松沢日記  41

 清掃部より、床置きラックの上段にある乾燥機の位置をもう少し高くして欲しいと言われた。下段には自動洗濯機があり、その隙間が狭く蓋を開けるのに、あるいはカートリッジ式ゴミ取りを交換するのに不便らしい。それで要望どおり、苦労して棚の高さ調整をして再取り付けを完了した。乾燥機はいい位置に仕上がった。

 ほっとする間もなく、今度は高くなったので、乾燥機の衣服が取り出しづらいという。当たり前だ。そうなると思っていた。それで申し訳ないが、さらに床に足場を作ってくれないかとおっしゃる。高齢者の多いここでは、取り出し口の奥まで手が届かない人が多いと。

 パートのおばちゃんたちに私は優しい。なぜなら、おそらく彼女たちはぎりぎりの生活、政治には声なき沈黙の人々で、しかし確実に苦労をしているのだ。この病院でも、皿洗い、清掃、洗濯、警備と、そうしたアルバイトでどれだけの収入があるというのか。正規従業員やここ都立病院の医師を頂点とした職員と比べて、圧倒的な賃金の格差があるだろう。これが今の日本、我々労働者のうち、非正規雇用が4割近い多数者の現状である。

 仕方ないから、有り合わせの材料で足場を作った。木枠は空調機中性能フィルターの捨ててあった外枠。踏み板はトイレ用すのこ。それにカーペットの部材を上に貼って、周りを油臭い錆止め塗料で黒く塗装した(たまたまそれしかなかった)。がらくたを集めたわりには、思ったより見栄えがよくなった。