麻酔といえば気道確保。
そのためにはをまずは気道の特徴を知らなければいけない。

成人の気道で最も狭いところは声門部。
小児は声門下、すなわち輪状軟骨部が一番狭い。

どのテキストにそう書いてあったし、
当然そのまま指導もされた。
だから、後輩にも何も考えずに伝承してきた。

これはいわゆる常識である。

・・・と思っていた。最近まで。



小児は声門下、すなわち輪状軟骨部が一番狭い。

その根拠は、

Some anatomic considerations of the infant larynx influencing endotracheal anesthesia.
Eckenhoff JE. Anesthesiology. 1951;12:401–10.


これが引用されることが多い。

これによると、確かに、
The narrowest point may be at the level of the cricoid cartilage.
と記載されている。

もっともこの記載も単なる引用だ。

引用元はというと、
Bayeux. Tubage de larynx dans le Croup. Presse Med. 1897;20:1.

なんと100年以上前のデータだ。

御遺体を使用したstudyで、
上気道に石膏を流し込み、型取りをして、
それぞれの部位の径を計測した。
その結果、輪状軟骨部が一番狭かった、という内容のようだ。

引用が、引用を呼び、さらに引用され、
小児の気道の最狭窄部は、声門部ではなく、輪状軟骨部である。
という常識ができた。

常識と思っていたのだけれど、
ずいぶん前からこの常識に対して疑問が投げかけられていた。
(知らなかったけれど。)

たとえば、
The shape of the pediatric larynx: cylindrical or funnel shaped?
Anesth Analg. 2009 May;108(5):1379-81.


Bayeux.のstudyだが、
輪状軟骨部は硬いから、石膏を流し込む時の影響を受けずにそのものの径が測定できるが、その上下の軟部組織は流し込む圧力によって拡張し、実際の径よりも大きく計測されてしまったのではないか。

つまり輪状軟骨部が最狭窄部ではないのでは!?

100年以上前の技術ならありえそうだ。

それを裏付けるstudy。

Pediatric Laryngeal Dimensions: An Age-Based Analysis
Anesth Analg. 2009 May;108(5):1475-9.


気管支鏡で測定したところ、
一番狭いのは声門部で、どの年齢もそれは変わらないという内容。

Developmental changes of laryngeal dimensions in unparalyzed, sedated children.
Anesthesiology. 2003 Jan;98(1):41-5.


MRIで検査したところ、
一番狭いのはやっぱり声門部の横径でどの年齢も変わらない。
前後径はどのレベルでも変わらない。

以上より、

小児も成人も、
上気道で一番狭いのは声門部である。


これまで常識と思っていたことが、
そうではなかった!

って、なかなか興味深いなあ。

それから、
輪状軟骨部は円形ではなく、楕円形だった。
というのも今回わかったもう一つの重要なポイントである。
これは小児でカフなしチューブを使用しない根拠の一つになる。
これはまた機会があれば。

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