この記事は、2001年5月に書いたものです。
その3 アンドレア喧嘩
タクナは国境の町なので、いろいろと安く手に入るものも多くて、長距離バスの発着所では免税手続き書類の作成をしてはんこを押してもらわなきゃいけないのですが、そこで何度も横入りする婆あ出現。書類をもらうだけの窓口に横入りしたときはま、いっかーと思いましたが、ちょっぴり待たされる申請の窓口でも何回も横入りして順番を早くしようとしている!ここは窓口は2つだけど列は1列、列の先頭に係の人がいて、空いたほうから順番に案内していく方式だったのですが、また横入りしたので
"並んでます。"
と言ったらしぶしぶ私の少し後ろの列の最後に移動。次が私の番になったとき、前の人が終わったのに係の人も私も気づかなかったら、横入り婆あはいきなり5人くらい抜かして走って窓口へ。私は
"ちょっとー"
と大きな声を出し、もちろん断固許しませんでした。係の人に列に戻された横入り婆あは、
"早く進みなさいよねー こっちは時間がないんだよー"
とギャク切れ。横入り婆あの仲間たちもなんだかんだ加勢している。私が
"もうさっきから何度言ってもわかんないんだから!この田舎もんが!"
と、スラングもとりいれ、かなり奴らに近いレベルで対抗している中、私の婚約者は
"時間がないなら、早く来て並んだらどうですか。マナーを守らない人が多いから僕たちの国は発展しないんですよ。"
と落ち着いた調子で一言。さっすがー。私も含めてシーン。怒るとすごく疲れるし、怒った後で悲しい気持ちになって一日が台無しになるので、なるべく怒らないようにはしてるんだけど、こっちの人はすぐ怒るがすぐ冷める&忘れる。私も冷める&忘れるを物にしないと、ただのおこりんぼになってしまうので、気をつけなくちゃ。出稼ぎ帰国組みの友人たちに聞くと、1年くらいで慣れる&成れるそうです。こんなふうに自分が悪くないのに不愉快な思いをさせられて怒ってる意味のスラングを直訳すると"胃が出た"って言うんだけど、すごくわかりやすいと思いませんか? 日本人はあんまり外に胃を出さないから胃潰瘍とかになっちゃうんでしょうね。
帰りのバスは、途中の税関で積んだ荷物をぜーんぶ降ろしてチェック。なんで出発前に荷物を積むときに税関チェックしないで、また夕方出発時刻を1時間以上遅れてやっとこ積んだ荷物を最初から全部出して積みなおすんでしょうね。意味なし。
ここでさらに約1時間のロス。日付が変わってからは、エンジンのどっかが壊れて砂漠の真中や、途中の町で何度か立ち往生。エンジントラブルを修理したのもなんとお客さんの中のひとり。運転手とバスガイドはのんびり休憩。
バスの中で本を読むと乗り物酔いしてしまう私は、眠っても、映画を見ても、砂漠の真中で停まったとき後ろの席のおじさんは散歩に行くようなふりをしていたが、あのときはあの岩陰で"大"をしていたのかー・・・などと考えても、時間が余りに余ってしまいましたが、それもそのはず。結局予定を4時間以上送れて20時間もかかりリマに到着。朝ご飯の後何も出ず、着いたのは日曜の夕方4時。20時間って飛行機だと成田-リマにかかる時間と約いっしょなんだよねー。
その4 刑事取り調べ
リマに帰ったあとは外務省、内務省、労働省、と手続きが山のようにあって、半分は弁護士事務所を通して会社がやってくれたものの、確認はあくまでも本人となので、イミグレーションの手先の外国人担当課の恐ろしい形相の刑事(袖まくりじゃなくて 今度は本物)が調べに来たり、出頭させられていわれのないチップを要求されたりして、何度かまた"胃が出た"場面もありましたが、私がテロリストでも、フジモリ関係者でも、金持ちでもなんでもない、善良な一外国人だということがやっとわかったらしく、一銭のチップも払わずに、チリから戻って2ヶ月たった今、やっと労働ビザがもらえました。
大変だったけど、これで今後は出国する必要もなくなり、バイトではなくやっと正式に働けることに。
しかし、本当にこの国では"胃が出ちゃう"ことはしょっちゅう。そのたびに
"だからペルー嫌い"
と言うと、
"えっ?ペルー嫌いなの?あ、そーお?そりゃあ知らなかった"
とからかわれます。みんな私がこの国が大好きなことを知っているから。日本にはあまりないけれど、"私の国に恋しています""私がペルーです""なんて私の国は美しいんでしょう"などという直接的な表現の歌も多い。私も気がつくとよく鼻歌で歌っています。最近は、フジモリさんとは逆に、私は本当はペルー国籍を初めから持ってるんじゃないのかという疑惑をネタにされています。
ところで胃と言えば、何番目の胃だか知らないけど、牛のハチノスを使ったペルー料理はとてもおいしい。警察に"胃を出されて"帰ってきたら、お昼ご飯が牛ハチノスと小麦のミルクスープだった。消化した分の胃はまた吸収しないとね、とか言っておかわりをして、またどんどん体がペルー仕様になっていくアンドレアでした。
会社での面白いお話はまた次回。
続く