ストケシア(轍鮒・エピソード2) | anemone-baronのブログ

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落書き小説根底にあるもの!
私の人生は、「存在しなければ、何を言っても正しい」という数学の存在問題の定義みたいなもの。小説なんか、存在しないキャラクターが何を言っても、それはその世界での真実なのだ。

ブルーム・エージェンシー・ Inc(BAI)本部長:藤岡亮一、コンテンツデザイン部:岡健介、


 データマーケティングディレクター:住田杏子、 部下:辻本恵美(女)、田中聡(男)
 
陸上連盟 理事長:斎藤敦彦 専務理事:米田安子
 


 午前中の10:00。ブルーム・エージェンシーの陸上競技イベント(第45回全国陸上競技大会)格プロジェクトリーダー達が会議室に集まっている。

全員緊張した面持ちで座っていた。部屋の中央には大きなテーブルがあり、その周りに配置された椅子に、リーダーたちはそれぞれのノートパソコンや資料を広げている。

 

部屋の前方にはプロジェクターが設置され、スクリーンに報告書の要約が映し出されていた。

本部長藤岡亮一への報告会議だが、報告書はとっくに藤岡には上がっているので部長からの審議対応になる。

藤岡本部長は住田の直属の上司にあたる。住田の努力と才能を認めてマーケティングディレクターとして、当時新設したデータマーケティングシステム部の主任を任せたのも藤岡本部長だった。

 藤岡本部長が、テーブルの端に座り、報告書を手にしている。彼の視線は住田に向けられていた。

 

住田は、データマーケティングシステム部の主任として、今回の大会のマーケティング戦略の中心人物だ。

藤岡本部長が口を開く。「住田君、今回の報告書について一通り説明してもらおうか。」

住田はうなずき、資料を手に立ち上がる。

「はい、本部長。今回の大会に向けたデータ分析とマーケティング戦略についてご報告いたします。」

住田はまず、観客動員数の予測データと過去のデータの比較を始めた。

「今回の大会では、過去5年間のデータを基に観客動員数を予測しました。また、SNSでの話題性や、関連するイベントの反響なども考慮しています。」

藤岡は頷きながら、「SNSでの話題性というのは具体的にどのようにして測定したのかね?」と質問する。

住田は即座に答える。

「主にTwitterとInstagramのハッシュタグ分析を行いました。また、過去の大会におけるエンゲージメント率や、関連する投稿の増加率なども参考にしました。」

他のプロジェクトリーダーたちはメモを取りながら、住田の説明を真剣に聞いている。会議の雰囲気は緊張感に包まれながらも、各自が住田の報告に対して深い興味を示している。

「では、具体的なマーケティング戦略について教えてくれ。」藤岡本部長が続ける。

住田は資料のページをめくりながら、

「はい、今回のマーケティング戦略の柱は二つあります。一つ目は、デジタル広告の強化です。ターゲット層に応じたカスタマイズ広告を展開し、特に若年層の関心を引きます。」

「二つ目は、イベント会場での体験型ブースの設置です。実際に競技を体験できるブースや、選手との交流イベントを通じて、観客の興味を引きつけます。こちらについての詳しい内容は岡主任にお願いします。」

藤岡はうなずく。「なるほど、良い戦略だ。住田君のデータ分析と戦略に期待しているよ。岡君続きを頼む。」

岡は少し緊張じみた趣で、「コンテンツデザイン部の岡です。」と立ち上がって挨拶した。

藤岡は腕を組んで笑いながら「知ってるよ!」と言うとみんながドッと笑った。藤岡の一言で会議の緊張感がほどけた。

岡は、企業との提携や、業界の企業:提携し共同プロモーションやイベント内でのブース出展などを実施。


 インフルエンサー:協力スポーツ関連のインフルエンサーと協力し、イベントの魅力を配信。


 ニュースレター配信:イベント情報や最新ニュースをメールで配信し、登録者へのリマインド。
 個人的なメール:参加者の興味に合わせた個人的なメールを送信し、対応強化。


