胃ブクロをつかまれて半ば囚われの人生となった経験からは、
「料理は企て」との思いが強いのですが、それはさておき、
「料理は真心」とよく耳にします。
料理をおいしく作るには食べる人のことを思い愛情を込める、
という意味でわかった気になります。
でも、ケチャップでハートを描いても味の保証にはなりません。
真心や愛情をどのような行動にしたらいいのでしょう。
◆ ◆ ◆
「天皇の料理番」は40年ほど前の小説。
何度かテレビ化され、2年前には佐藤健が熱演していましたね。
モデルは大正から昭和に宮内庁の料理長を務めた秋山徳蔵です。
彼が一般の人向けに料理のコツを書いたのがこの本です。
陛下と庶民。
食事にどんな相違と共通点があるんでしょう。
料理のコツ / 秋山徳蔵 (中公文庫)
1959年刊、2015年文庫化
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著者は早々と最も大切なコツを教えてくれます。「真心」です。
でもそれで終わらせません。
材料の選択から始まって、最後の盛りつけにいたるまで(略)
一挙手一投足もおろそかにすることのない心構え
「真心」は「注意」だと言い切ります。
なるほどと感心していたら、それどころではなく、
「盛りつけ」どころか後片付けまで細心の注意が払われています。
◆ ◆ ◆
さらに「料理のコツ五則」「材料の選び方と調理のコツ」と進み、
野菜、乾物、肉、魚、調味料、ご飯の炊き方など、
しらす干しや煮干しといった具体的具材を例に説明が続きます。
「料理のコツ五則」では「材料の選択」「自然に従う」
「間を大切にする」「道具をととのえる」
「火加減・味加減・盛りの三加減」と挙げられています。
料理で「自然に従う」「間」ってなんだろうと興味はつきません。
◆ ◆ ◆
ただ一つ、この本に困ったことがあります。
レシピではないので、具体的な料理の紹介はほとんどありません。
なのに、れんこんを煮る手順を読むと、
サクッとした歯応えとさっぱりとした醤油味が浮かび、
お腹が空いてきます。
なんてこの本を思い出すだけお腹が空いてきました。
朝ごはんの支度を始めましょう。
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