新創世紀(21話)禁じられた遊び | anemone-baronのブログ

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落書き小説根底にあるもの!
私の人生は、「存在しなければ、何を言っても正しい」という数学の存在問題の定義みたいなもの。小説なんか、存在しないキャラクターが何を言っても、それはその世界での真実なのだ。

 

 自分たちの村の名前が”ァイディア”(Ιδέα)と決まったことを記念して祭りをやることになった。せっかくだから、隣村やその周りに住んでる人たちにも参加してもらおうと、馬を走られて使者を送っていた。


 ”ァイディア”住民たちは、祭りの準備で大忙し。女子供達はバーベキュウ用の肉や野菜を準備したり、煮込み料理をつくったり、パンやお菓子を作る準備をしたり。
 
 さらに、太鼓や笛に合わせて踊りの練習をしたりと、村全体で大忙し。男たちは、汗をかきながら屋台を作ったり看板や、のぼりを作ったりと、中には遠くの海まで行って魚貝類を調達したりと頑張っていた。
 
 ノヴァファミリアの中でも村の名前が出来たことを祝ってゼックス達は何かプレゼントを考えてた。色々案が出たが、その中でアルトとエリダが「祭りと言えば、花火が良いよね!」 」と弾んだ声で提案する。

 ゼックスは少し驚きつつも「花火か…なつかしいな」と微笑んだ。グランパ・モルフも「うむ、我々の星でも祭りのときはよく打ち上げていたものじゃ。良いんじゃないか。」と懐かしんで同意する。

 ただ問題がある、それは火薬の製造方法だ。地球は酸素の星なのでゼックスたちの母星とは全く違う化学配合が必要になる。ゼックスはオリメ(AI)に聞いてみた。
 
 オリメ(AI)「ピ……地球での火薬は主な成分と化学式は硝酸カリウム、(KNO3) 硫黄(S) 木炭(C)黒色火薬の典型的な組成比は、硝石 75% 硫黄 10% 木炭 15%この混合物には化学式はありませんが、燃焼時には以下の化学反応がございます。
 
2KNO3 + 3C + S → K2S + N2 + 3CO2
 
この反応で、硝酸カリウム(KNO3)から酸素(O2)が供給され、硫黄(S) と炭素(C)が酸化されて一酸化二窒素(N2)と二酸化炭素(CO2)が生成されます。……」
 
ゼックスは頭を抱えて「……良く分からんが、それで花火が出来るのか?誰がそれを彼らに伝える?」
 
アルトとエリダが前に出て、「僕たちが教えるよ!」と。

アルトは続けて「色を出すには、金属塩を使うんだ。例えば、ストロンチウムで赤、銅で青、バリウムで緑の炎が出るから、これを使って色とりどりの花火を作れるよ!」と熱く語った。
 
ゼックスは心配そうに「分ったけど。しかし大丈夫か?そんな難しいことアイツラ理解できるかな。」
 
アルトとエリダは笑いながら「材料がきちんと揃ってれば子供の遊びだよ。間違ってもこの星が吹っ飛ぶことはないから。へへへ。」
 
他のファミリーたちも積極的に”ァイディア”のお祭りの手伝いをする事をよろろこんで引き受けていた。
 
 アルトとエリダは夜に村の若者や子供達を炭焼き場の近くに集めて、花火とはどういったものかデモンストレーションをしながら説明をしていた。
 
エリダは細い竹筒を持ちながら 「花火ってっとても楽しいんだよ。大人から子供までみんなで楽しめるものなんだ。特に夜だと凄く楽しいよ。」
 
アルトは葉っぱで包んだボールを持ちながら 「どういったものかこれから見せるから。今夜は僕たちが作ってきた花火でみんなであそぼう。」と言って準備を始めた。
 
村の若者と子供たちは、何が始まるか興味津々だった。
 
エリダは「さあ、行くよ飛んでいった先を見てね」を竹筒の底の導火線に火を付けるて、筒を空に向むけると、「ポン」と音と共に煙を吐いて何かが飛び出してきた。

 

