イタリア・ボローニャといえば、私は
パスタ料理のボロネーゼ(ミートソース)、生ハム、
モルタネッラ(ボローニャ・ソーセージ)を思い浮かべます。
作家井上ひさしがボローニャを訪れました。
NHKの番組の取材旅行の申し出を受けて実現した旅行です。
でも、単なる仕事ではなさそうです。
井上ひさしにとってボローニャはこんな都市なのですから。
三十年間の机上の勉強でいまでは恋人よりも慕わしい存在
◆ ◆ ◆
日本の体制に批判的な井上ひさしにとって
イタリアの左翼勢力の要衝ボローニャが輝いてみえたことを
割り引いて読んでも、
長い時間をかけて培われたボローニャ市民の視線は新鮮です。
ボローニャ紀行 / 井上ひさし (文春文庫)
572円
2008年刊、2010年文庫化 |
自分の街がうまくいっているなら、それで十分、
たとえ国がどうなっても仕方がない
(ボローニャ大学教授)
目に見える範囲、いわば生活実感を持つことができる範囲を
よくしていこうという気概です。
紹介されている事例を読むと、
これボローニャの大学教授の特別な言葉ではなく、
一般市民にも浸透している気風を代弁しています。
逆の見方をすれば国という器に無関心ではないものの、
実感を持ちきれないようです。危なっかしい感覚です。
◆ ◆ ◆
自分が得たものを街に返すことで、街そのものになっていく
梱包機器メーカーの気前のいいのれん分け、
古い映画のフィルムの修復と再生、
昔からある建物の用途を変更した使い回し・・・・・・
さきほどの危なっかしい感覚が気になりながらも、
自分の街を良くするためにものを言い、動く気風に惹かれます。
◆ ◆ ◆
ボローニャは2つの街道が交わる要所です。
それが各地から物とともに人を集め、
ヨーロッパ最古(1088年)のボローニャ大学ができる要因でした。
当時の大学は学生が集まり、教授を選ぶ自治組合でした。
第二次世界大戦の時には、ドイツと親ナチス勢力に対抗した
レジスタンス活動の盛んな地域でもありました。
こんな歴史の積み重ねがボローニャ気質を培ったのでしょう。
◆ ◆ ◆
著者が、日本に観光客を呼びよせるにはどうしたらいいか、
と問うたらこんな答えがかえってきたそうです。
いま現にある建物や街並みを、そっくりそのまま百年間、
保存してごらんなさい
(建築家)
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