当時5歳だったダン坊ももう14歳、日本の公立中学校の3年です。身長は163cm、ヒゲやすね毛も濃くなってきております。
私とダン坊は、2015年から愛知県の実家近くに二人暮らしです。オットと、社会人になった長男は今もイギリスの家に住んでいて、かれこれ5年、行ったり来たりしながら友好的に別居中。
きっかけは、私の発病でした。
ダン坊は2005年9月、イギリス人の父と日本人の母の間に生まれました。7歳違いの兄、アンディがいます。
ロンドン南東に位置するケント州、ブロンムリー地区に住んでいます。
2歳ごろ、どうも言葉が出てこない、と焦った母が保健師に相談をしたところ、さっそくスピーチセラピストとの面談がセッティングされ、そこで「自閉症の可能性がある」と言われました。
3歳の誕生日を迎えた頃には、100語程度の単語が日本語、英語ともに出るようになっていましたが、指さしをしない、目が合いにくい(母は、これは内気な性格によるものと思っていた。今でも少しそう思っている)などの状況もそろい、3歳7ヶ月で専門医の診察を受け「健常者に近い自閉症」との診断がおりました。(Autism - able end)
2009年9月(3歳0ヶ月) 普通の幼稚園に入園(15名のクラス)
2009年9月(4歳0ヶ月) スペシャルニードの幼稚園にも週2回、併行して通い始める
2010年9月(5歳0ヶ月) 普通の小学校内の特別養護クラスに入学。10名のクラス。
幼稚園のとき
おむつはずれは大変に遅く、日中、パンツでほぼ過ごせるようになったのは4歳になったころです。
言葉は、3才半くらいで外でも喋るようになり、幼稚園でも簡単なお話はできていましたが、4才2ヶ月のとき突然ぱたっと喋るのをやめました。(このとき何があったのかは不明)
5歳2ヶ月の現在、家でのお喋りのレベルはだいたい24ヶ月程度と思います。
これとって、いらないの、食べたい、飲みたい、あっちにいこう、こっちにきて、ねんねのじかん。といったような。
学校では、喋りません。
生活スキルの方も2歳児(これは個人差ありますが)レベルです。
おしっこはだいぶ失敗しなくなりましたが、ウンチはまだまだパンツにしてしまうことが多い。
夜はいまだにおむつをしています。
着替えは、ボタンをはめるの以外はできる。が、自分でするのは嫌いで母にやらせる。
食事は自分でできる。母がスパゲティをゆでていればすかさず自分でフォークと粉チーズを取りに行くなど
食にかける熱意はすごい。
自閉傾向としては、一般には
こだわりが強い、予定の変更に弱い、同じことを繰り返したがる、かんしゃくをおこし、自害、他害をする、すぐに走ってどこかに行ってしまう、集中力がなく座っていられない、細かい作業ができない、自分の世界にこもってしまう、といったあたりが出てくるようですが、さいわいダン坊はそういうのがほとんどありません。ビジュアルでない情報が受け入れにくい、というのはあるかな。
性格もかなり穏やかで、むしろ健常児のお兄ちゃんの小さいときのが大変でした。
ただ、どこまで物事をわかっているのかが今ひとつ母にも確認できていなくて、
いったん外に出ると、迷子にならないよう、走っていっちゃわないよう、いつも緊張しています。
あとは言葉が少ないので、コミュニケーションがものすごく限られている、というのが主な問題でしょうか。
なので、よく自閉症関係の本に出てくる、「問題行動の直し方」「パニックを回避する方法」などよりも
むしろ、言葉の活性化に力を入れて情報収集をしています。
学習障害があるのかどうかはまだ不明。まだ知能テストなどを受けたことがありません。
先日、スネーク&ラダー(すごろく風のゲーム)を教えてみたら、いちおうルールを覚えて、普通に遊べました。
負けても別に怒らないし、順番も落ち着いて待てます。
神経衰弱も、わたしよりも上手いくらいです。
また、自閉症者はよく、冗談が通じない、といわれますが、ダン坊の場合、私がわざと変なことを言ったりすると、「ばかなこといってないで」(Don't be silly,mummy)などと受けてくれます。そのようなところに、親としては希望の光を感じています。
自閉症のワークショップに行ってから、いろいろと考えました。
5才の今がいちばん、いろんなことを吸収できるとき、がんばりどころ、という気がします。
この9月から普通小学校の中のSEN(スペシャル エデュケーション ニード)-特別養護学級に通っていますが、学校では、先生とのマンツーマンのセッションでほんの少し声が出ただけで、クラスや他の場面ではずーっと黙っています。
日常的な先生方とのコミュニケーションはMakaton という手話の一種を使ってなんとか日常生活をこなせていますが、先生から聞かれたことに対してイエス、ノーを言ったり、質問に答えるのに「これは赤です。」「これは犬です。」などとサインで受け答えをしているだけで、自発的には使っていません。
たとえば、すごく暑いとき、寒いとき、どこかが痛いとき、のどがかわいたとき。
偶然、先生が察してくれて「寒いの?」と聞いてくれればいいけれど、そうでなければ、自分から発信するということがサインを使ってでさえ、できないのです。性格の問題か、まだ緊張しているか、どうしてなのかはわかりませんが。
家でだったら「ドリンクがほしい」「寒い」などと言葉で話すことができます。
これでは、学校生活はストレスがたまると思うし、そこを改善できれば、(彼からのアウトプットができるようになれば)おのずと彼へのインプットも増えるはずです。
誰だって、言葉を返してくれない新生児よりは、おしゃべりで反応する3歳児に対しての方が話しかけが多くなるはずですから。
