死を遂げた者は、死後その恨みにより怨霊となりて、この世を彷徨う。

 乱葬崗の掃討戦により、八つ裂きにされたと語られる夷陵老祖、魏無羨は今……。

 盛大に道に迷っていた。

 

【この橋、渡るべからず】

 

 目の前に現れた河にかかる、大きな橋のど真ん中に立てられた札に書かれた、一文字一文字を声に出して読んでみる。 

 (端じゃなくて、真ん中を渡ればいいんだろ)

 そんなことを考えながら、橋を渡ろうと右足を踏み出した魏無羨はふと、その動きを止め、辺りをきょろきょろと見回した。

(ちょっと待て。俺はそもそも何処に行こうとしてるんだ?)

 おぼろな記憶をたぐり寄せるかのように、ぽんぽんと右手で額を軽く叩いてみる。

 その目の前に暗い何かが閃きかけた時――――。

「待ちなさい、そこの公子」

 かけられた女性の声に、魏無羨は驚きを隠そうともせずに振り向いた。

 

 

 

 

「阿湛」

「がふっ」

 予期せぬ呼びかけに藍忘機はいつもの平静さを保ってはいられなかった。「何事」と言いかけた口から、彼のものとは到底思えない声が漏れ出す。

「う……魏嬰……。いったい……」

「いや、一度呼んでみたかっただけだ。特に意味はない」

「……」

 あごに伝った茶の滴を手巾で拭き取りながら、藍忘機はもう片方の手を魏無羨の額へとそっと伸ばした。

「熱はないようだ」

「当たり前だ。だいたい、何で名前を呼んだだけでそうなるんだ」

「……何故いきなり、そのような呼び方をする」

 藍忘機の声は、未だ動揺して震えている。

「お前ってさ、子供の頃から『忘機』って呼ばれてたのか?」

「…………」

 額に当てられたままの藍忘機の手に触れ、魏無羨は首を傾げた。

「湛湛とか、阿機とか、忘忘……」

「……やめなさい」

 厳格な姑蘇藍氏の宗主家で生まれ育った藍忘機にとって、聞きなれない名称の羅列に、耳たぶがほんのりと紅く染まり始める。

 その両耳たぶを両手で軽く握り、魏無羨は幸せそうに破顔した。

「うぇ~い、藍湛。子供の頃のお前って、相当可愛かったんだろうな」

 その瞳には、これから先起こるであろう出来事に対する期待がいっぱいに溢れている。

 大方の予想を裏切らず……。

 おしゃべりな魏無羨の口を黙らせるために藍忘機がとった行動は、いつもと同じ、口封じだった。

 

 

 

 

 

「その橋を渡ったら、どうなるか知っているのかしら」

「……永遠の眠りの国行き……とか?」

「そう思うなら、何故、渡ろうとするの」

 自分を呼び止めた女性に、魏無羨は軽く肩をすくめてみせた。

「どうせ誰も、俺の生き返りなど待ってない」

 その言葉に目を瞠り、女性が二、三度頭を振る。そしてすぐさま魏無羨に近づくと、いたずら好きそうな瞳を輝かせ、いきなりその右手を振り上げた。

 次の瞬間、魏無羨ともあろう者が避ける間もなく、左の頬を打たれる。

「なっ……」

「ああ……。よくもこんなにひねくれて育ってくれたわね、阿嬰。これこそが私の罪よ。幼いお前を残して逝った、私の罪」

 大げさに演技かかった様子でつぶやくと、女性は魏無羨の両肩をがしっと鷲掴みにし、前後左右に揺さぶった。

「うぐっ……あぐ……」

「阿嬰、よ~く思い出しなさい。本当にお前を待っている人はいないの?」

「あぐ……ん、いがぁ……」

 力強く肩を揺らされ続け、答えようにも言葉にならない魏無羨に、女性がため息をつく。

「そうね……阿嬰。あなたには、冥銭も届いていないと聞いたわ。それでも信じたくなくて」

「あのさ……あんた、ひょっとして」

 問いかけた魏無羨の言葉を最後まで言わせることはなく、その女性は惜しげもなく言い切った。

「そう。私はお前の母、雑色散人よ」

 

 

 

 

「小藍」

「……まだ言うか」

 藍忘機の腕に後頭部を預け、天井を眺めていた魏無羨は、満足げな笑みを浮かべながらつぶやいた。

「子供の頃に会ってみたかったな、と思ってさ。そうだ、藍湛。お前の子供の頃の話を聞かせてくれよ」

「…………」

 体を起こし、顔を覗き込んできた魏無羨の眼差しを受け、藍忘機はほんの少しだけ口角を上げ、諦めたように深く息を吐いた。

「そう言えば……」

「うん」

「幼い頃、不思議なことがあったのだ」

 

 

「叔父上……。今の女性は……」

 いつも厳格すぎるほど厳格な叔父、藍啓仁が、いつも以上に苦虫を嚙み潰したような表情で闊歩する様に驚き、藍忘機は思わず問うてしまった。

 藍啓仁はと言えば、幼い足で必死についてくる藍忘機の存在を忘れたかのように、立ち止まりもせずに突き進んでいく。

 幼い藍忘機のおぼろげな記憶が確かなら、それは雲夢で開かれた清談会へと向かう途中の出来事だった。

 

