2012年に完成しつつも、長い間公開されることのなかった中日合作映画『スイートハート・チョコレート(原題:甜心巧克力 Sweet Heart Chocolate)。





2012年の第25回東京国際映画祭(TIFF)では、「アジアの風」部門に出品され、10月25日の上映後には、監督の篠原哲雄氏とプロデューサーのミシェル・ミー氏のティーチ・インもあった。

イベントレポートがTIFFのサイトに現時点で残っています(詳細は、こちらの25th TIFFサイト をご覧あれ)。


なぜこんなに長い間、公開されなかったのか?


公式発表では「日中関係の悪化」が原因とのこと。

中国では公開され、日本では公開されなかったわけですが、推測するに日本側の買い手がつかなかったということなのでしょう。


2013年9月には、韓国の第13回光州国際映画祭で、審査員大賞(同映画祭では最高賞にあたる)まで取ったのに、本当に残念なことでした。


こうした映画は古くなればなるほど配給するメリットは薄まってしまうので、私もなかば日本公開になるのを諦めていました。

せっかく私の愛する夕張がロケ地の映画だってーのに、悲しかった―。


で、二年、三年とたち、お蔵入りとなってしまったわけですが、運が向いてきたのは、尾道市・福山市で開催された「お蔵だし映画祭2014」にて、グランプリを取ったこと。


ん? お蔵だし映画祭!

そんな素晴らしいものがあったなんて!と、驚きましたね私は。


お蔵だし映画祭のホームページを見てみると、なんと、グランプリをとった作品は、「東京都内および広島県内他にて劇場公開されます」って書いてあるじゃないの!!


ホームページの上映プログラムを見てみたら、マイナー映画好きな私から見たら、なんとも魅力的なラインナップ。

2014年の映画祭コンペ出品作品のトップに、ありましたよ『スイートハートチョコレート』が。


そして、特別上映だから別枠かもしれないけど『ざわざわ下北沢』のように、2009年に公開された作品が再公開された例もある。


というか、この映画祭、マジ素晴らしいわ!


ただし、お蔵だし映画祭グランプリになっても、それで全てうまくいくというわけではないみたい。


本作『スイートハートチョコレート』は、公式サイトはFacebookページ のみ。


配給のための予算がぜんぜんない、ということが、その事実だけでも分かるわけですが、さらに、このFacebookページ上でも告知されていますが、「篠原哲雄監督 リン・チーリン主演「スイートハート・チョコレート」支援プロジェクト 」と称して、いわゆるクラウドファンディングによる宣伝支援金を募集していたようです。


目標金額は100万円。

「2016年02月12日18:42に募集開始し、2016年03月23日24:00に募集終了」とあるように、一ヶ月ちょっとで無事に100万円をかき集めることができました。

協力者は84人だったとのこと。


あーー、知ってたら私だって協力したのになぁ~。

これだから、地方在住は情報が届かないんだなぁ。


でもでも、皆様のおかげで、支援金のおかげでもって、無事に地方在住の私でも、ちゃんと上映されるという情報だけはキャッチして、初日に観ることができたというわけです。


84人の皆様、本当に感謝。


そして、支援プロジェクトで支援金額に応じたファンサービス(「リターン」と呼ぶようです)をしてくださっていた篠原哲雄監督にも感謝であります。


さて、前置きはこれくらいにしてレビューです。


本作、日本での全国公開ができなかったのは、もちろん日中関係の悪化もあっただろうけれど、大作主義の中国映画が押し寄せてくるなかで、映画のストーリー的に地味(失礼)ってこともあったと思う。