そして上空で大きな「バーン!」という爆発して、赤や緑の火の粉が夜空を開いた。 輝く火の粉はしばらく美しく踊り、一瞬静かに消えていった。
 
 村の若者や子供達は目を丸くして、一瞬何が起きたか理解できなかったが、すぐに「わー!」「きれいだべ!」「かっこいい!」など空に広がる色とりどりの火の粉に目を輝かせて、驚きと喜びの歓声が沸き起こった。
 
 続けてアルトがボール状花火の導火線に火を付けて思っきり遠くまで投げた。みんなも期待して投げた方をみていたが、思ったタイミングで炸裂しない。
 
予想したタイミングでの爆発は起きず、一時的な静寂が訪れた「あれ~不発かな~」

 

とアルトが見に行っった時「バーン!」と炸裂!大音響とともに、まるで地平線に新たな星が衝突したかのような華麗な爆発が、一瞬アルトはその衝撃に驚いて尻餅を付いた。
 
 花火は地上で大きく弧を描きながら、赤や銀色の火の粉で大輪の花を咲かせた。その迫力ある美しさ、若者と子供たちは一瞬で魅了され驚きと尻餅をついたアルトを見て、笑いと歓声が響き渡った。
 
アルトとエリダは皆に竹筒花火を配って空に向かって、一斉に打ち上げてもらった。

 

規模は小さいが色とりどりの花火が夜空に輝いた。
 
 全員感激のあまり「もっとやりたい」とリクエストが起こったが、アルトとエリダが「今夜はこれでおいでだよ」と宣言すると、子供たちはさみしそうな顔をしてた。
 
 「でもね、明日からお祭りの日までにみんなに、花火を作ってもらおうと思ってるんだ。」


その言葉に子供たちは目を輝かせて「僕たちに作れるの?」と興奮気味に語った。
 
アルトとエリダは「出来るよ!でもね、少し危ないからちゃんと僕たちの言う事を聞いてくれる人だけだよ。」と言うとほぼ全員が手を上げて「はーい、言う事聞きます~。」と大声で答えた。

 

若者と子供たちは期待と興奮にワイワイガヤガヤ言いながらそれぞれの家に帰っていった。
 
 翌日、アルトとエリダはゼックスファミリーに頼んで水路の近くに火薬を配合するための配合小屋と倉庫それと水車を利用して鉱物を砕くためのスタンプミルも作ってもらった。

 

何てったて宇宙人なのであっと言う間に作り上げてた。(*スタンプミル=水車の回転によってくくり棒が上下に動き、錘が鉱物に当たることで鉱物を粉砕する古典的な装置。)
 
 村ではお祭りの準備が進む中、水車小屋に子供を中心とした村の若者達が集まってくる。

 

みんな昨夜の花火の興奮と感動を秘めたまま、これから行う花火作りに期待で心踊っている様子だ。
 
アルトとエリダは材料の説明や作業の順番など、みんなと一緒になって指示しながら花火作りを初めた。


水車小屋の中でエリダがスタンプミルを指さして「鉱物の材料はまず(スタンプミル)これで砕くんだ。」


みんなは一瞬ビックりたような顔をしたがすぐ「うん、わかった。すごいね~。なんでも砕けそう。」と歓声を上げた。
 
大人だとこうは行かない、すぐ「これどうなてんだ?……」とか「この部品はどうやってつくるのか?……」

 

とか理屈が先に走りがちだが、子供たちは見て使い方を教えるだけで、

 

「わかった!すごい!」でオシマイ、特徴を直感で理解したあと楽しみながらどんどん作業していく。

その後それぞれの鉱物をパウダー状になるまで、すり鉢で擦っていく。

 

そして配合だ。一番危険な作業なので、配合用の建物にうつる。アルトとエリダも真剣に指導していくと、子供たちもふざけることなく指示の元慎重に配合作業をおこなっていった。
 


 さて。村では、着々とみんなで、準備を進めていた。準備を見て回っていた長老が出来た村の看板を見て「?これ、文字間違ってね~か?」
 
男性(a)は「そうだべか?合ってるべ~」
 
長老は文字を確認すると「”είδωλο”だと”アイドル”だべや、意味がぜんぜんちゃうやろ!なおせや!」
 
男性(a)は手を叩いていきなり歌い出した「♪なんてたってア~イド~ル。ジャン ♬無敵の笑顔で荒らすメディアッ❤♬知りたいその秘密ミステリアッス❤! 長老はどっち派だんべ~!」

