両親の離婚後
母、兄、姉、私の4人は
隣町の狭い賃貸に移り住んだ。


高校生の兄と中学生の姉、小学生の私。


新居のアパートには、
私達世代の子供はいなかった。

小さな子供を連れたご家族や老夫婦、
単身世帯も住んでいるようなアパートだった。



当然、かつてのように子供部屋はなく
洗面所すらなくなった、狭い新居。



夜は2部屋にまたがって布団を4組敷いて、
皆の寝息が聞こえるような距離感。



母は仕事に家事に忙しそうで
あまり沢山話をする時間もなかったけれど

毎日少しでも時間をつくってくれて
話したい事をなんでも話せたし、
全部ちゃんと聞いてくれた。



家の中で物が破壊されたり、
家族の顔色をうかがったり、
怒号がとぶなんてことはなくなった。




小学校は転校することになったけど、
すぐに友達ができたし、
気兼ねなく遊びに行けるようになった。




毎日違う服で登校する友達や、
週末に家族で出掛けたなんて話をする子を
うらやましく思う事もあって

生活が目にみえて貧しくはなったけど
それは全然つらくはなかった。



家族にとって大切な事は、
家の広さや生活の贅沢さではなくて

安心して帰れる家があって、
リラックスして話せる相手がいて
そこに自分の居場所があると感じられること。



母は当然大変だっただろうし、
兄や姉は年齢的に、もっとプライバシーが欲しかったかもしれない




だけど振り返ってこの頃の話をしたとき、
誰一人として不幸だったなんて言わない



私達3人の兄妹は、
勇気を出してこの生活に踏みきって、
安心できる生活を与えてくれて、
ちゃんとした"家族"にしてくれた母に
心から感謝してる。