警察を呼んだ泥棒騒動から、数週間。
ふたりで生活しながらお金を貯めて、
ゆくゆくは結婚しようと約束したはずが
ふたり暮らしの生活費はまだしも
10万近い彼の携帯代まで私の負担。
日に日に状況は悪化していき、この頃には
私名義で借金まで抱えるようになっていた。
よく、
"お金の余裕は心の余裕につながる"
と言うけれど、
本当にその通りだと思う。
のっぽくんは日に日に、私が買うもの、
使うお金に細かく口を出すようになった。
"食費を押さえればダイエットにもなるし、
一石二鳥じゃん"
"こゆきの無駄遣いを削れば、俺の携帯代も
問題なくやりくりできるんじゃない?"
"髪や服、身なりにお金なんてかける必要ある?"
"姪っ子へのプレゼントとか、
子供はどうせ物の価値なんてわからないんだからお金かける必要なくない?"
なんて事を言うようになった。
こんなこと、同棲をはじめるまでは
言うような人じゃなかった。
お金の使い方も、一般的な倹約の範囲内で
特におかしく思うところなどなかったのに。
ふたりの生活は、別に質素でも構わない。
だけど成人して外で働き、
結婚を前提にと家を出て同棲を始めたのに
その途端にお金に困っている姿など、
周囲に見せられる訳がない。
同棲する時、良いことも悪いことも
ふたりで乗り越えていこうと覚悟を決めた。
だから簡単に、諦めたくはなかった。
そもそも私は服を買わず、美容室もやめ
生活レベルを落としてやりくりしている。
生活費を一円たりとも入れていない立場で
どの口が言っているんだ!と、
彼への募る不満を抱えつつも
この生活をまだ続けるべきか
彼を信じ続けるべきか迷っていた。
そして事件は起きる。
私の私物が、無くなっている。
母から貰った、数少ないブランド品で
泥棒騒動の時は確かに無傷だった。
いつなくなったのかわからないが、
ふと気が付いたらなくなっていた。
この家には彼と私しか出入りしていない。
だから彼を問い詰めた。
"隠したからよく探してみなよ"と彼。
"何でわざわざ隠すの?
あのブランド品は、母からのプレゼントで大切な物だから今すぐ出して"
そう言っても出してくれなかった。
必死に探して数日。
私は質屋の控えを見つけた。
品目には確かに、
私の探していたブランド品の内容だった。
私はもう一度、彼を問い詰めた。
すると彼は、悪びれもせずこう言った
"家に置いておくってことは、今は必要ないんだろ?だから質に入れたんだ。
大切だって知ってたから、売るんじゃなくて質屋で保管してやったんだよ!"
彼はただ自分の手持ちの現金ほしさに、
こんな言い訳で開きなおったのだ。
そして数日後、突如
質屋から出して私の元に返された。
"大切なんだったら、置いておかずに使えよ"
何故かキレ気味でこう言われた。
私は呆れ果て、母に申し訳なくて涙が出た。
私の成人のお祝いにと
母が必死に働き貯めたお金で買い、
"安物でごめんね"って渡してくれた、
想いのつまったプレゼントだったから。
‥‥と言うことは、やっぱり
あの警察沙汰も
この人の仕業なんじゃないの????
そんな疑念が再びこみあげ、止められず
私はついに彼に探りを入れることを決意した。