TIFFの内容紹介をそのまま引用させてもらうと、

愛する人に気持ちをこめて作ったチョコレートはどこにもない特別な味がする――。

海からきた画学生リンユエは夕張でレスキュー隊員をやっている守に出会い恋におちる。



守の死後、彼の遺志をついでリンユエは上海でチョコレートの店を開く。



守の兄貴分であり、密かに彼女に思いをよせていた総一郎は共に上海に渡り、ずっとそばで見守り続けていた。



上海と夕張を舞台に10年に渡る純愛を描いた『スイートハート・チョコレート』。



ふたりの男性の間でゆれるリンユエを演じるのは『レッドクリフ』のリン・チーリン、10年間そばで見守り続ける総一郎に実力派、池内博之、また守役には新人の福地祐介。



日中合作である篠原哲雄監督の新作は、美しい情景を舞台に、チョコレートをモチーフにして三者三様の愛の形、そして訪れる結末を見事に描き出している。

という感じ。


10年愛といえば、実生活であったらエライこっちゃだけど、映画的題材としては、ありふれているものね。


でもでも、この映画、ちょっとした隠し味があるんです。


チョコだけに隠し味。

これがなかなか美味いじゃない上手いんですよ。


ただ、残念ながら、その隠し味がきいてくるのは、後半になってからじわじわって感じ。しかも終盤まで観ないと、その効果をぜんぶは体感できない。


そもそも恋した男がなんで、すぐ死んじゃうの? とか、いくらなんでも10年も想い続ける女もあれだけど、それを10年も見守る男もどんだけ一途よ? など突っ込みどころをキチンと回収するのが、ラストのラスト。


これ以上はネタバレになるから書けないけれど、正直言って、冒頭シーンあたりは、いわゆるベタな青春恋愛ドラマのノリで観てるこっちも辛かった(もちろん、私がいい年したおっさんだからベタなシーンに恥ずかしくなったってのもある)。


けれども、そこはまぁ日本的に観ればハズいシーンでも、国際的に公開を狙った本作としては、あれくらいベタなほうがいいのかもしれん。


ともかく、映画の冒頭のほうの夕張ロケシーンは若干退屈です。

そして、その後に恋した男が死んでからの上海ロケシーンは、夕張や北海道の回想シーンと何回も行き来しつつノロノロ進むので、若干テンポが遅いような気もする。


「編集が悪いのか?」なんて一瞬うがった見方をしたりもした(すいません、監督)。


しかし、しかーし、この映画がラストのラストまで伏線を回収しながら進めるのに、この映画の編集方法が非常に効果的であったことをあとになって知る。

そうすると、きっと感動もひとしお、の人もいると思う。


かくいう私は、最後のシーンのちょっと前あたりからしっかり泣いた。

映画の冒頭、男女三人が雪でじゃれ遊びながら


「いったーい、やったわね~」

「えい! こうしてやる~」


とか青春的なぬるーいシーンにハズい思いをしたのもなんのその、しっかり泣いてたわけですな(笑)。


ま、映画の出来どうこうではないってのもある。


本作、ロケ地になった北海道では、中国人プロデューサーらが北海道庁を表敬訪問した際には、知事自ら「期待してます」的な挨拶を述べたくらい、注目度の高い映画だったわけ。

(そのときの模様は、こちらをご覧下さい


それがお蔵入りになったんじゃ、やっぱ浮かばれないわけですよ。

公開されて、本当に良かった!


しかし、そんなお膝元の北海道でも、リン・チーリン様が表敬訪問に来たのがニュースになったのは2012年の出来事だし、すっかり熱は覚めている?

宣伝費100万円では、あまり北海道でも話題になってないのかな~。


いやいや、劇中で10年もチーリンを待った池内博之を見習いなさいな、道民よ!


というわけで、こうして無事に待望の本作が観られて、いろんな皆様に感謝を込めつつの今回の記事でした!


ちなみに、どれだけ私が待望してたかってのは、本ブログの過去記事観るとわかる。


10/25東京国際映画祭『スイートハート・チョコレート』2012-10-10 記事
夕張映画祭招待作品『スイートハート・チョコレート』2013-01-17 記事


ながい道のりだったなぁ。