総務省消防庁では毎年、消防機関が実施した救急業務及び救助業務の状況をまとめ「救急・救助の現況」として公表しています。

2019年12月26日、総務省消防庁から「救急・救助の現況」が発表されました。

2019年の救急自動車による救急出動件数は、660 万5,213 件と前年比4.1%増、搬送人員は 596 万295 人と前年比3.9%増となり、

いずれも過去最高を記録しました。



救急自動車による搬送人員の内訳を傷病程度別にみると、軽症(外来診療)が290万9,546 人(48.8%) 、中等症(入院診療)が248 万2,018 人(41.6%)、重症(長期入院)が48 万7,413 人(8.2%)となっています。このうち、総搬送人員に占める軽症の傷病者の割合は前年比上昇し48.8%となりました。

 



こうした中、消防救急車の負担軽減という観点から期待されるのが、病院が保有する救急車(病院救急車)の活用です。救命救急センター及び2次3次医療機関が保有する病院救急車(1,088台)の出動件数をみると、わずか16,667件にとどまっています。
何度かご紹介しましたが、私が急性期病院(南多摩病院)を経営している東京都八王子市では、病院救急車が活躍しています。救急搬送される高齢者は軽症であっても、認知症を持つ方の肺炎や骨折、糖尿病患者の尿路感染症等、受け入れ病院がなかなか決まらないという問題があります。そこで2014年12月から、南多摩病院に病院救急車を配備し、自宅や施設で療養する高齢者が病院での治療が必要になったとき、かかりつけ医の出動要請に基づいて市内の病院に搬送する事業を市医師会が始めました。病院救急車には医師や看護師、救急救命士が乗り込んで現地に向かい、かかりつけ医に指定された病院に患者を搬送します。2019年6月までの5年余りで1,562件の出動件数を記録しています。患者の平均年齢は75.8歳で、要請理由は①骨折など整形外科疾患、②消化器疾患、③呼吸器疾患の順となっています。
なお、病院救急車は、災害時にもその機動力を活かして、車内で患者さんのトリアージや治療を行ったり、病院や介護施設への搬送等で役立っています。



病院救急車のさらなる普及には人件費や車両整備費、燃料代等の運用コストに対する補助が必要だと考えています。救急医療や災害医療の充実に向けて、今後も病院救急車の活用推進に取り組んでいきたいと思います。