 

「今にして思えばあれは……」

「俺の母ちゃんか!?」

「おそらく」

 遠い記憶を呼び覚ますかのように目を細め、藍忘機は天井の梁を見つめている。

「……って、ちょっと待てよ。俺の母ちゃんが生きてるってことは、その時俺は、どこにいたんだ? 俺、全っ然覚えてないけど」

「魏嬰……」

「何?」

「この話は……やめておこう」

 思い出してはいけない何かを思い出してしまったかの如く、藍忘機はそれきり口を閉ざした。

 

 

 

 

 幼子を残し、夜狩で命を落とした魏無羨の母、雑色散人は今、飄々とそこに立っていた。

 息子との再会にも特に、感動している風はない。

「え……っと」

「我が息子ながら、なんてことなのかしら。お前に恋する娘御の一人や二人もいなかったの? 弔いの冥銭の一枚ももらえないなんて、そんな風に育てた覚えは……」

「いや、育ててもらってないし」

 魏無羨としては責めたつもりはなかったが、その言葉に雑色散人の表情が曇る。

「……まあ、いいわ、阿嬰。お前がただ一人の友達もいないほど、世を拗ねていたなんて知らなかったけれど……」

「いや、友人がいなかったわけじゃ……」

「いいのよ、阿嬰、無理しなくても。あなたの魂の還りを待つ者がいないなんて、認めるのは寂しいことですものね」

「いや……だから……別に寂しいとか言ってないし」

 魏無羨の言葉を聞いているのか、いないのか……。

 雑色散人はそこで一度、大きく息をつき、その両腕を魏無羨の背へ回すと、ぎゅっと力を込めた。

「ごめんね、阿嬰」

「…………」

「まさか、お前が『渡るな』と書いてある橋を平気で渡ろうとするほど、自己中に育ってたなんて、さすがの母も驚いたわ」

「……おい」

 突然の抱擁にうるみかけた目を瞬かせ、必死に乾かすと、魏無羨はこの茶番を終わらせるべく、雑色散人に言葉を返した。

「……で? そこまでして『橋』を渡らせたくないなら、俺にどうしてほしいんだ」

「どうしてほしいんだと思う?」

 いたずらに笑う雑色散人を見ていると魏無羨は、まるで自分と会話しているような気分になってくる。

「『橋』の先は、何も憂えることのない静かな世界。つまらないわよ、とても。だから、阿嬰。しばらくの間、私と旅をしてみない?」

「旅? あの世で?」

「抱山様の仙界で。そうね、十三回ぐらい試練を受けてみたらきっと、何かが変わるかも」

 生前には終ぞ会うことのできなかった師祖、抱山散人の名を聞き、魏無羨は少々興味をそそられ始めていた。

 どうせこれからの時間は長いのだ――――。

 生き返る予定も、生まれ変わる予定もないのだから、しばらくは母親に甘えてみようか、と。

 

 

 

 

「魏嬰……」

 胸元ですやすやと寝息を立てている魏無羨の髪を撫でながら、藍忘機は彼には珍しい満面の笑みを浮かべていた。

 新月に近い暗闇の中、その表情は、魏無羨が起きていたとしても見ることはかなわなかったかもしれない。

 雑色散人と対峙して、不愉快そうに去ろうとする藍啓仁に、さらなるいたずらを仕掛け、母君と一緒に笑い転げていた少年の姿を今、藍忘機は思い出している。

「おい、湛湛! こっちへきなよ。雲夢を案内してやるから」

 幼い子供の行動範囲などたかがしれているというのに、彼は自信満々に笑っていた。

 あまりに礼儀知らずなふるまいに、相手をすることもなく去ったあの日の少年が、魏無羨だったということに今頃気がつき、笑いがこみあげてくる。

「魏嬰」

「……何……」

 耳元で囁く藍忘機の声に、一瞬だけ反応し、魏無羨は再び夢の世界へと戻っていった。

「魏嬰……。姑蘇藍氏では、幼いころから私は『忘機』と呼ばれている。多分、君だけだ。私を『湛湛』などと呼びつけたのは」

 雑色散人の腕の中で幸せそうに笑う魏無羨を想い出しながら、藍忘機はそのまぶたを静かに閉じた。

 

 

<終>

 

 

珍しく、読み切り(ΦωΦ)フフフ…

…とか言いながら、実は番外編にもなりうる魏嬰&雑色散人の仙界旅行編(笑)

 

二次小説の番外編とか…、何の冗談なのか

( ̄∇ ̄;)ハッハッハ

 

そんなもの、誰が読むというのか!?

 

いろいろ、書き散らかしているニヤリキラキラ

 

書き終わってみたら、妄想が一部分にしか入っていない、とても真面目な作品に仕上がってしまった。

 

本当はもう少しギャグシーンがあったはずなんだけど、入れ損なったな。

ま、書き直す時に追加しよう。