長老「ワシは、キョンキョ……あほんだら~村の名前だっべーさっさと直せー!」
 
他の看板も見てみると「”Πρωκτό”?これ◯◯◯じゃね~か!こんなの見たら肛門科とまちがうべ(怒)とっとと直せ!」(肛門科?他の意味もあるけど書けません笑)
 
 などなど多少のトラブルは遭ったがそれでも皆は、他所から来るお客さん達にも喜んでもらえるように真剣に取り掛かっていた。
 
 長老が村の周りを見回していると、遠くから良い匂いが漂ってきた。匂いに導かれるように歩いて行くと人だかりが出来ていた。
 
「おめ~ら、此処で何シてんだ。えぇ~匂いがするな。」
 
「お~長老! 長老さんもこれ食ってけ。うめーど。」網の上で焼かれていたのは貝やタコや魚だった。
 
 それを見た長老は「なんだこれ。あんま見たことねぃな?」
 
 男性(b)が魚介類を焼きながら「馬で、三日三晩かけて海まで行って採ってきたもんだ。」
 
「えれー遠くまで行ってきたな。うだども宴会には、はえ~べな?」
 
「何いってんだ。宴会ではね~ど。試食会だべや。ここ者ん魚介類を食ったことね~べ。祭りの当日に驚かね~ようにと。」
 
「ん?何で驚くんだべ?」
 
「海の村の者ん達に祭りのこと話したら、当日に海の幸を大量に持ってきてくれるんど。んだから、村の者んに事前知識いれとかんと失礼だんべ。」
 
「なるほどな、んだども横においてあるの酒じゃねいか?」
 
「へっへっへ。酒との愛称も事前知識入れとかんと。」
 
 男性(b)は少し酔っ払いながら「焼けたらみんなに配って回るから。」
 
長老は半ば呆れた様子で

 

「全くおめ~らは。食い終わったら、準備に戻れよ!」と言いながらイカ焼きを貰って食っていた。右手にはちゃっかり酒のコップを持ってた。


 子供たちはアルトとエリダの指示とおりに作業して、鮮やかな色彩の花火を賭けるために金属塩を巧みに配合していた。

 

時折、広場に出て出来た花火を確認したり、さらに配合を変えたりしてオリジナルの花火をも作っていた。

 いつの時代でも子どもたちの想像力は凄い、なんたって怖い物知らずだから。
 
一人は、紐の中に火薬を起用に詰め込んで、それを螺旋状に固めたり。またジグザク状に固めたりと。
 
別の子は竹とんぼの羽に小さな火薬の筒をくっつけたりと斬新たな試みを行った。それそれ色んなアイディアで楽しんでいた。
 
出来上がると広場は実験の場となり、子供たちの笑顔と歓声が飛び交う。 螺旋状の花火が地面を駆け巡り、ひゅんという音を立てて華麗に舞う様子に

 

「キャーキャー」言ってたり、ジグザク状の花火は更に、予測不可能な動きで左右上下に動き回り、みんなは歓声を上げながら飛んだりはねたりして避けて楽しんでいた。
 
火薬を搭載した竹とんぼは、点火すると急速に羽を回転させ、力強く空まで昇り上がり、子供達が手を叩いて「ワーワー」言ってはしゃぐ姿が見られた。
 
 アルトとエリダも子供たちと一緒になって、それぞれの作品の打ち上げを手伝い、成功するごとに感動と笑い声で応えた。カラフルな光に照らされ白い煙が流れていた。

「素晴らしいね!」とアルトが褒め称えると、エリダも「みんな、本当にすごいね。自分たちで作った花火を見るのは、ほんと楽しい。」と目を輝かせた。

 花火作りの合間にも子供達の作品を見て刺激を受けて、新しいアイデアを思いついては試し、そのたびに「こんなのどう?」や「次はこれを混ぜてみよう!」という提案が続く。
 
 この日から、ワイディアの水車小屋と配合倉庫は創造と冒険の渦と化して、子供たちの無限の想像力が火花を囲んでいた。