平和堂と従業員を訴え、慰謝料請求していいんです。

 

 

 

 

「いなり寿司万引」で“誤認逮捕”4日も勾留された74歳女性… 精神的苦痛などの“賠償額”はいくら請求できる?

配信

前田恒彦

元特捜部主任検事

補足 女性にいなり寿司を渡したという男性と連絡が取れて裏付けに至るまで相応の時間を要したとしても、店の在庫数と販売数を照合して本当に窃盗被害があったのか否かを確認することは逮捕当日中にできたはず。 この事件は逮捕に至った経緯にも問題がありますが、その後、検察官が勾留請求をし、裁判官もこれを唯々諾々と認めて勾留状を発付し、勾留している点も問題でしょう。「人質司法」は警察や検察の専売特許ではなく、裁判官が加担するからこそ成り立つシステムだからです。 なお、大津地検は「結果として、犯人ではない女性を勾留したことは真摯に受け止めており、適切な捜査遂行に、より一層努める」とコメントしています。検察からすると「結果として」という5文字が極めて重要となります。国賠訴訟を提起された場合、勾留当時は相応の嫌疑があり、勾留請求に違法不当性はなかったと主張する布石となるからです。

 

 

弁護士JPニュース

女性の身に起きたことは決して他人事ではない…

近江八幡警察署が、いなり寿司を万引したという窃盗容疑で74歳女性を誤認逮捕し、82時間にわたり身柄拘束したことが発覚した。女性は精神的苦痛を受けたとのことである。この件について、女性は金銭的な補償・賠償を請求することはできるか。請求が認められるとしてどのくらいの金額を請求できるのか。

「被疑者補償規程」で最大5万円の補償

荒川香遥弁護士

まず、本件女性が無条件で金銭的補償を受けられる手段はあるのか。荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。

 「無実の罪で身柄拘束された人に対する補償については、法務省の『被疑者補償規程』で定められています。 本件の女性も、この『被疑者補償規程』に基づいて1日あたり1000円~1万2500円のお金を受け取ることができます。4日ならば最高で5万円です。 ちなみに、刑事裁判にかけられてから無罪になった場合は『刑事補償制度』の対象です。金額は被疑者補償規程と同じです」(荒川香遥弁護士) 被疑者補償規程で定められた補償金額には幅があるが、本件の場合はいくら受け取れるのだろうか。荒川弁護士は、報道を前提とする限り、満額の5万円(1日あたり1万2500円)が支払われる可能性が高いと指摘する。

 「4日間にわたり身柄拘束が続いたこと、女性が精神的な苦痛を訴えていることに加え、そもそも逮捕の手続きが違法なものであった可能性があります。

 女性は『現行犯』として逮捕されたとのことですが、現場を押さえられたわけではないので『準現行犯』だったと考えられます。

 本来、逮捕は身体の自由を奪うという重大な人権侵害なので、令状なくして認められません。現行犯と準現行犯はその例外です。現に犯罪を行っている、あるいは行ったことが明らかだからということで、令状なくして逮捕できるというものです。 準現行犯の場合、大前提として、『罪を行い終ってから間がないと明らかに認められる』ことが要求されています(刑事訴訟法212条2項)。

これは現行犯に準じるほどの状況でなければならず、単にバッグにいなり寿司を所持していただけでは足りません。 仮に認められたとしても、せいぜい『緊急逮捕』でしょう。だとしても、事後に令状をとる必要があります。

つまり、逮捕の手続きを誤った違法逮捕である可能性が高いのです」(荒川香遥弁護士)

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