10月8日の帰りは皆既月食も終わろうかという時刻。
最寄駅を降りて空をあちこちと探しても月の姿は見えません。
月食で隠れているわけでもなく、雲が空を覆っていたからです。
少しでも月が主役の天体ショーを見たかったのに残念。
◆
まだ学生だった頃、友人とふたりで比叡山に行った帰り、
バス停に着くとすでに終バスが出た後。あとの祭り。
寺で懐中電灯を借りて、教えていただいた山の中の自然道を
大津方面を目指して歩き始めました。
陽があるうちでも頭上を木の葉が覆って薄暗かったのに、
しばらくして日が暮れると、山中の道には街灯などなく、
見えるのは懐中電灯の照らす足許をだけ。
だんだん不安になり、ふたりとも口数が少なくなりました。
◆
するとふと辺りの様子が見える場所に出ました。
空を覆っていた木々の枝葉がきれた所に出て、
きれめから月の光が差し込んでいました。
まあ、その明るさのありがたかったこといったらありませんでした。
紅葉のライトアップも、平安時代には月の光が頼りでした。
木の間もる有明の月のさやけきに
紅葉をそへてながめつるかな
西行
木々の間から洩れる月の光に映える紅葉の色を詠っています。
月の光を頼りに色まで楽しんでいたことがうかがえます。
◆
いまでは皆既月食も月の形ではじめて確かめことができます。
うちの近所では月のさす光に頼らなくても、夜、歩けます。
夜でも街灯や店の照明や看板の光が辺りを照らしてくれます。
むかし、夜は月の光だけだった時代には、
月の光が徐々に失われた真っ暗闇の中で不安になり、
再び月の姿とその光が戻ってきてさぞかし安堵したことでしょう。
◆
いにしえの皆既月食は、今より大事件だったに違いありません。
せっかくの天体ショーを見損なってちょっと残念な先日の皆既月食は、
とても残念な現代の皆既月食です。
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(ペタお返しできません。あしからず。)
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