などを説明していた。

会議はその後も順調に進み、各プロジェクトリーダーからの報告とディスカッションが続けられた。

各リーダーがそれぞれのプロジェクトの進捗を報告し、藤岡からの厳しいが的確な指摘を受けていた。藤岡は最後に全員に向かって

「皆さん、問題点は明確になりました。これからも引き続き協力し、イベントの成功に向けて全力を尽くしてください。各自、報告書の修正を行い、次回の会議で再度進捗を確認します。お疲れさまでした。」

 1時間ほどの会議が終わると、藤岡は席を立ちながら住田に向かって微笑み

「君の努力が実を結ぶと良いな。」と言い、「あっそれと今日、絵を描いた山本さんが来るんだよな。」


「はい。森本部長の所で印刷の打ち合わせの後と、言っておりましので午後からになると思います。」


「分った。今日は珍しく一日会社に居るから、来たら一緒に顔出してくれないか。」


「分かりました。お見えしたらご連絡します。」


「よろしく。」と言って会議室を後にしていった。


陸上連盟本部ビル

 その頃、陸上連盟内では大きな問題が浮上していた。理事長室で専務理事の米田(安子)の報告を聞きながら、理事長の斎藤は重苦しい沈黙の中、深く椅子に腰掛け、腕を組んで目をつぶっていた。

「理事長、どうしますか?今頃になってこの様な申し出をされても……」米田の声は不安と焦りを隠せなかった。

斎藤はゆっくりと目を開け、深いため息をつく。


「とにかく理事会を開いて対応を協議するが……急いで和洋画材さんとブルームエージェンシーさんに連絡してくれ。何か対応策があるかもしれんし。」

「分かりました。和洋画材は森本部長にブルームエージェンシーは住田主任へでよろしいですか?」

斎藤は一瞬の沈黙の後「む……。マーケティング予算がひっくり返る話だから、本部長の藤岡さんの方が良いだろ。」

「はい、詳細はメールと電話でお伝えして起きます。」

斎藤は再び深いため息をつき、重々しい口調で言った。


「頼む、後から私からも連絡すると伝えておいてくれ。」


ブルームエージェンシー

 私がディスクで仕事をしていると、藤岡本部長から連絡が入った。

 

”緊急の要件だ直ぐに来てくれ”とのことだったので、仕事を中断して田中さん達に「今、本部長に呼ばれたので席を外しますね。直ぐ戻ってくると思いますから」と言って席を立とうとすると。

田中さんは「午前中、会議したばかりなのに、なんでしょうね。」

「又なんか、別件の仕事押し付けるつもりじゃないんですか~」辻本さんは意地悪そうな顔をしてた。

私は辻本さんの問に誂うように「それならそれで、覚悟を決めて引き受けてくるから、皆さんよろしくね。」と答えると、オフィス全員が「え~ぇっ!」と嫌そうに反応していた。

私が「失礼します。住田です。」と本部長の部屋に入る。

本部長はコーヒーを手に持ち立ちながら窓の外を眺めていた。本部長はゆっくり私の方に振り向いて、「あ~すまないね。忙しいのに呼び出して。」

「はい、大丈夫です。他のメンバーがしっかりしてますから」と応えると本部長は、うなずきながら私にメールを印刷した紙を私に差し出した。


本部長は思い出したように「そうだ。山本さんはまだ来ていないの?」

「はい、連絡がありまして、こちらに向かっているそうです。後10分くらい……」
返答しながら、私がメール文に目を通すと思わず「えっ?……」

「10分ほど前に、陸連の理事長から連絡が入った内容だ。」本部長は立ったままコーヒーを飲んでいた。


陸連の理事長斎藤からの連絡を受けた藤岡本部長は、緊急会議を開くため関係者を招集していた。


 僕は、キョッコ(住田)のチームオフィスで、辻本さんと田中さんとでモニターを見ながらホームページや広告のサンプルの説明を受けていた。


「カッコいいですね~。僕の絵をこんな形にデザイン出来るなんて、流石のデザイン力ですね。」感心していた。


辻本さんは自慢げに「当社のデザイン力は世界でも優秀ですからね~」


「お前は、デザイン関係ないだろ。」と田中さんが突っ込んで三人で笑っていた。

三人で談笑している所へ、コンテンツデザイン部の岡健介さんが通りかかった。

 

