[本] 屈託との折り合い / トワイライト・シャッフル | そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

そっとカカトを上げてみる ~ こっそり背伸びする横浜暮らし

大きな挑戦なんてとてもとても。
夢や志がなくても
そっと挑む暮らしの中の小さな背伸び。
表紙の手ざわりていどの本の紹介も。

相互読者登録のご期待にはそいかねますのでご了承ください。

端からはつつがないように見える暮しの中で静かに抱える屈託が、じわりと読み手の心に沁み込んでくるところが、とても気に入っている短篇小説集の再読です。

   ◆      ◆      ◆

 

トワイライト・シャッフル (新潮文庫) トワイライト・シャッフル / 乙川優三郎(新潮文庫)
2014年刊、2016年文庫化
お気にいりレベル★★★★☆

 

太平洋を臨む千葉・外房の小さな町を舞台にした13篇が収められています。
そこにあるのは、漁港、砂浜、リゾートホテル、高台の高級住宅地。毛色のちがった人たちがそこに住み、訪れます。

長年海女をしていた後、陸に上がった二人の老女
夫が単身赴任している間、終の棲家として建てた新居を守る妻
インドネシアで知り合った日本人と住んだ英国人女性
年に1度決まった日に示し合わせてリゾートホテルを訪れる男女
夏にリゾートホテルのロビーにピアノを弾くジャズ・ピアニスト
郵便局につとめながら、高級住宅街に住む画家のモデルになる若い女性
夫が失踪して残された家で膨大な数の本に囲まれて、週末、飲みながら腰を据えて読書する女性 etc.

留まり続けるる人、移り住んできた人、一年のある時を過ごす人、訪れる人、さまざまです。
日々はそれなりに、あるいは何とかやり過ごせていても、どこからしらうまくいっていない部分を抱えながらの暮しです。


   ◆      ◆      ◆

それぞれ自分が抱えて屈託に気づいていながら、きれいにそれを解消することができずにいる面々です(中には終わりのある屈託もありますが)。

解消とまでは言わなくても、なんとか折り合いをつけて、恒久的に暮していける目途が立つに越したことはありません。
読んでいて、そんな状態でなんとか終生バランスを維持していけるのか、といえば微妙に思える事情の持ち主たちです。

登場人物たちのその後を想像したくなる余韻がこの短篇集の魅力です。



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