19年間隣にいる虎 | 7月7日、A型、晴れ。

7月7日、A型、晴れ。

青山で働きながら世界の絶景を旅する7Aの旅メモ帳

炭酸水に一錠のビタミン剤を入れた。
 
その瞬間にボトルから泡が吹き溢れあたりに滴った。
本やら体温計やら棚やら全部拭く。
 
あーあ、と思いつついつもならとっさに溢れた液体から物を避けたりするのだが、今の私にはその瞬発力がなくて、
ただ溢れる炭酸水をずっとずっと見ていた。
 
ただ、ただ、じーっと。
 
しばらくして、全てを拭かなきゃと思い棚から全てのアイテムを降ろして洗ったり乾かしたり。
その水が棚の前に寝そべっている大きな虎にも飛沫が飛んでいた。
 
そこで私はハッとした。
 
2001年の春に町田のドンキで買った虎のぬいぐるみ。
19年間私はこの虎を拭いたことがなかった。
 
いつもどんな時も部屋の真ん中にいて私の隣に居るのに。パッと見で汚れていなかったから。
 
その時私は初めて埃が溜まった虎の瞳をまじまじと覗き込んだ。
申し訳なくなって、濡れたタオルで拭きながらゴメンねという気持ちでいっぱいだった
 
 

 
 
町田の時代から今まで誰よりも私の全てを隣で見てきた虎。
ただのぬいぐるみだけど、
名前もないただの虎だけど。
私の人生の半分以上を見張ってきてくれた。
この虎に跨った人もいれば握手をした人もいれば
色々な人を見てきたはず。
 
 

 
炭酸水を零したことで、一番近くにいるものを一番大事に出来てなかったことに気が付いた
それはこの家に住む家族も含めてかもしれない。
 
毎日見てる風景の中の埃に気付かないくらい大事なものを見落としているのじゃないかって。
 
 

 
それと同時に、私はこの虎がいる部屋やそれ以外でも今まで色んな人に会ってきたけれど、今オンラインで繋げて話したい人、この自粛が終わったら少々のリスクを冒してでも会いたい人が思い浮かばなかった。
 
それどころかやりたい事も見つからなかった。
ずっと虎の瞳を見ていても誰も何も出てこなかった。
もしかして私の友達はこの虎くらいしか居ないんじゃないかって。
 
周りの人の生活を見ていると
部屋でお化粧をしたり
飲食店のお取り寄せやテイクアウトをしたり
オンライン飲み会をはしごしたり
とても忙しそう。
 
なんで私は興味がないのか考えた。
 
私は目的がない会合に興味がないのだと。
誰かに会う=次の行動の予定を立てたりゴール設定がないと会うモチベーションがないのだと。
だから今、目的が見えない中で特にコミュニケーションするテーマが見つからない。
目的がないと起きられない・行動しない・人に会わない人みたいな。
 
今後、何か目先の目標が見つかったらもしかすると急に誰かに連絡をするかもしれない。
 
という、この1ヵ月のもやもやした気分を虎の瞳を観ながら思った。
 
これからはこまめに虎の汗を拭いてあげないとと春の夜に誓った。