香港、台湾を中心としたアジア映画ブログであるはずの本サイトだが、この映画だけはレビューしたい!
だって、香港映画界で活躍する日本人スタントマンにして武術指導家で(尊敬している)谷垣健治師父が殺陣とアクションを振り付けている映画だからね。
さて、一昨年に劇場版第一作が公開され、反響を呼んだ「るろうに剣心」シリーズ。
第一作『るろうに剣心』についてのレビューは、以下の過去記事を見て下さい。
今回は『京都大火編』と『伝説の最後編』が連続公開される二部作構成。
「京都大火編」は8/1から公開され、私もさっそく見てきました!
「伝説の最後編」は9/13から公開ですので、京都大火を見るのは伝説の最後が始まる直前でもいいかもしれない。それくらい、えーーー「つづく」ですか! という鑑賞後に続きを見たいっていう感想が出ること必至の京都大火編でした。
まぁね、ストーリーはいいの。いやつまらないって意味では決してなくて、面白いんだけれど、ストーリーそのものはもとより、私はこれを日本娯楽映画界の可能性を示す映画だと思ってみているのね。
もともと日本映画もアクション映画では世界に誇るものを撮っていて、クロサワの「七人のサムライ」だの勝新太郎の「座頭市」シリーズなんて、香港映画にも多大なる影響を与えているじゃないすか。
香港の剣戟映画のほとんどは、日本のチャンバラ映画からインスパイアされたって多くの人が証言しているしね。
例えば、武侠映画の名匠であるキン・フーもそう言っています。
彼の「大酔侠」でチェン・ペイペイ(鄭佩佩)が演じた主役の斬り方は座頭市研究の成果だと撮影にあたった西本正さんも(確か)言っているもんね。
そう、往年の日本映画にあったチャンバラ活劇のどきどき・わくわく・なんじゃーこりゃ(by 松田優作 but テレビドラマの台詞だったね)的な驚きをもう一度日本映画に取り戻したい、ってわけ。
それをしてくれる最有力候補なのが、香港仕込みの武術指導家・アクション監督の谷垣健治さんって私・龍虎は思っているのです。
谷垣さんは前作の「るろ剣」でも武術指導をやっていて、香港流のスタントに慣れていないはずの日本人俳優を使いながらも、素晴らしいアクションシーンをつくってくれてました。
そして、私も驚いたが、主演の佐藤健クンの素晴らし~身体能力。
今回の撮影初日に、谷垣氏が佐藤健に再会してそうそう「彼は、会った瞬間から剣心でした」と言わせるくらいの気のはいりよう。
では、さっそく今回の「京都大火」のアクションシーンから。
屋根にのぼって追っ手を追いかけ、邪魔する輩に斬りかかる所
どうすか?
タケルの何がいいって(一作目にファンになったから佐藤健をタケル扱い)、走るシーンが力強くって素晴らしいのよ。
それでもって、どこを走っているかっつったら屋根の上ですよ。
谷垣健治氏が数多くの作品でペアを組んでいるドニーさんも「捜査官X(武侠)」で屋根の上を走っていたけれど、あのシーンをほうふつとさせ、かつ素晴らしいダッシュだからタケルのほうが美しいとすら思える。
なぜか鶴のポーズで屋根の上を逃げるドニーさん(「捜査官X」より)
それからこのシーンもいいよ!
