「日本に必要なのは強い野党」といわれても…、
イリナ イワノワ(Ирина Иванова)の署名記事です、少々長いですがお読みください。
以下、The Voice of Russia より転載
モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は先ごろ、『日本:平成時代の政治近代化(露題、«Япония: политическая модернизация эпохи хэйсэй»)』を出版した。ストレリツォフ教授は出版に際し、日本の主要な経済問題の解決方法についてVORの記者に自身の見解を述べた。ストレリツォフ氏は、日本経済の復興はラディカルな政治改革を抜きにしては実現しえないとの考えを示している。
日本の政治システムを根底から変える試みが始まったのは90年代初頭だった。ストレリツォフ氏は、改革開始のきっかけのひとつについて、一党独占体制を誇ってきた自民党が経済危機からの脱却の道を見つけられなかったことにあると指摘している。自民党のもとから若い世代の政治家らが2大政党制創設、人材のローテーション、汚職撲滅に賛同する声を上げ始め、1993年、このプロセスは自民党の分裂、非自民・非共産連立政権の誕生を招くに至る。これが選挙システムの改革を行った。とはいえ、1年後には自民党は再び政権に返り咲いた。だが返り咲いたといっても自社さ連立政権を構成する1政党としての話だった。この時点で日本では、事実上2大政党制が築かれていた。だが、ストレリツォフ氏は、日本の政治改革がうまくいったとはとても言いがたいとして、次のような見解を表している。
「米英とは、つまり西側の政治伝統とは異なり、日本の政党はイデオロギー化されたものではない。つまり明確なラインを持つ政治プログラムや方針を基盤として行動していないのだ。このため日本の政党のプログラムはどれも似たり寄ったりで、投票者のほうも個人的な優先事項にそって選択を行っている。」
ストレリツォフ氏は、有権者は以前と変わらず政党ではなく、候補者によって投票を決めていると語る。もうひとつ、今の日本が抱える問題について、ストレリツォフ教授は、強い野党が欠如していることを挙げている。
「野党の問題は、野党がイデオロギーをもっていないことにある。特にかなりの党員数を抱える民主党は、社会民主主義的な解決方法を支持する、つまり社会的国家に重点を置く左派的市民も、レーガノミックスやアベノミックスといった経済政策の極端なリベラリズムを支持し、経済にも公共福祉にも国は手を出すなという右派的な市民も内包しているのだ。」
ストレリツォフ氏は、日本の政治においてリベラルな経済を支持するものと社会主義的政策に重点をおく支持者との間に明確な線引きがあれば、政治闘争は大きな意味を持つものになるはずだとして、さらに次のように述べている。
「今行われている政治闘争は主に、向こう見ずなポピュリズム的戦法をとっている。つまりより手の込んだレトリック、スローガンを叫ぶリーダーに多くのチャンスが集まる。このため選挙は、誰がより多く公約を行うかという競争になりつつある。ところがあとで、公約は経済の観点から考え抜かれたものではなく、すべて現実的ではないことがわかるというわけだ。」
ポピュリズム的な性格を持っているのは安倍氏のプログラムも同様だとストレリツォフ氏は語る。たしかに安倍首相は通貨金融問題の一部をシンプルな措置で解決にこぎつけている。流通貨幣の拡大とインフラプロジェクトへの国の投資拡大がそれだが、ストレリツォフ氏は、巨大な対外債務を抱えながら国家予算を経済につぎ込む制作は非常に危険度が高いと警告を発し、次のように語る。
「すでに現時点で、対外債務で支払う利息が予算の歳出の3割に達している。このほか、見積もりの水増し請求や直接的にも間接的にも汚職プロセスが進行するなど、財政上の規律が崩壊しつつある。日本という国は複雑な立場にある。一方では国民の税金を引き上げ、もう一方では国はその税金を経済効果引き上げの要求に全く即していないプロジェクトに放出している。ここでおきているのはもうモラル、倫理上の問題だ。なにせ、納税者の金が無駄に使われ、しばしば懐に入れられているのだから。」
状況の改善に希望を与えているのは、安倍内閣の編み出す成長戦略だとストレリツォフ氏は語る。これは特恵対策や一般の市場メカニズムをはずれたメカニズムとの闘いを基盤にしている。企業だけでない、一般市民の利益にも関係するこの改革の実現化開始は、今年の夏にも予定されている。
以上、転載終わり
詳しくはこちら、The Voice of Russia (http://rus.ruvr.ru/2014_01_23/JAponii-neobhodima-silnaja-oppozicija-6335/)