イタリアンレストラン・Buonoにて
二人がカフェを出てから少し歩いたところに、可愛らしい外観のレストランがある。店の名前は「Buono。」店頭には愛嬌たっぷりの太ったシェフの人形がドンと置かれている。
店内に入ると、オリーブオイルと、ガーリックの食欲をそそる香り、それとグラスのかち合う音と、陽気な笑い声が二人を迎えてくれた。オスカルもアンドレも空腹だったんだな、と気づかされた。
笑顔が可愛らしいギャルソンに案内された席は、窓際の二人掛けのテーブル。席に着くと二人とも、冷たいビールを注文した。
「Buonoって、イタリア語で美味しい、の意味だよね。なんだか
かわいい店だね。ありがとう。」
「ふふふ、とっても気にいっているんだ。いいでしょ、あっけらかんと、美味しいっていう名前のお店。本当にとっても美味しいの。」
それから二人はカラフルなメニューを覗き込み、何にしようかな、と相談を始めた。
「オスカルは何にする?どれも美味しそうだけど。」
「私は・・・う~ん。パスタにすることは決めてるけど、ジェノベーゼにするか、この彩り野菜のチーズクリームパスタ、も捨てがたい。」
「俺は海の幸のトマトソースのパスタ、にしようかな。」
「・・・・それも美味しそうだな。久しぶりにこれたから、私、随分とがっついてる。」
アンドレは愉快そうに彼女を見た。正直、メガネをかけてとっつきにくいやや年増の女性を想像していたから、パスタを前にして悩んでいる彼女を見て、なんだかとっても嬉しくなってしまった。
「・・・じゃあさ、オスカル。もし、貴女が嫌じゃなければ、だけど。」
アンドレはコホン、と咳ばらいをして、メニューの一箇所を指さした。「これなんかどう?お互いにシェアできるし。」
恋人同士にぴったり💛カップルスペシャルランチセット。
本日のスープ
ミニサラダ。
お好きなパスタまたはピザを2種類
お好きなデザート
コーヒーまたは紅茶
恋人同士・・・というところで迷うかな、とアンドレは少々、不安におもったのだが、オスカルは迷うことなく、これにしよう、という事になった。
結局、オスカルは彩り野菜のチーズクリームパスタにした。セットとは別に、モッツアレラチーズと生ハムとトマトのサラダに、ビールを注文することにした。
「美味しい!なんだか久しぶり。こんなにたくさん、それも楽しく食べるのって。」生ハムでトマトをクルクルと器用に巻いて、オスカルはパクりと口にいれた。塩味とトマトのみずみずしさが絶妙だ。
「どうして?普段は少食なの?」パスタをビールと共に食べながら、アンドレはたずねた。
「そうでもないけど・・・最近はね、仕事が忙しいのもあって、部屋に引きこもりがち。食事はスーパーの総菜にパンを添えるだけ。簡単な卵料理やサラダは作るけどね。それに何か勘違いしているマスコミの連中が私をやたらと追いかけるものだから、あんまり外に出ないようにしていた。一度、仕事の関係で、出版関係の人と食事をしなくてはならないことがあってね。」オスカルは顔を曇らせた。「注文した後で、いきなりスリーサイズを聞かれた。それからデートのお誘いを受けたよ。全く食欲が失せてしまった。」
「・・・そいつはひどいね。」
「そんなこともあって、最近は本当に外食もしなけりゃ、あんまり
食欲もなかったんだ。でも、今日は本当に美味しいよ、アンドレ・・・
あ、ごめんなさい。私の男言葉、いやじゃない?リラックスすると、つい男言葉になってしまう。」
「ぜ~んぜん?むしろそのほうが、俺も楽。じゃあ、俺も敬語じゃなくって大丈夫かな?」
「もちろん、私もその方が嬉しいな。あ、それでね。」オスカルは愉快そうに笑った。「私,この身長でしょ?顔立ちも父親似なので
きついしね。中学や高校の演劇部の公演では度々男役に抜擢されてた。」
「なるほど。じゃあ、女の子からラブレターをもらったろ。」アンドレは愉快そうにオスカルの顔を覗き込んだ。
「でもオスカル。君はとっても美しくって魅力的だよ。」
「え?な、何を言い出すんだ、全く・・・。」
「本当だよ。そこで、だ。俺は君にメアドを教える。だから君のメアドを教えてください。俺はもっと君と話したいし、君の事を知りたい。」
「アンドレ・・・。」
「お願いだ。ストレートに、お願いだ。メアドを教えてくれ、オスカル。」
「じゃあ、一つだけ、条件がある。」
「何?言ってみて、オスカル。」
「この店を出て左にまっすぐ行くと、正面に大きな公園があるんだ。そこの薔薇園のバラが今見頃を迎えている。とっても綺麗なんだけど、さっき言ったような理由であまり外に出ていないんだ。
一緒に行ってくれないかな?」
「それがメアド交換の条件?喜んで。」アンドレは嬉しそうにビールを飲みほした。それから二人は料理をキレイに平らげて店をでた。
「こんなところ、カメラマンに撮られて大丈夫?俺は大歓迎だけど?」アンドレはオスカルの方を見て笑った。
「大丈夫さ。こう見えて私は面食いだからな。」オスカルはアンドレにウインクした。
こんな二人の姿を遠くから見ている女性がいた。保育園の同僚のデイジーだった。「あら、アンドレったら用事ってこの事だったのね。」彼女はクスクスと笑いながら、こちらも彼氏と腕を絡ませながら、近くの店に入っていった。
続く。
食べ物の絵って描くの好きなんですがね、下手。
