支払調書を知っていますか
税法で定められた制度に「法定調書」というものがあることは知っていますよね?
会社からもらう源泉徴収票もそのひとつです。
ありとあらゆる取引に法定調書の提出が義務付けられています。
詳しくは下記参照
No.7401 法定調書の種類|国税庁 (nta.go.jp)
まず、こうした法定調書を提出してもらって課税の資料としています。
ただ、取引の全部というわけではなく、一定金額基準以上の取引とかに限定されていて、基準以下の取引なら提出不要の場合もあります。
たとえば、金(GOLD)の売買の場合はどうでしょうか。
田中貴金属など金の取引業者が金を買い取ったとき、業者は支払調書を税務署に提出するので、どこの誰がいつ、いくらで売ったかすぐ分かるようになっています。
ただし「1回の売買で200万円以上の取引につき」という条件付きなので、逆に言えば、それ以下の金額なら支払調書は税務署に提出されない、ということになります。
知っていましたか?
税理士でもこういった話はあまりしないと思います。
専門的にはなりますが根拠条文を示せば以下のとおり。
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所得税法施行令
(金地金等の譲渡の対価の受領者の告知を要しない譲渡の対価の上限額)
第三百五十条の七 法第二百二十四条の六(金地金等の譲渡の対価の受領者の告知)に規定する政令で定める金額は、二百万円とする。
所得税法
(金地金等の譲渡の対価の受領者の告知)
第二百二十四条の六 金若しくは白金の地金又は金貨若しくは白金貨(以下この条において「金地金等」という。)の譲渡をした者(法人税法別表第一(公共法人の表)に掲げる法人その他の政令で定めるものを除く。)で国内においてその金地金等の譲渡を受けた者からその金地金等の譲渡の対価(その額が政令で定める金額以下のものを除く。)の支払を受けるものは、政令で定めるところにより、その支払を受けるべき時までに、その者の氏名又は名称、住所(国内に住所を有しない者にあつては、財務省令で定める場所とする。以下この条において同じ。)及び個人番号又は法人番号(個人番号又は法人番号を有しない者その他政令で定める者にあつては、氏名又は名称及び住所。以下この条において同じ。)をその金地金等の譲渡を受けた者(金地金等の売買を業として行う者に限る。以下この条において「支払者」という。)に告知しなければならない。この場合において、その支払を受ける者は、政令で定めるところにより、当該支払者にその者の住民票の写し、法人の登記事項証明書その他の政令で定める書類を提示し、又は署名用電子証明書等を送信しなければならないものとし、当該支払者は、政令で定めるところにより、当該告知された氏名又は名称、住所及び個人番号又は法人番号を当該書類又は署名用電子証明書等により確認しなければならないものとする。
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それなら200万円以下の売買を繰り返せば税務署にはバレないじゃん。
と、思うでしょう。
でも、実際にはそうでもないのです。
税務署はあらゆる所で情報を収集している
実地調査で資料を収集する。
金取引業者のほか様々な事業者へ、実地調査として臨場した際に、仕入帳や領収証などから売主の情報を収集していますし、買主の情報も収集しています。
だから金の場合だと200万円以下の取引でも収集しています。
株でも暗号通貨でもその他の金融資産でも同じことです。
街中の店舗、看板などから収集する。
たとえば、一例ですが、事業者についての資料収集手法を紹介すれば以下のとおり。
(建築業者の場合)
〇 「建築表示板」から収集する。
建築主、施工業者、設計業者、面積などが記載されています。
〇 建築中の工事現場に駐車中の車を見かけたらナンバーをメモする。
メモしたナンバーを県税事務所に所有者の照会をすれば、どこの誰の車か分かる。
建築業者の車であれば、その現場でその日に仕事があった(売上があった)ことが分かる。
(料理飲食店の場合)
〇 実際に店舗で飲食する。
店の席数、広さ、テーブル番号の有無、伝票の有無、メニューの単価、店の雰囲気、従業員の数、入店時の客数、自分が頼んだ食事の伝票番号と品物と単価、日時と時間、などをメモ。
| 申告状況と照らし合わせ | |
| 調査に臨場した場合は |
妥当かチェックする。
臨店時に注文して飲食した伝票またはレシートがその日の売上に計上されているかどうかのチェックをする。
署内の申告書等の簿書から収集する。
(士業の場合)
弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士などの士業者については、申告書、決算書などから関与の事実を把握できます。
(医師等の場合)
社会保険診療は全部税務署で把握しているので、自由診療収入について、医療費控除の領収書から収集できます。
金融機関での調査から収集。
実地調査の反面調査(取引先への調査)として銀行、証券会社等の金融機関へ調査に臨店することは非常に多いです。
金融機関では主に伝票を調べます。
預貯金の取引履歴などはコンピューター処理ですぐに復元できちゃうので、履歴からでは分からないことを実地に臨店して調べるのです。
誰がどこへいつ、いくら振り込んだか。
誰からの入金か。
誰の筆跡か。
手形や小切手なら振出人、裏書、支払銀行など、すべてわかります。
銀行のATMには正面にミラーが貼ってあると思いますが、その裏側がカメラになっていることをご存じですか?
誰がATMを操作しているか、カメラで記録しているのです。
滅多にありませんが、場合によってはこの「監視カメラ」の映像を見せてもらうこともあります。
一般的には警察が、犯罪捜査の一環で見ることが多いようですが。
勤務時間外でも収集。
勤務時間以外でも税務職員は職務意識を持つことを半ば強要されているので、常にアンテナを張って、いろんなところで情報収集をしています。
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特に収集した資料の数が非常に多かったり、収集した資料から脱税が見つかったりした場合には国税局長から表彰されることもあるので、昇進を狙っている職員たちはそれこそ血眼で資料を集めまくっているんですよ。
新聞や雑誌、広告、ネット、情報源はいくらでもありますからね。
儲かっていそうなところは必ず様々なメディアや広告に出てくるものです。
儲かっているから広告料を出せるんでね。
個人課税、法人課税の部門の調査担当者が、収集した資料を基に実地調査を行い、把握した金融機関や株式銘柄、あるいは書画骨董、金地金、高級時計などの情報は「蓄積資料」として国税庁のサーバーに保存しています。
そして、事業主個人や法人の代表者などが死亡した時に「相続税の課税資料」として活用するのです。
調査した時には取引のあった金融機関の申告がない、とか、金地金の申告がない、といったことが「蓄積資料」のおかげでわかります。
そこで相続税の調査対象に選定されると過去10年まで遡って取引履歴を調べたりするのです。
(10年というのは会社法による帳簿書類の保存年限MAXのこと)
最近では暗号資産とか海外資産についても収集が進んでいるとか。
まぁ脱税などという不法行為はすぐ目を付けられるので、馬鹿なことはしないのが賢明です。
賢者は脱税よりも「節税」に力を入れるものです。
「頭」を使って合法的に賢く負担を減らす方法。
ただ、「節税のノウハウ」は知的財産ですから、成功報酬としてのお金が要りますよ。