いま、書店にいろんな形でこの映画の特集が組まれていて、タケルもインタビューに答えているけれど、基本的にはほとんどのスタントを自分でこなしているみたいです。
上の二つのシーンだと、屋根の上の方は、タケルの顔が視認しにくいけれど、タケル自らやるって言って取り込んだことが谷垣健治氏のコメントで明らかになっている雑誌もありました(『日本映画navi』vol.50)。
壁歩きの方は、見ての通り、タケルの顔がしっかり視認できるので、ワイヤーで吊ってもらいつつ自分でこなしていることが明らかですな。
いま書店で発売中の『日本映画navi』vol.50には、今回の出演者全てのアクションについて、そのそれぞれの出来映えについてアクション監督である谷垣さん自らがコメントを入れているから、コアな香港映画マニアあるいは日本映画の裏方ファンには必読だぜ。
今回、私が「京都大火編」を見ていて、アクション面や演技面で注目したのは、適のボス・志々雄を演じた藤原竜也ではなかった(ゴメン。あんた、伝説の最後編の方で見せ場あるんでしょ? いや、もちろん彼も上手かったけどね)。
それよりも注目したのは、ボスの親衛隊的な位置づけにある“十本刀”の一人・瀬田宗次郎を演じた神木隆之介クン。
その優等生チックで青二才的な風貌が活かされるような、「剣の闘いに必死に挑むのではなく、ただ面白いから臨む」という不気味なキャラ・宗次郎を怪演。
剣心の技を完全に体得していて、剣心との最初の対決シーンでは、互角の腕前でありながら、平穏な暮らしを乱されていきり立つ剣心に対して、全く動じない胆力で闘いのペースをつかみ、剣心を圧倒します。
宗次郎の闘いを楽しんでいるシーンを見ていて、私は「死亡遊戯」でダニー・イノサントと武器対決をしているブルース・リーが、相手の技とのやりとりを楽しんでいるシーンを彷彿としましたよ。
この映画のなかで、彼が剣を使いながらも、片足でケンケンしてバランスと間合いを整えるシーンが出てくるので、余計にブルース・リーのあのステップを思い出し、そういう認識を持ったかもしれないです。
神木クンを見て思い出したブルースのこの表情と片足ケンケン
このあたり神木クンのアクションで実際にブルースが意識されたかどうかは、『日本映画navi』vol.5の神木隆之介クンのアクションに対する谷垣健治コメントからは確認できず。
っていうか、神木クン、あんたブルースを意識しているでしょ!?(私の考え過ぎかな?)
ただ、あの片足ケンケンは、神木クンのアイデアだったと谷垣氏は述べています。
だとしたら、神木クン、あんた、アクション映画の才能あるよ!
「妖怪大戦争」で初めてあんたを見たときは、ほんの坊やだったのに、成長したね~。
ただ、アクション面でブルースとの共通点を見いだしたといっても、リーさんのマッチョぶりと、神木隆之介クンではやっぱりキャラが違いすぎるので、彼の演技面のほうでは、私は香港映画界を背負ってたつニコラス・ツェー(謝霆鋒)とのキャラや演技傾向が近いのでは、という感想を持ちました。
「PROMISE 無極」での悪役が印象に残るニコラス・ツェー
ま、そんなことはともかく、神木クンは美少年悪役という彼らしいジャンルが開拓できるのではないか!なんていうお節介なことまで想像してしまいました。
将来がますます楽しみな俳優ですな。
おっと、「京都大火編」から話がそれてきてしまった。
本作、アクションがとにかくスゴイよ。
そして、アクションが見栄えする俳優がたくさんでとります!
伊勢谷さんは「あしたのジョー」の力石役で作った筋肉がまだ落ちていない感じで、キレがよかった。
もうね、伊勢谷さんはね、その日本人離れした凛々しいお顔と恵まれた四肢。ついでにニューヨーク仕込みの英語力を活かして、国際的にアクション映画で頑張ってくれないかな、と思うのよね。
そして、新発見だったのが若手女優・土屋太鳳ちゃん。
全然私は誰だか知らなかったのですが、主に剣ではなく格闘系のアクションを披露していたのですが、技のキレがはんぱなく、そして足が軽々とあがるあがる。
これは絶対に武術経験者でしょ!と思って、この土屋ちゃんを調べたら、さにあらず。
どうやら武道は未経験者で、テレビドラマ「鈴木先生」で優等生を演じていたような女優&モデル経歴の人でした。
ただ、日本女子体育大学で舞踏学を専攻しているとwikiに書いてあるので、運動神経はいいのだと思う。
こちらも優等生役やモデルではなく、アクションで頑張って欲しいと思わせる人でしたね。
というわけで、日本映画のアクション水準を軽々と凌駕した「るろ剣」シリーズ最新作。
9月の「伝説の最後編」も待ち遠しいよ。
最後に本記事でフォーカスした谷垣健治さんのことが知りたかったら、下記を読もう!
谷垣健治さん自らが書いた『アクション映画バカ一代』。
無名時代のジャッキーとの出会いと、スタントマンとして実績が出てきてからの再会のところが泣かせる。
それから、ドニー・イェンは見た目通り俺様な人であることもよくわかる!