[本] 科学と人間の感覚の接点 / 宇宙と踊る | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

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 科学といえば、厳格で冷たい印象を私は持っています。人の感情といえば、どこかとらえどころがなく暖かみのある印象です。
 これら二つは対局にあるものようでありながら、物理や宇宙にロマンを感じ、人の行動に脳科学の働きをみたりして、必ずしも水と油の関係ではないようにも思えます。

 だからといって、どんな関係かと問われても、私には表しようがありません。

 こんなもやもやとした感覚をもちながらものごとを見ていたら、こんな文をみつけました。

 

科学のなかにも大量の本能があり、芸術のなかにも大量の理性があるのではないなかとにらんでいる


 そうそう、こんな感じ。「科学」と「人の感覚」の接点を語ったものはないか、と探していました。30年近く前にアメリカの物理学者が出したエッセイの一文です。私のもやもやを払拭してくれる本の候補に行きあたり探したら、横浜市立図書館の倉庫に1冊眠っていました。その「まえがき」で見つけた文です。

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宇宙と踊る / アラン・ライトマン著、浅倉久志訳 (早川書房)
(原題:DANCE FOR TWO, Alan Lightman
1995年原書刊、1997年刊
お気にいりレベル★★★★☆

 さまざまな方向から科学と人間の感覚との関係を見つめた、200ページに収められた24篇です。

 バレエと重力、人体の仕組みと恋、物理と絵画の師弟関係、人間の知性と神、科学的解明と神、核分裂の進歩と武器、生命の起源、宇宙の起源、何気ない一日と大発見、テクノロジーの進歩と副作用、物理と芸術の個性と普遍性、理論と子どもの関心 etc,(目次はこのブログの末尾をご参照ください)

 一種の回答や姿勢が示される場面もあれば、まだまだこんな不思議が残されているといった不明が示されたりしています。


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 生命の起源や宇宙の起源といった、科学について述べる比率が高い章でも、人文系からの視線から衝撃の強い一文を放たれ、一気に私の鼓動は高まりました。

 逆に、「ラクダにこぶができたわけ」では、著者と娘との間でくりひろげる絵本に関するやりとりで、人類の進歩と科学の完全に融合しえないかもしれない関係をみせてくれます。


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 最も印象的だったのは、冒頭の一篇「パン・ド・ドゥ」。物理学者の目には見えてくる踊るダンサーと地球の中心を結ぶ重力の軸と、ダンサーが同じ理論を修得・実現する鍛錬の関係は、まさに科学と芸術の関係を象徴した一篇です。バレエ好きの物理学者ならではの視点からつづられています。

 この章のタイトル「パン・ド・ドゥ」(Pas de deux)はバレエで二人で踊ること。この本の原題"DANCE FOR TWO"に通じるだけある一篇です。


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目次
まえがき
1 パン・ド・ドゥ
2 ひとすじの閃光
3 ほほえみ
4 世界は丸いか、平たいか
5 鳥は空を飛べるのに、ああ、なぜわたしは飛べないのか?
6 学生と教師
7 時間旅行とパパ・ジョーのパイプ
8 神にかたどって
9 蜃気楼
10 原子を割る
11 時間切れになった期待
12 アイザック・ニュートンの来訪
13 生命のはじまり
14 十二月のある一日
15 進歩
16 I=V/R
17 真実以外のなにものもなし
18 星々に向かう時代
19 コネティカット法廷の現代ヤンキー
20 宇宙の起源
21 ラクダにこぶができたわけ
22 鉄の国
23 ほかの部屋
24 季節
訳者あとがき



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