先生も、スピーチセラピストも、「話し言葉である必要はない」といい続けていますが、実際に話し言葉の方がずっとマカトンよりもボキャブラリーが多く、細かいことも言えるわけですから、彼の場合は話すということにもっと
力を入れていきたい。
とりあえず、幼稚園時代に大好きだった、マイクを使ったセッションを提案してみようと思います。
こんなのを買ってみました。乾電池いらず、がうれしい。(イギリスではもっと安く入手できます)
幼稚園時代ももちろん人前では話せなかった訳ですが、なぜかマイクを向けられたときと、ボイスチェンジャーを使ったときだけは、大きな声が出せたのです。
これをまた小学校でも生かすことができないか。。。
それと、彼が家で本を朗読しているところを録音して、学校に持たせました。
先生とのセッションで、自分の声を聞いて何らかの反応を見せてくれるのではないか、とかすかに期待しています。また、ダン坊の話し声をほとんど聞いたことのない先生のために、いったい彼がどの程度しゃべることができるのか、知っておいていただきたいというのもあります。
彼の理解度をはかるにはサインだけでは難しいと思うので、、。
放っておいたら、ただの「子守サービス」ともなりかねないSEN。
一日の終わりに「はい、今日もいい一日でした~!」だけで終わってしまわないように、親のほうでも何ができるのか、考えていきたいと思います。
わたしの住む地域のチャリティ団体、「ブロンムリー・オーティスティック・トラスト」の主催するワークショップに行ってきました。2時間の短いコースでしたが、役に立つ情報が盛りだくさんでした。
紹介してもらったグッズの中であ、これはいいかも、と思ったのは、ビジュアルで見えるタイマー。
Timer Tracker といって、制限時間が迫ってくるにつれ、色が変わり、音も出る。
やっている活動にあわせて自由にプログラミングができるらしいです。
何かに熱中しているとき、「さあ、おしまい」というのが苦手な子にはとてもいいと思います。
幸い、ダン坊はわりとそのへん素直で、言うこと聞いてくれるのですが、むしろお兄ちゃんに必要かも。
(ゲームあと5分!って言われてから何分やってるんだか。)
あとは、着替えのときのビジュアルボードの例など、たくさん見せてもらいました。
たとえば、体育の時間に先生に「さあ、体操着に着替えて」といわれても、実際にどうしたらいいかわからないケース。
「今着てる服を脱いで、体操着を着て」の指示では、下着もソックスも全部脱いでしまったりするそうです。
常識で考えて行動することを期待されると無理があるらしい。
そのボードでは、子供が制服を脱いでいる絵→でもシャツとパンツ、ソックスは脱がない(下着の絵の上に×印)
→体操着を着て→運動靴に替える
という細かなビジュアルのフローチャートがありました。
うちの5歳も、朝、制服に着替えるのが大変なので、さっそく作ってみたいと思います。
家にたまたまあった本「ひとりできられるよ」(学研)
を参考にしようと見ていたら、めざといダン坊、すぐに見つけて横どりをしました。そして、自分で本をめくりながらソックスをはこうとしたり、しています!おお~っ!たしか3歳ぐらいのときに買ったものの、本人が見向きもしなかったのでしまってありました。
いつもは彼はソファに座ってるだけで、わたしが下女のように、何から何まで着せるのです。
おむつを外すときも、お尻を浮かせてくれたりの「自助努力」は一切しないヒトです。
そんなヤツが、うれしそうにソックスをはいている~!!!
なんだ、灯台もと暗しとはまさにこのこと。家にあったのね。
これは特に障がい児用ではなくって、普通児のしつけのために書かれているのだと思いますが、細かいステップが図解されているのがよいのです。
パンツをはく、というのが1ステップじゃなくって、パンツの前と後ろをたしかめて、座って、
パンツの穴に足を一本ずつ通して、立ち上がって、パンツをひっぱりあげる、というのが順を追ったイラストになっています。
これを目で追いながらやるので、具体的に何をしたらよいかがわかる。
いつもは、ヤツが協力しないので、「ほら!ちゃんとはいて!」「自分でできるでしょ!!」と怒りつつ、何の役にも立たないことを言っていたなあ、具体的でない指示で、どうしたらいいのかわかんなかったんだな、というのを実感しました。
ダン坊は2才半までまーったく言葉を話しませんでした。
七つ上の兄、アンも言葉は遅かったし、日英のバイリンガル環境が影響することもあり、わりと軽い気持ちで保健婦さんに相談。
今から思い返しても、言葉の遅れ以外には何も症状らしきものはありませんでした。よく笑って表情も豊かだし、抱っこも大好き、大きな音も平気だし。
それから何ヶ月もかけて言語療法士に見てもらったり、市のケアワーカーの家庭訪問を受けたり、、、
ようやく専門医師の診察予約がとれたのは一年後。はっきりと「自閉症」の診断がおりました。3歳7ヶ月でした。
そのころには、単語数は日本語、英語とも50語前後は出ていました。
ただ、
・呼びかけに応えないことが多い
・クレーン現象がある(今は消えました)
・指さしをしない
・見立てや想像あそびをしない
などが診断の決め手となったようです。
診断の際には、”ABLE END”つまり、健常者にもっとも近いところという風に言われました。
診断方法は点数式です。あらかじめ用意された問診票にイエス、ノーをつけていき、一定以上の数値なら自閉症。だから、イエスなのかノーなのか、という丸のつけ方に親の主観がけっこう加わります。また、その場では専門医及び臨床心理士による子供本人の観察が行われて診断に加味されます。
後から思うとダン坊は場面かん黙症があったので、本当の意味でのアセスメントができていたのか、また、問診票が英語なので主たる観察者であるところの私が適正に答えられていたのか、その辺りにやや疑問が残ります。