辻本さんは岡さんを見つけて、声をかけた。「岡主任どうしたんですか、住田ならさっきから本部長の所へ行ってますけど。」

「あ~そう。俺も今呼ばれていくところなんだ。なんだろうね?なんかミスったかな?」

山田さんは少し心配そうに「ホントに何でしょうね。予定の前倒しなんてならなきゃ良いけど。」

岡さんは僕が居るのに気がつくと「あっ山本さんご無沙汰してます。今日打ち合わせですか?残り完成しました?」


僕は頭を掻きながら「ご無沙汰してます。まだなんですけもう少しで出来上がります。」

「期待してますよ、上方から下まで評判いいですから。じゃ又後で。」岡さんは笑顔で答えた。

 こんなやり取りが続く中、オフィスは和やかな雰囲気に包まれていたなか、キョッコ(住田)が戻ってきた。


キョッコ(住田)は岡さんに何やら話をして、岡さんはびっくりしたような顔をして急いで本部長の部屋へと走っていった。

僕を見つけると少し険しい顔をして「少し待っててくださいね。」と言いながらノートパソコンや資料を持って行ってしまった。何か取り残されたような感じだった。

山田さんも「なにかヤバイ事が起きてるようですね。」と感じているようだった。

 午後3時を少し過ぎた頃、ブルームエージェンシーの会議室には重苦しい空気が漂い、窓から差し込む夕方の光が無機質なテーブルに影を落としていた。

 招集を受けた関係者たちが次々と席に着き、ざわざわとした声が響いていた。やがて、本部長の藤岡がゆっくりと会議室に入ってきた。

 

彼の表情は普段と変わらず冷静だったが、その目には深い考えが読み取れた。


「皆さん、忙しい中お集まりいただきありがとうございます。」藤岡は静かに言いながら、席に着いた。彼の声には落ち着きと確固たる決意が感じられた。

「急遽集まってもらったのは、実は先程、陸上連盟の斎藤理事長から連絡を受け、今回の陸上競技大会の大手スポンサーである五稜商事からの広告デザインの変更要請が在ったようです。」

会議室の中がさらに静まり返った後にお互いにアイコンタクトしながら沙汰付いた。各リーダーたちの視線が一斉に藤岡に向けられ、その目には困惑と不安が浮かんでいた。

「住田くん、詳細を説明してくれたまえ。」と言って藤岡は腰を下ろした。

「ハイ、五稜商事からのクレームの内容は、画家山本が描いたポスターの内容をスポンサー側の契約選手の写真に入れ替えてほしいというものです。」住田は冷静に説明を続けた。

「しかし、皆さんもご存じの通り、ほとんどのデジタルもアナログも広告デザインは既に完成しており、今更の作り直しは時間的にも予算的にもほとんど不可能な状態です。」

全員が頭お抱え困惑の表情だった。住田も動揺していたが、冷静に話を続けた。

「これまでのデザインには内部・外部も含め相当な時間と労力がかかっています。今から変更するのは現実的に難しいと思われますが、スポンサーの要望を無視することもできません。」

住田は藤岡に目を送るが、(藤岡は続けて)といったような対仕草をして目を閉じた。

「五稜商事は我々にとっても重要なスポンサーです。この要望をどうにかして受け入れる方法を探さなければなりませんが、現実的にはどのような対応が考えられるでしょうか?」

コンテンツデザイン部の岡が「ちょっと待ってください。広告内容やマーケティングの趣旨などは、陸連さんも含め全スポンサーにプレゼンしましたよね。その時何処からも異論はなかったはずです。」

「ハイ、その通りです。全てのスポンサー及び関係者から了解を得ております。」

「その時、契約書の各署名を頂いているはずです。五稜商事の今回の要請は契約違反では。」

 

