ラテックスって何?
ネットで簡単に調べてみると、
http://ja.wikipedia.org/wiki/ラテックス
http://kotobank.jp/word/ラテックス
わかったんだかわからないんだか・・・。
ざっくりいえば、
ラテックスには2種類あって、
ゴムの木を原料とする天然ゴムラテックス、
石油を原料とする合成ゴムラテックスがある。
しかし、
病院内でラテックスといえば、
一般的には天然ゴムのことをさす。
天然ゴムはパラゴムの木という植物から採取される樹液を原料とし、手袋、尿カテーテル、ドレナージバック、呼吸器など手術室内でも広く使われている。
しかし、
天然ゴムが含有するタンパク質に対するアレルギー、
すわなちラテックスアレルギーがある、
あるいはその疑いがある患者がいて、
その場合のラテックス製品の取り扱いがしばしば問題になる
明らかにラテックスアレルギーのある患者では、
単にラテックス製品を使用しなければいいだけなのでそこまで問題にならない。
現在ではラテックスフリー製品がいろいろあり、
ラテックスフリー対応は簡単にできるからだ。
一方、
ラテックスアレルギーとは診断されないけれど、そのリスクが高い場合、どこまでラテックスフリー対応をするべきかがしばしば問題になる。
なぜかというと、
合成ゴム製の手袋はやはり質感に劣るようで、
繊細な手先感覚を重視する術者は、
「できたら天然ゴム性の手袋を使いたい!」
というのが本音だったりするからだ。
「いつも使っているラテックス性ドレナージバックの方が感覚的に状態を把握しやすい。」という声もあった。
ある日、
普段ゴム手袋を常用する仕事をしている患者に対して、
ラテックスフリー対応で手術にのぞもうとすると、
外科医側から、
「普段ゴム手袋する仕事してて大丈夫なんだから、
この患者にはラテックスフリー対応をしなくてもいいんじゃない!?」
という声をいただいた。
どうだろうか!?
ラテックスアレルギーとは、
ラテックスの暴露により誘導されるラテックス過敏状態である。
この過敏状態が誘導されることを感作といい、
感作された状態で再度ラテックスに暴露してはじめてIgE抗体が関与する即時型アレルギー反応が発動する。
すなわち、
暴露→感作→アレルギー成立→再暴露→アレルギー反応発症
である。
もっとも、
ラテックスに暴露したからと言っても必ず感作が成立するわけではない。
暴露=感作ではないのである。
しかし、暴露量が多くなればなるほど感作が成立する割合は高くなると考えられている。
同時に、
ラテックスに感作し、
アレルギーが成立していたとしても、
必ずしも再暴露でアレルギー反応が発症するわけでもない。
再暴露量が少なければ、症状が軽い、あるいはほとんど不明なこともあり得るようだ。
ところで、
ラテックスの感作はどのようにしておこるのだろうか?
ラテックスの感作経路としては、
1. 直接的な接触
(汗、体液にアレルゲンタンパク質が溶出することによる。)
2. 手袋内のパウダー(アレルゲンが多量に吸着する。)が飛散したものを吸入
がある。
パウダーは感作成立を促進する可能性もあるらしい。
ということは、
普段ゴム手袋を常用する仕事をしている人の場合、
日常的にラテックスに直接的に接触している、
すなわちラテックスへの暴露機会が豊富なため、
ラテックスに感作し、アレルギーが成立している可能性は相対的に高い。
しかも、たとえ感作していたとしても、再暴露でアレルギー反応が必ずでるわけではないことをふまえると、
普段、ゴム手袋を使用してどうもないからといってラテックスに感作していないとはいえない。
そんな人が手術を受ける場合、
手術を契機にはじめてアレルギー反応が顕在化する可能性もある。
手術では、術者のゴム手袋が体内に直接侵入してくる、
すなわち濃厚にラテックスに接触することになるので、
ラテックス暴露量は普段よりも相対的に多くなるからである。
また、仮にラテックスアレルギーが無かったとしても、
この多いラテックス暴露量により初感作を受けるリスクもある。
術中のゴム手袋との接触により初感作をうけ、ラテックスアレルギーが成立すると、
退院後にゴム手袋を再度使用した時に初めてアレルギー反応が起こる可能性がある。
ラテックスアレルギーのある人は、
ゴム手袋を常用する仕事を継続することは難しくなる。
つまり、手術で不用意にラテックス製品を使用したことによりラテックスアレルギーを成立させてしまうことは、
大げさにいえばその患者の職を奪うことにつながる。
まとめると、
先の質問
普段ゴム手袋する仕事してて大丈夫なんだから、
ラテックスフリー対応しなくてもいいんじゃない!?
に対しては、
1. 未感作の場合、初感作させる可能性がある。
→感作させてしまうことにより、術後ゴム手袋を常用する仕事ができなくなる可能性、つまり職を奪う可能性がある。
2. 普段ゴム手袋をしていることから感作されているリスクは高く、暴露量の多い手術で初めてアレルギー反応が顕在化する可能性がある。
補足としては、
3. 術者自身が自分で使用するラテックス手袋により感作されるリスク。
4. 術者が使用するパウダーありラテックス手袋のバウダーを、周囲の医療者が吸入してしまうことにより感作させるリスク。
→周囲の医療者にとってはいい迷惑である。
もある。
以上の点から、
普段ゴム手袋する仕事してて大丈夫な患者でも、
あるいはそういう患者こそ、
ラテックスフリー対応が望ましいと考えられる。
ラテックスアレルギー安全対策ガイドライン 2013―~化学物質による遅延型アレルギーを含む~Amazon.co.jpで詳細情報を見る
posted with amastep
協和企画(港区)(2013-11)anesthemanのおすすめBOOKショップ