のっぽくんと過ごした家から
荷物を運び出す日。
事前に、
"○○日そちらに行って、荷物をまとめて全て運び出したいから2~3時間かかると思う"
と伝え
"それなら仕事で俺がいない間にゆっくりどうぞ"
こんなやりとりをしていたのだけど、、
急展開かつ急いでいたこともあって、
軽トラを借りて、業者ではなく職場の男性に手伝ってもらう事になった。
職場の男性と家に向かうと、いないはずの
のっぽくんが部屋で待ち構えていた。
そして全ての私の荷物が、
玄関付近まで移動させられていた。
"全部ひとりでやったんだ。
大変だったよね、ありがとう"
そう言ったものの、本心はまた私物が無くなるのが不安で自分で荷物をまとめたかった。
だから
"忘れ物がないように"って言って
荷物を確認しようとしたとき
"何もとったりしてないから!
最後まで疑うのかよ!"
そうやって見透かされ、憤慨された。
そしてふと、
私が男性を連れてきていた事に気がつくと
"もう新しい男かよ!
人に偉そうに言っといて、自分はそれかよ!"
そうやってさらに憤慨された。
様子を見ていた職場の男性は気を利かせ、
まるで業者の人のように上手く立ち振る舞ってくれた。
ものの15分くらいで荷物を運び出し、
二人で幸せになる為に生活した部屋は
ほぼ何もないがらんとした部屋になった。
別れ際、のっぽくんは
私達がこうなってしまった理由をはじめて口にした。
"こゆきはいつも正論しか言わない。
ちゃんとしてるかどうかばかり気にしてる。
俺は、こゆきに合わせるために必死だったけど、元々がちゃんとした人間じゃないから無理だった。
ちゃんとしていない事は認められないこゆきの態度が、俺を苦しめて、俺をダメにしたんだ。
だからこうなったのは全部、こゆきのせいだ"
結局事実はわからないままになってしまった。
だけど彼の本心はわかった。
私はもう何も言い返すことができなかった。
私といた事で、
彼がダメになっていったのは事実だし
私のせいだと言われても仕方がないのかもしれない。
かといって、物を盗ったり嘘を重ねたり
人として信用をなくすような言動が、
簡単に許されるべきでもないと思う。
好きになったからといって、
無理をして相手に合わせても
誰も幸せにはなれなかった。ただそれだけ。
私はここまでずっと、
心のどこかで彼を見下し
"自分は正しい。自分は悪くない"
そう思っていたのかもしれない。
のっぽくんと上手くいかなかった原因は
ひとつではなく、どちらか一方でもなく
お互いの歩みよりが足りていないせいだった。
