再生可能エネルギーとは、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの(エネルギー供給構造高度化法の定義)です。政令では、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。

政府は6月5日、令和元年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2020)を閣議決定しました。2年前のエネルギー白書2018では、中長期的な日本のエネルギー施策の基本方針を示した「エネルギー基本計画」を公表しています。

(資料:資源エネルギー庁)

その中で2030年エネルギーミックスとして、2030年度における再生可能エネルギーの電源構成比を20~24%にまで高める目標を掲げています。
下図は、2017年時点の各国の電源構成をみたものですが、わが国の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は約16%と、イギリスやドイツ等諸外国に比べて低水準にとどまっています。


(資料:資源エネルギー庁)

国が再生可能エネルギーに注力する背景には、「環境」と「経済」の2つの事情があります。
まず、2016年に発行した「パリ協定」において、①世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃に抑える、②できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と森林等による吸収量のバランスをとる、ことが合意されました。その際、日本は「2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26%削減する」目標を約束しています。
また、資源に乏しい日本は、エネルギー供給の8割を占める石油・石炭・天然ガスのほとんどを海外に依存しています。東日本大震災以降のエネルギー自給率は10%を下回っており、エネルギー安定供給の点からも再生可能エネルギーの重要性が高まっているのです。

2016年5月以降、電力小売の全面自由化により、家庭や企業が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになり、再生可能エネルギー普及を後押しすることが期待されましたが、電力の「表示」と「中身」が必ずしも一致しないという問題が指摘されています。
再生可能エネルギー等の非化石電源から発電された電気には、①電気そのものが有する価値(kWh価値)と②非化石としての価値(ゼロエミ価値)が含まれていますが、2018年以降、「非化石としての価値」を「非化石証書」として「電気そのものが有する価値」と切り離し、電気と環境価値を別々に取引できるようになりました。


(資料:資源エネルギー庁)

さらに、「再エネ賦課金」の存在が事態を複雑にしています。2012年7月から、再生可能エネルギー―を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する「固定価格買取制度」が導入されました。当該制度においては、電力を買取る際の費用を国民の電気料金に上乗せする形で賄っており、それを「再エネ賦課金」と呼んでいます。
電力会社から「電気ご使用量のお知らせ」というペーパーが送られてきますが、その中に「再エネ賦課金」という記載があります。再エネ賦課金は、電力を利用するすべての人が電気使用量に比例して電力料金の一部として負担することになっており、全国一律の単価になるように毎年度経済産業大臣が決定しています。

(資料:資源エネルギー庁)

再エネ賦課金は少しずつですが増加傾向にあります。

(資料:一般社団法人エネルギー情報センター)

再エネの表示問題に関して私が感じたのは、とにかく「わかりにくい」ということです。すなわち、再エネの販売に当たって、①電源構成の割合や二酸化炭素排出量等が表示されておらず、消費者が再エネだと思って購入しても火力や原子力発電が併用されているケースもある、②火力発電でも「非化石証書」の制度をうまく活用すれば、「実質再エネ」として販売できる、③電気料金に「再エネ賦課金」が付加されているため、再エネが電気料金上昇の原因との誤解を招いている、といったことから、消費者の「再エネを使おう」という思いに反する結果になってしまう恐れもあるのです。
この点、医療における「インフォームドコンセント」が参考になるかもしれません。患者さんやご家族が病状や治療について十分に理解し納得し腑に落ちるまで、医師が丁寧に説明して双方で合意するプロセスのことです。ソーシャルワーカーやケアマネジャー等の多職種も含めチームで患者さんとご家族を支えていきます。再生可能エネルギーを普及させていくためには、消費者が再エネ電力を購入する際、電力会社から電源構成やCO2排出量等の情報を積極的に提供するとともに、再エネ販売制度そのものをより分かりやすくしていく必要があると思います。