岡のその発言で住田も含め他のメンバー達も「そうだ!」と思い、解決策の糸口が見えたようだった。

藤岡がボソリと話し始めた「私もそれは確認した。ただ五稜商事は契約書に署名していない。何故なら署名しているのは子会社の”株式会社ジャスティススポーツ”だ。契約上別会社だ。」

「なら、口を出すのはおかしいのでは?」

「五稜商事はスポーツイベントに置いては、ジャスティスを通して今回だけでなく、殆どのイベントに出資している。特に今回は25%だ。”口を出すなと言うなら金も出すな”って事になるな。」

全員が沈黙していた。それは住田も同じだった。

藤岡は一瞬の沈黙の後、口を開いた。

 

「まずは、現状を正直に伝えることが必要。広告全体の変更がどれだけのコストと時間を要するか、詳細なデータを示して納得してもらうことが第一歩だ。そして、可能であれば、契約選手を別の形でプロモーションに参加させる提案の検討などを考えてみてくれ。」

住田は藤田をフォローする形で「例えば、追加のデジタルコンテンツやイベントでの特別出演などが考えられます。スケジュールや費用の問題もありますが、いずれにせよ、五稜商事と陸連との協議が必要です。彼らの要望を理解しつつ、我々の制約も理解してもらうように努めなければなりません。」

会議室の空気は徐々に落ち着きを取り戻し、各リーダーたちはそれぞれの役割について考え始めた。藤岡は最後に一言付け加えた。

「この問題を乗り越えるためには、我々の総力を結集し、外部からの支援を得ることが不可欠です。一致団結し、知恵と力を合わせて、最善の解決策を見出すよう努力してください。それから、何時になっても構わないので結果を私の所にメールしておいてくれ。」

本部長の藤岡は言い終わって席を立つときに住田に小声で


「山本さんは来てるんだろ。」
「あッはい、お見えになられております。」
「私のところに連れてきてくれ。」
「でも、私はこの会議を……」
「山田君でも辻本君でも構わなから。」
「分かりました。伝えておきます。」

会議はその後、具体的な対応策の検討に入った。関係者たちはそれぞれの分担を確認し合い、次の行動に移る準備を整えていた。

 

ブルームエージェンシーの未来を左右するこの問題に対して、全員が真剣な表情で臨んでいた。


その頃、大樹は。

僕は、オフィスで辻本さんや他の社員の方々と談笑していた。

ホームページの作成をしている女性社員が、僕の絵に対して興味津々の表情で話しかけてきた。

「山本さんの絵ってホントに引き込まれますね。どうしたらこんなアイディアが出てくるんですか~。」

僕は少し照れ笑いを浮かべながら、通路向こうに座っていた山田さんの方を見て「それはですね~、山田さんに聞いたほうが理論的かも。」

女子社員は驚いたように山田さんに向き直った。「へ~ そうなの?じゃぁ私の代わりにページデザインして!」

山田さんは慌てた表情で手を振りながら「なっなに言ってるんですかぁ。僕にアイディアなんか語れるわけないでしょ。やめてくださいよ山本さん」その焦りっぷりが面白くて、僕はつい笑ってしまった。

そんなやり取りを続けていると辻本さんが内線の電話に出て「分かりました。」と言った後に僕に向かって来て「本部長の藤岡がお会いしたいとの事なので、今から案内しますね。」

「あッハイ」と少し驚いた。(こんな大会社の本部長が僕みたいなプー太郎の絵描きに何のようだろう)と考えていると、「お会いしたことあります?」と辻本さんが人懐っこい笑顔で聞いてきた。

「一度、住田主任に案内されて挨拶だけしたことありますけど。カッコいい方ですよね。」

辻本さんは僕を下から見つめるように「また~、”住田主任”だなんて、かしこまって”杏子”で良いんじゃないですか~」と笑いながらからかわれしまった。

 

僕は微笑みを返しつつも、どこかぎこちない笑顔になってしまった。

辻本さんは明るい声で「今どき、デブじゃ出世出来ませんから、とにかくいきましょう」と言って、僕の手を引っ張っていった。

 

彼女の引く力に導かれながら、僕は緊張と期待が入り混じる中、僕たちは会議室へと向かって歩き続けた。